63 / 386
知らぬが仏
10P
しおりを挟む「でもクロポンに買ってもらうのは無理無理。この情報は特別、お金でどうにかなるものじゃないわ。そうね、クロポンなら、そうねぇ…………ちぃがまだ知らないクロポンの秘密を教えてくれたらかしら?」
「それは、あげられないなぁ?大丈夫だよ。無理に知ろうとは思わない。それに、紅ちゃんは必ず自分から教えてくれるって約束してくれたから。僕は信じて待っているよ」
何でも知っている情報屋の千歳が知らない情報が、黒鷹にはある。千歳はずっとそれが欲しくてありとあらゆる方法を使って知ろうとしているんだそうだ。
それは情報屋として、かなりの高い価値がつく情報を仕入れたいから。だがそれ以上に、千歳には欲がある。世の中のありとあらゆることの全てを知りたいという、変態じみた欲望が。
結果はさっきの発言通りだが。どうやっても知られない秘密とは、より一層知りたくなるものだ。
「あらぁ、よそ者なのに随分とお優しいのね?惚れちゃったの?」
「なんで皆して色恋話になるんだよ。この子は良い意味でも悪い意味でもまっすぐだから――どうした?」
ヤレヤレとため息をついて「そんなんじゃないよ」と千歳にヒラヒラ手を振った黒鷹の顔つきが、変わった。
千歳の神経が別の場所に向けられ集中している。真剣な顔で目を閉じた彼女は口元だけで何か呟いているようだが、声は発していないので何と言っているのかまでは聞き取れない。
その時、小紅は何か細長いものが部屋に入ってきたのを見た。とても素早く、それは千歳の肩にのぼって留まった。
「……そうか。クロポン、また何か桜鬼に無理させちゃったんでしょ?急に胸を押さえて倒れたわよ。今は部屋で休ませているわ」
「倒れ……っ、桜鬼さんが!?」
「ちょっと様子を見てくるよ。紅ちゃんと千歳はここでくつろいでていいから。大丈夫、大したことはないからそんな不安そうな顔しないで?」
黒鷹は1度小紅をジッと見つめると、少し首を振ってから立ち上がり部屋を出て行ってしまった。
去り際ににっこり微笑んではいたが、急に胸を押さえて倒れることが時々あると言っていた。発作?桜鬼は何か肺か心臓の病気でも患っているのか?
黒鷹も千歳も落ち着いているし、特に慌ただしくバタバタ走るような音も聞こえてはこない。
本当に、時々そうなる。だから皆慣れている。対処の仕方を知っている。いや、だからって大丈夫ということはないだろう。
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる