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きょうだい
8P
しおりを挟む近藤になだめられて正気に戻った土方はそれでもなお黒鷹達をギンッ!と鋭く睨み付け、刀を鞘に納める。
「いやはや、そっちは聞き分けの良い部下のようで羨ましいな。だが、黒鷹はずっと和鷹に嘘を吐いているというのに強い信頼を築いているものだ」
「だまれ。あんたには関係ないことだ」
背を向けて屯所から出ようとした黒鷹の足が止まった。夜空色の目に鋭さが増し、わずかに声が震えている。
肩を借りている和鷹はただならぬ雰囲気に不安そうに黒鷹を見上げ、その焦った顔に目を見開く。そしてチラリと顔を背後の近藤の方に向けた。
「聞くな。僕達を混乱させるための、ただの戯言だよ」
「戯言なわけがないだろう。出会ってからずっと、血のつながりもない赤の他人なのに兄弟だと偽ってきたのだからな?」
「っ!!近藤勇、貴様ぁ……っ!!」
「兄上?血のつながりもない赤の他人って、どういうことだよ?俺達のことなのか?俺と兄上が本当は兄弟じゃないって、そういうことなのかよ、なぁっ!?」
近藤が言った言葉が真実だということは黒鷹の反応、表情が証明している。
心の奥底から爆発した憎悪に、悲鳴にも似た叫び。黒鷹の夜空を憎悪が覆いつくしてしまいそうになるが、血がにじむほど唇を強く噛んで耐えた。
いずれはわかってしまうこと。だが、もう少し先であってほしかった。なんていうのは黒鷹のただの逃げ。
黒鷹は止めていた足を大きく踏み出し、つかみかかってきた和鷹を暴れないよう雪に1発殴ってもらい気絶させてから走り出した。
逃げた。近藤から逃げた。真実を知り混乱と動揺に心乱される和鷹から逃げた。そして、嘘を吐き続けてきた自分から逃げた。
なぜ近藤が知っていたのか?なぜ今暴露してしまったのか?
考えられるとすれば、鷹の翼を内から壊すため。頭領とその補佐である2人が仲たがいをすれば、必然的に鷹の翼全体の均衡が崩れてバラバラになると踏んだのだろう。
情報は千歳から買ったのか、それとも独自の情報網で入手したのか。いずれにせよ、明るみにさらされた真実は黒鷹と和鷹以外にも大きな影響を与えることになる。
黒鷹と和鷹は兄弟ではない。瞳の色が同じだというだけで、赤の他人。ではなぜ和鷹は今まで兄弟だと信じ込んでいたのか?
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