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真実の嘘
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しおりを挟むさすがに、力では男にかなわない。足を踏ん張って耐えようとしたがそれも一瞬で崩され、あっけなく塀の上から引きずり落とされた小紅に今度は大量の猫が襲いかかった。
一体何匹いるんだ?四方八方から飛びかかってきた猫達に体の自由を奪われ、もがけば体中を噛まれたり引っかかれたりして血がにじむ。
「ゴホッゴホッ……これ以上、紅ちゃんを傷つけたくない。諦めてよ」
猫軍団に埋もれながらも短刀を振り回す小紅の右腕を、黒鷹がつかんだ。短刀の柄を叩いて彼女の手から奪うと素早くひねり上げる。
「くっ!そんな、ここまでだなんて…………あのお方との約束が……」
「観念して、全部吐いて楽になりなよ?今まで流した情報、何の目的のために僕達の中に入ったのか。それから、君がこれからどうしたいのかを」
「そんなこと、私が言えるわけがないのをわかってて言ってますよね?それに最後の、私がこれからどうしたいかってどういう意味ですか?見逃してと言えば見逃してくれるのですか?」
「まさか、そんなわけないじゃん。僕達は絶対、何があっても殺しはしないし殺させない。今、紅ちゃんの命は僕が握っているんだよ」
小紅は口を閉ざした。黒鷹の合図で物陰に隠れていた猫丸が猫軍団を撤収、膝を突いて悔しそうに黒鷹の夜空色の瞳を見つめる彼女は今、何を考えている?
どうすればここから脱出できるのか。逃げ出せたとしてももう、小紅はここには戻ってくることはできない。
小紅は彼らが敵対する新選組の一員なのだから。今までずっと黙って、騙し続けてきたのだから。
最初から疑われて、信じてもらうのになかなか苦労した。桜鬼や雪や猫丸は仲間だと受け入れてくれていたのかもしれない。
でも、和鷹と高遠はずっと敵視していた。いや、高遠はちょっとだけ信じていたのかもしれない。彼女があまりにも必死だったから。
純粋に鷹の翼の仲間として認められるようにと頑張ってきた小紅の姿を見ていたから、その想いの強さを信じた。
結果、彼女は彼らを上手く騙したことになってしまったわけだが。そういえば鳶は気づいていたのかもしれない。
新選組の間者だとは思っていなくても、彼女が怪しい者であることを確信していた。裏があるとわかっていてあえて、静かに見守っていた。
それはきっと黒鷹も同じ。ずっと様子を見ていた。なぜ、今になって新選組が間者なんてものを使ってきたのか?それがわからなかったから。
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