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そばとうどんと油揚げ
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しおりを挟むまず1つは、包丁以外で何かを切ったことがないから。短刀でも、首を斬りつけたり心臓を刺し貫けば相手を死に追いやることはできる。が、小紅には経験が乏しすぎてきっと一撃では仕留められない。
狙って、まっすぐ振り下ろしたり突き出すことなんて難しい。浅くなって命を奪うどころか、致命傷にすらならないかもしれない。それくらいの非力さ。
鷹の翼は絶対に相手を殺さない。追ってこられないように深手を負わせても決して、命を奪うことはしない。死者を出したことは今まで1度もない。
いつも手加減して、あくまで悪戯を目的にしている。それなりの手練れだから、うっかり殺してしまったということもない。
だが小紅は違う。自分の、黒鷹の命を守るためにうっかり手が滑って、命を奪ってしまったなんて言い訳は通用しない。
技術的にも、手練れの集団である新選組を相手にするなんて。攻撃を上手く見切って躱せられればいいが、躱せたところでマグレだろう。
攻撃が当たって誤って命を奪ってしまったら、攻撃が当たらなかったら、小紅は戦意喪失してしまう。足手まといだと。
2つ目は精神的な問題。覚悟を決めたと言っても、相手は生身の人間。相手の気迫に怖気づいてしまったら命はない。
それにきっと、相手の“命を奪う”ということはなくても“傷つける”ことにためらってしまう。
自分達の都合のために傷つける、その行為が正直小紅は嫌なのだ。小紅は優しいから。小紅は心も体も弱いから。
だから実際に戦闘になった時、小紅がどうなるか、どうするかによって黒鷹は決断する。
もしも彼女が弱いながらも現実と向き合ってくれれば、彼女を仲間として認め頭領である黒鷹が守るだろう。
しかしもしも、彼女が“使えない”と判断されればその時は、新選組の密偵だろうとなかろうと彼女の命の炎はそこで消されてしまう。
使えない小紅を守りながら進むのも逃げるのも、黒鷹達にとっては命取りになってしまうから。彼らが生き抜くため、切り捨てる。
いくらどう考えても、小紅が生き続けるためには強い精神とそれなりに戦える技術が絶対必須になる。
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