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いざ、鷹の巣へ
3P
しおりを挟む胸元を大きく開けた赤い着物は裾が膝の上まで捲り上げられ、とても動きやすそうだ。きっと普段からよく動いて、走って、吠えまくっているのだろう。そう、狂犬のように。
高遠の発言に他の4人もそれなりに頷き、青年は腰に手を当てて青い空を仰いだ。
「先代の遺言なんだよ。いつかこの子が訪ねてくるから、その時は必ず拒まずに招き入れること。力になってやりなさいってさ。言われてたの、今思い出した」
もちろん全員、小紅でさえ初耳だ。ポンと手を打って「最近忘れっぽくてね」と笑う青年に呆れ果てる面々。そしてやっぱり。
「し、し、し、信じられるか、ドアホッ!!」
小紅に食らいつく勢いで吠えた狂犬は、首に巻いていた手拭いをバシンッ!と地面に叩きつけて去って行ってしまった。
修復の続きをする気はないらしく、そのまま門を通り過ぎて外へとあっという間に見えなくなった。町へ行ったか。八つ当たりで騒ぎを起こさなければいいが、無理だろうな。
イライラを爆発させた彼が残した手拭いを拾い上げ、土を叩き落とすのは狂犬の隣にいた背が高い青年。
「悪いね、小紅ちゃん。僕は宗方桜鬼。さっきギャンギャン吠えていたのは高遠だよ。彼はいつもあぁだから、気にすることはないからね」
初対面であれだけ吠えられれば、気にしないことはできないだろう。たぶん、会うたびにさっきのことを思い出して震えあがる。
高遠はいつもあんなにイライラしているのか?それはそれで、高遠だって疲れるはず。些細なことでキレて怒鳴り散らすのが彼の厄介すぎる性格だそうだ。
と、苦笑を浮かべながら「女性や子供への暴力は滅多にない子だから」と言う桜鬼。背中まである青っぽい濃い灰色の髪は高く結われていて、長い前髪は右目を少し隠している。
奥に見える高遠と同じ赤い瞳は優しく、しゃべり方といい雰囲気といい優しいお兄さん。まるで高遠と正反対。身長を含めた見た目といい性格といい、対極にいる兄弟に見えなくもない。
血縁関係はないらしい。青地に赤と紫の線が入った着物は半袖で、赤い履き物の膝から下には鈍色の脛当を履いている。
物腰柔らかく桜鬼に「歳はいくつ?」と聞かれ「18です」と素直に答えた小紅に、彼はまた微笑んだ。
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