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最強を求めて
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しおりを挟む「――っておい、全然聞いてねぇだろ。俺様がせっかくてめぇの話し相手になってやろうと思ってわざわざ来てやってんのによぉ」
「すみません。でも、話し相手になってほしいのは私ではなく高遠さんの方ですよね?暇なんでしょう?」
上の空の小紅に気付いた高遠が、呆れて溜め息を吐いた。図星だ。苦笑する小紅から目を反らして「ち、ちっげーよ!」と鉄格子を蹴る。
いつもなら1人で町を散策するか、桜鬼と稽古をしているのだが。町では喧嘩をしてボコボコにされてしまったし桜鬼は黒鷹のそばを離れられない。
他にやることもないし絡んでくれる人もいないので仕方なく、唯一手が空いていた高遠が小紅の見張りを引き受けてやったということらしい。あくまで、引き受けて、やった。
自分がいなければ誰も来なかったんだぞ、感謝しろ。とでも言いたげな目で睨みつけてくる高遠。
小紅がおにぎりを、ご飯粒1つ残さず食べきったのを見て嬉しそうだ。たぶん、高遠本人が作ったものだろう。形が不格好なうえに中身が少し出ていた。
高遠はこの性格でありながら、気が利くし優しい。手ぶらで行くのもなんだからと、そういえば小紅は今朝から何も食べていないのだと気付いて急いで作った。
いびつな、特大おにぎり。恨みでも込めて握ったのか、やたら硬くて食べ応えがあった。竹筒1本では水分が足りない。
「なにか、新選組のことで聞きたいことがあるんじゃないですか?私はもうこちら側に寝返った身。何でもお話しますよ」
「…………ったく、勝手だよな、てめぇ。頭領が拾ったんだろうけどよ、元々の居場所がなくなっちまったからってこっちに居場所を求めるなんざぁ」
「死のうとしましたよ。あなた方が寝静まった時、外出している時、見張りがうたた寝をしている時。何度も何度も、気付かれないように気配も消していたのに。そのたびになぜか黒鷹様に見つかって止められるのです」
舌を噛み切ろうとした。鎖で首を絞めようとした。砕けた床の破片で首を、手首を切ろうとした。けれど、止められた。
どうして気づかれてしまうのか?ことごとく自害を止められた小紅を、黒鷹は叱るでもなく「命を粗末にするな」と抱きしめる。
小紅を生かすのは先代の頭領、夜鷹の娘だからか。新選組の情報を絞るためなのか。それとも他に、何か深い理由があるからか。
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