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きょうだい
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しおりを挟む「っ、そんな状態で自力で逃げ切れるわけがないだろ。僕は、もう誰も犠牲にしないって決めてるんだよ」
口元の血を拭った黒鷹が和鷹の肩をつかんで下がらせ、弱っている和鷹を狙って突っ込んできた近藤の刀を受け止めた。
雪は旦那との再びの分かれを惜しむこともできずこの場に残っているが、猫丸は小柄でとても足が速いのですでに小紅の手を引いて屯所の外にまで逃げていた。
雪は1人で暴君の土方と、黒鷹は和鷹を庇いながら近藤と戦っている。圧倒的に不利だ。
キレて理性がほとんど飛んでいる土方を相手に、雪は丸腰で戦っている。雪はその怪力故、刀ではなく己の体、体術を武器にしている。
一撃を食らわせられればかなりの威力を発揮するが、間合いが狭いので避けるのに必死でなかなか繰り出せない。
黒鷹も、重傷を負ってマトモに立ってもいられないのに意地で前に出ようとする和鷹を庇いながらなので思うように動けない。
このままでは本当に3人ともが縛につかされてしまう。そう悟った黒鷹は和鷹から刀を奪い、二刀流で近藤に立ち向かう。
「やっと本気を出してくれるのか、黒鷹。だが残念だったな。わしは二刀流が相手でも怯まぬぞ」
普段の黒鷹は一刀流だし帯刀している刀は1本。しかし、片手の方が扱いやすいことに気付いてからは我流で二刀流を磨くようになった。
それは、近藤もよく知っている。伊達に何年も新選組の局長の座についてはいない。
舞うように斬りかかる黒鷹の刀2本の動きを見切り、正確に防いでいる。さらに上から叩き潰すように振り下ろされれば、手から腕全体が痺れるほどの強烈な衝撃が黒鷹を襲う。
黒鷹は二刀流にするため、そして和鷹から武器を奪って大人しくさせるためにやったことだろうが。和鷹は悔しさに歯を食いしばっていた。
悔しい。土方に負けたこともそうだが、重傷を負って戦うことができないどころか足を引っ張っている。
黒鷹の背中を、必死な顔をその目に映し小紅の気持ちがよくわかった。守られる、手を貸したいのに何もできないもどかしさを。
負けられない。ほんの一瞬でもいい、近藤に隙ができれば黒鷹は決定的な一撃を食らわせることができる。何か、俺にできることはないのか?
何か。何か、何か、何か何か何か何か何か何か何か何か何か……っ!!
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