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つながり
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しおりを挟むあっという間に2杯目も飲み干した猫丸が空になった湯呑みをおぼんに返すと、雪と鳶もそろっておかわりを要求。
その様子を見ていた高遠と和鷹も、渋々といった様子で工具から手を離し小紅達の元へ。
「はい。あ、どうぞ。高遠さんとわかれてから着物をいただき、桜鬼さんと町を散策していました」
「てめぇはもう新選組に顔と名前を憶えられたぜ。せいぜい襲われねぇように気を付けるんだな。特に平隊員。あいつらはバカだからな、女だろうとロクに戦えねぇ小姓だろうと容赦しねぇぞ」
新選組と出会ったことは高遠から他の人達に知らされているらしい。可愛らしく腕組みをしている猫丸が「町に出すのは早すぎるにゃー」と呟いた。
「新選組は、こいつを1人にしなければ大丈夫だろ。問題はそっちじゃない。お前、桜鬼に何もされなかったか?」
「え?着物問屋の店主に騙されそうになっていたのを助けてくださいましたし。私が町にはあまり来たことがないと言うと様々な店を教えてくださいましたが……」
「それだけか?いや、ならいい。気にするな」
恐る恐る湯呑みに口をつけわずかにお茶をすすり、しばしお茶を凝視していた和鷹は一気に飲み干して空になった湯呑みを突き出しながらそう言った。
桜鬼に何もされなかったかとは、穏やかではない質問だ。
小紅も首をかしげながらありのままを答えたが、和鷹はホッとした顔を隠すように反らせた。少しだけ濃くなったお茶を、また一気に飲み干す。
少々お節介が過ぎるほどの優しい桜鬼と長時間2人きりだったというだけでこんなにも心配される理由が、小紅にはわからない。
他の4人に目を向けてみても、すでに湯呑みを戻して工具を手に作業を再開している。
小紅は知らない方がいい。尋ねられても答えられない、という意思の表れか。口を閉ざし、和鷹も黙々と作業に取り掛かる。
ただ、小紅が来たばかりで疑わしいからという理由だけではない。彼女のことを思って、知るべきではないと案じている。
それに気づけない小紅は寂し気に、空になった湯呑みを持ってその場を後にした。
勝手場で急須に残っている濃い目のお茶を飲み干し、そのあまりの濃さにむせて慌てて水を飲む。滑稽だ。
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