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鷹の翼
11P
しおりを挟む「桜鬼さん。優しすぎて、怖いです」
素直な感想を述べた割にはまた顔が赤く染まってしまう。これはもう、彼女が人――主に男性――に慣れていないための性質なのかもしれない。
「クスクス。まるで字足らずの俳句みたいになってるよ。僕が怖いだって?腹黒だってよく言われるよ。でもまぁ、僕の優しさには裏がないから、安心していいよ」
ニコッと笑って手を引っ込める桜鬼は黒鷹とは違い、相手の反応を見て楽しむ性格ではないのでイラッとはしない。
それでも胡散臭い笑顔だと、小紅は正直に思った。本当に裏がないのか?小紅を安心、油断させるための甘い罠かもしれないと疑ってしまう。
そして同時に、腹黒いのは自分の方だと思った。誰よりも黒くドロドロ。決して誰にも見られてはならない、漆黒。
だからこそ彼女は明るく笑う。紺色の羽織の袖を握り締め「桜鬼さんが親切な方で良かったです!」と。
再び歩き出した2人は屋敷から降りて庭へ。出入り口の門を潜り抜けて町へと向かった。
そこで大きな騒動が起こっているとは、ましてやそれに巻き込まれることになろうとは。この時の2人は思いもしなかっただろう。
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