惰眠童子と呼ばれた鬼

那月

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親友

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 キツネを追ってきた女が追い付き、俺からキツネを奪おうとしたが返り討ちにしてやった。のちに逃げた女が町で「あの山にはバケモノがいる」と触れ回るが、信じる者はいない。


 面倒だから捨ててしまおうと、意識朦朧のキツネを放ろうとしたがキツネは俺の腕にしがみついて離れなかった。


 俺を鬼だと知っても俺のそばにいたい。あの女から逃げるために。それから、助けてくれたお礼に何か恩返しがしたいからと言って聞かなかった。


 2度と俺の前に姿を現すな。それが当時の俺としては最適な返事だったと思う。だが俺はその時とても、かなり腹が減っていた。腹が減りすぎて、正しい判断ができないくらいに。


 故に後悔しまくりの、とんでもなく馬鹿馬鹿しい約束をしてしまったんだ。「お前にキツネの名をやる。代わりに食料をよこせ、死ぬまで俺に仕えろ」と。


 この約束をキツネは自分の都合のいいように解釈し、俺と友達になったと長年勘違いしていたようだな。


 俺達は友達同士で、キツネは親切心で俺に扱き使われているとかなんとか。ノーテンキなやつだ。そんなわけがなかろうが。


「あー、旦那だって不自然に笑ってるのじゃ」


「笑ってなんかいない。見間違いだ。お前の目は、両目とも腐りきっている」


「腐ってない!いーや、怖いくらい1人でニヤついていたのじゃ。何か面白いことでも思い出していたんじゃろ?」


 しまった、顔に出てしまっていたか。人のことを言えた義理ではないな。気が緩んでいるのか。結論、俺は優しくなんかない。キツネを友だとは微塵も思っていない。


 そう言うと、キツネは少し拗ねるがすぐに苦笑を浮かべ「いつか、必ず友達だって認めさせてやる」と笑った。


 臨むところだ。額を小突き、またしばらく昔話に熱を上げた。小娘の話、和比呂の話、俺の話、キツネの話、それから歌磨呂の話。


 話の途中で、座り直そうとしたキツネが。グニッと、ヤモリを押し潰した。


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