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真実の嘘
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しおりを挟むそこでようやくまともに頭が働いたのか、大人しく「……はい」と小さく返事をした小紅。
新選組の屯所の庭のほぼ全体に掘られた落とし穴は一部、雪本人がハマってしまったが効果は抜群。今朝だけで十数人が犠牲になったらしい。
勝手場で小紅が仕掛けたコショウも、気付かず朝餉担当の隊士が火をつけた途端に効果を発揮してしばらく勝手場への立ち入り禁止。
止まらない涙と鼻水で顔面がドロドロになって駆け込む隊士達で、井戸が埋め尽くされたそうだ。
他の悪戯もことごとく引っかかって作戦は成功。鳶と猫丸も大金を盗んで、町の貧しい家庭にバラまいてきている。
残りの金もしばらくは食費に困らないくらい多く残っているし、仕事としては上々だ。
黒鷹の言う通り、怪我をすることだっていつものこと。小紅はまだ慣れていないから、鷹の翼の中で1番能力が劣っている自分のせいだと思い込んでしまう。
それをわかっているからこそ黒鷹は、あえてそれ以上何も言わず口を閉ざして目を閉じる。
「…………お茶をお持ちしますね。お体の具合がよくなるまで、おそばにおりますから」
鷹の翼の頭領、黒鷹の小姓としてせめて、こんな時くらいは小姓らしくそばにいたい。それに今は何となく、黒鷹を1人にしてはいけないような気がする。
なぜそんな風に思ってしまうのかは小紅自身にもわからない。でも、小紅は身の潔白を証明するため、自分にできることを精一杯やろうと決めた。
自分でやろうと決めたことは最後まで諦めずにやり切る。それが小紅の……心意気?意地?
黒鷹と目を合わせることもなく部屋を出ると勝手場へ行き、急須に茶葉を入れてお湯を沸かす。この勝手場の扱いももう慣れたものだ。
1度沸騰させてから少し冷まし、お湯を急須に入れると湯呑みと一緒におぼんに乗せて再び黒鷹の部屋へ。
声がする。黒鷹と、これはきっと情報屋の千歳の声。外で声をかけてから障子を開け、中に入る。
「あぁ…………わかった。わざわざ言い訳を言いに来てくれてありがと。大丈夫、僕達のことは僕達で何とかするから」
「そう?最近、あちらさんも妙にピリピリしてるのよねぇ。こっちに機密情報を流してないかってやたら疑われたりー……情報屋なんだから情報の売買なんて当たり前だし、そんなことはわかているはずなのにねー?」
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