惰眠童子と呼ばれた鬼

那月

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不和歌麿呂

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 知って、受け入れられるのか?これはかなり、受け入れがたい事実だが。俺が確認したかったことは確認できた。あとはその証を確認するだけ。


 そう伝えると、歌磨呂はためらうことなくしっかりと頷いてみせた。やはり見た目とは裏腹に肝が据わっている。


 俺は歌磨呂を見、和比呂を見、また歌麿呂に目を向けると一言「俺が橘時久だ」と言葉を放つ。張り紙に書かれていた、歌麿呂が探していた男、その本人。


「俺がまだ人間だった時の名だ。鬼になってからは寝てばかりいることから惰眠童子と呼ばれ、今はわけあって蒼輝と呼ばれている」


 何百年ぶりにこの名前を思い出したのか。張り紙を見るまでは完全に忘れていた。俺の本名なのに、懐かしすぎて自分の名前ではないような感じがする。


「それからお前が俺を探す理由だが。それはお前の前世が俺の唯一無二の親友……………………酒呑童子だから、だ……」


「酒呑童子って、平安時代に人間を食ったりすげぇ悪さして源頼光らに討たれた、あの酒呑童子か?」


「他にいないだろうが。同姓同名のやつがいるのか?酒呑童子は俺の師であり兄であり父であり、かけがえのない友。俺は酒呑童子と約束したのだ、その約束のために生き続けている」


 俺は歌磨呂を指さし、こう言った。


「腰よりも上、背中の左側に1つ、胸の真ん中あたりに生まれつきの治らぬ傷痕はないか?」


 歌磨呂はビクッと肩を震わせ、コクコク頷いた。酒呑童子は最期、源の頼光と他4人に討たれた時にその2か所に槍を刺されたんだ。1番の致命傷は斬首だったが。


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