惰眠童子と呼ばれた鬼

那月

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約束

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 約束を交わした時、俺に“生きる”特別な力が宿ったような気がした。彼の力なのか?何にせよ、俺は生き延びることができた。


 結局、朔は酒呑童子の不思議な力で操られていた。最強かつ最凶最悪の酒呑童子とその一味は殲滅した。と、町ではそういうことになっていた。


 わかっていた。いつかはこうなるんだと、俺も酒呑童子も。それでも、俺は悔しい。人間の醜さに寒気がした。


 友だと言って笑っていた朔は、助けに来なかった。陰陽師として、安倍に逆らえなかったのだろう。それでも、あいつは俺達を諦め見捨てた。


 逆らえば朔だけではなく彼の家族や身内の命はないと脅されでもしたか?人間は、目的を達成するためならば手段を選ばない。


 朔ならば身内を守りつつも、酒呑童子を助けられる力と知能があると信じていたのは。俺の過信だったか?


 酒呑童子が死んで我に返り自由を取り戻したとされる朔。保身のために真実を墓場まで持って行くつもりか?だが、恨んではいない。


 恨んではいないが、ただただ悔しい。何もできなかった、生かされてしまった無力な自分に怒り狂う。


 自分の家で発狂しては冷めて我に返り、涙を流す。そして眠る。目が覚めて、また沸々と沸き起こる怒りに発狂しては涙を流して眠るを繰り返す。


 その日の夜、盛大な宴が開かれていた。そこに朔の姿がなかったのは言うまでもない。


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