鷹の翼

那月

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そばとうどんと油揚げ

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「潰れるほどは飲まねぇよ。悪いな和鷹、こいつの癖だから勘弁してくれ。こっちも、今すぐあんた達をとっつかまえてやりてぇの我慢してやるから引いてくれよ」

「何言ってんの、引くのはそっちでしょ。こっちは仲良く穏やかに晩御飯を食べてたのを邪魔されたんだよ?特別に許してあげるから出てってよ。何なら僕達の分も払ってくれてもいいんだよ?」

「うっわぁ、図々しいなぁー!さっすがぁ、鷹の翼の頭領ってだけあるねぇー、あっはっははははは――いでっ!?」

「図に乗るなよ黒鷹。てめぇらは悪人で俺達は新選組だ。命令がねぇから手を出さねぇってだけで、その気になればいつでも全員をお縄にかけることだってできるんだからな」

「その言葉、そっくりそのまま返してやる。貴様らのようなお飾りの活躍なんか、俺達よりもずっと町人に期待されてねぇんだよ。不要なゴミは俺達が消してやる」

 三つ巴ならぬ四つ巴状態。若干1名は除き、3人の静かな睨み合いにより周りの客達は自分の椀を手に隅へと避難している。

 能天気にまだ酒を飲んでいる飲んだくれは、新選組の十番隊隊長の原田左之助。原田の脳天に鉄拳を振り下ろしたクマ男は同じく新選組、二番隊隊長の永倉新八。

 相当はしゃいだのだろう、ボサボサになった赤い髪をいじり始めた原田は酒が大好き。酒のためなら何でもするが酒に飲まれやすいので有名だ。

 刀は帯刀しているが槍の名手で、屋内での戦闘は苦手。空いた時間はよくこの永倉とつるんでいる。

 原田の酒の相手をするのはいつもこの永倉だ。そこそこ酒は飲むが、原田ほど酔い潰れることはない。適度に酔っぱらっても理性はある、常識人。

 一触即発の静かな攻防戦を繰り広げている永倉と黒鷹。先に我慢できなくなって手を出した方が負けだ。

 2人よりもまず、和鷹が危ない。刀を抜きたくて手がソワソワしてしまっている。店主がそろそろ止めに入ろうと拳を握り締めたその時。

「せっかくのおうどんとおそばが延びて美味しくなってしまいます。これでは店主に申し訳ないですよ。こんなにも美味しいおうどん、だめにしたくないので私は食べますね?」

 意外にも小紅は冷静だった。1度は驚いて立ち上がったものの、かわいそうなことになりそうなキツネうどんに視線を落としストンッと座る。

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