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邂逅
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しおりを挟む「小紅ちゃんは、さ。あの着物の色が好きなのかい?」
「え?あ、はい。赤も好きですが、あの着物は…………2番目に好きな色ですよ」
桜鬼に可愛らしい妹がいるという想像を膨らましていたところ、突然振られた話に熱が引いた顔を上げる小紅。
あの着物とは、小紅が鷹の翼にやってきた時に着ていた着物のこと。帯は橙色のを締めていて、水色っぽい、水浅葱色の爽やかな着物。
新しく買う着物の参考にと考えたのか、はたまた何か気になることがあったのか。小紅の返事を聞いて「あぁ、なるほどね」と何か納得した様子。
「小紅ちゃんが僕以上に嫌われている理由はそれかもしれない。水浅葱色。わかるかい?」
着物の色が理由で嫌われるとは?鷹の翼の彼らがそろって水浅葱色が嫌いなのか?水浅葱色に何か恨みでもあるのか?
考え込んでいると、何やら騒がしい声が聞こえてきた。声のする方、遠くに人だかりが見える。
桜鬼の口から「あららら」と溜め息が漏れてきたので彼の視線の先に目を向けると、やっぱりというか人だかり、の中心で一際けたたましく何か叫んでいる人物を見つけた。
「だぁーかぁーらぁー……。てめぇらが俺様んとこに間者ぶち込みやがったんだろ!?若ぇ女使うなんて、天下の新選組も落ちぶれたもんだぜ!」
「間者なんて今更だよ、高遠君。勘違いだ。というか鷹の翼には若い女の子が入ったのだね。可愛いかい?」
「なっ!!は、はめやがったん――むぐっ!?」
「はいはいはい、そこまでだよ高遠。自分から身内事情をベラベラしゃべる馬鹿があるか。少しは頭を冷やしなさい。はぁ。見回り中にすみませんね、松原さん」
その人だかりのほとんどは皆、同じ羽織を身にまとっている。明るい水色、浅葱色の隊服の新選組。
中心で屈強な男3人に取り押さえられているのは、相手を殺せそうなほど鋭い目つきで睨みつけている高遠。自分よりもはるかに大きい男3人に組み敷かれていてもなお暴れている。
そして、そんな高遠に睨まれているのがここにいる新選組の隊の隊長である松原忠司。
歳は30ちょうど。非常に温厚でよく仏様のようだと言われているが、非常に怪力でもある。雪よりも違った意味で怪力。
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