惰眠童子と呼ばれた鬼

心

５P

　あいつはあいつで、自分の気持ちに決着をつけるつもりなのだろう。墓前で、自分の想いを小娘に伝えるために墓参りに来たのだからな。


　俺も和比呂もキツネも、それぞれ抱えているものに別れを告げる。いつもと変わらぬのはヤモリだけか。


　ヤモリはその体ゆえに直接手を貸してくれるようなことはできないが、それなりの年月を生きている。


　俺の方が何倍も長生きをしているはずなのに、ヤモリは時々、仏様かと疑ってしまうような悟りの境地に入る。息をのむほどの確信を突く言葉を紡ぎ、俺達を見守ってくれた。


　見た目的にも心的にも、どっしりと構えていて安心感があるというのか。貫禄がありすぎるのだな。


　俺の家の外に、友達が数多くいるんだそうだ。ヤモリ以外にも様々な種類の動物の仲間が。ゆえに町の人間達のこともよく知っている。


　ただヤモリは、決してこの家とその周りからは離れない。俺に頼まれ続けている、家を守るという約束もあるが。


　数日くらいならいいから遊びに行けばいい。そう言ったこともあるがヤモリは「この家は居心地がよくてのぉ」と笑うばかり。


　きっと、ヤモリにも何か事情があって町にいる友達に会いに行ったりはしないのだろう。あぁ、もしかしたら俺と同じで実は人間が嫌いなのかもしれないな。