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桜鬼と桜樹
3P
しおりを挟む昨日はとりあえず寝られるように荷物を寄せただけの、元物置き部屋を片づけて掃除をした。あとは必要なものをそろえるだけ。
黒鷹もついてきたものの、見ているだけで何もしない。小紅がせっせと掃除をして、重たいタンスを運ぶ時だって手を貸そうともしなかった。
小紅が1人でどこまでできるのか?それを見定めていたのかもしれないが。黒鷹の期待通り?小紅は最後まで、1人で全てを危なげなくこなしてしまった。果たしてその姿が黒鷹の目にどう映ったのか。
途中、町から帰ってきた猫丸が「お土産だにゃー」と特大の饅頭を手にやってきた。
「ごめんなさい。1つしかなかったのにゃー。小紅さん、食べる?半分こ?じゃあにゃー」
あっという間。特大の饅頭を黒鷹の手に握らせて、すぐに部屋を出て行ってしまった。1つしか買えなかったことにシュンとうなだれていた姿は耳が垂れた子猫を彷彿とさせる。
コテンと首をかしげて小紅を見つめていた時の真っ黒い目は「当然、頭領に譲るよね?」とでも言いたげだった。
もちろん小紅はそのつもりで、苦笑しながら「私は構いませんからどうぞ召し上がってください」と言いお茶を取りに行こうと立ち上がる。
しかしそれを何かと小紅を気に入っているらしい黒鷹が許すはずもなく。素早く手をつかんで引っ張った。
あっけなく体勢を崩した小紅はガクンッと彼の方へと倒れかかる、のを回避しようと勢いよく膝を突いた。打ちつけた膝頭からビリビリッと、痺れるような痛みが駆け巡る。
それと同時に、痛みよりも黒鷹の距離の近さに悲鳴を上げようと開いた彼女の口を、あんこたっぷり特大饅頭が塞ぐ。半分に割られている。
「んむっ!?はっ……な、何ですか、急に!」
「おぉー、良い反応。いやぁ、僕、こう見えて食が細いからさ。こんなに大きな饅頭、1人じゃ食べきれないからおすそ分けってね。あ、もしかして苦手だった?」
「甘いものは好きですが。でも、いきなり口に突っ込むなんてあんまりです。あやうく黒鷹様を敷いてしまうところでした」
「あはは。可愛い女の子に押し倒されるなんて嬉しいよ」
「もう、笑ってないで少しは叱ってくださいよ。私、黒鷹様のお力になりたいのです。おそばにいたいのです。たとえ――」
「紅ちゃん。つい口が滑ってしまったなんて、困るのは君の方だよね」
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