惰眠童子と呼ばれた鬼

那月

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死神の仕事

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「1週間の仕事の報酬は?まさか用意してないとか言わないだろうな?現金なら拒否するからな」


「それなら大丈夫。ちゃんとあなたの手元に届く手はずになっているわ。頑張ったのに。あーあ、あたし、美大に行けないんだ。高校卒業もできないんだ……」


 夢は潰える。初めからそうなることが決まってた、全ては起こるべくして起こったこと。小娘は生き過ぎた。早くに死を迎えていれば未来に夢を描くこともなかったろう。


 時折、病のせいで激しく咳き込む。そのたびに何となく、手を伸ばして小娘に触れる。触れたところで病が治るわけでもないのに。


 やがて小娘は目を閉じ、静かな寝息を立て始めた。おかしいな。やっと静かになって清々したはずなのに、心臓の奥が軋むようだ。


 この感覚が何と呼ばれているのか知っている。小娘に対してそんなことを思う自分に驚きだな。


 俺に会いに来た時から自分の病気のことをわかっていたのに、それでも俺を探し力づくで起こし1週間だけ守ってほしいと言ったのは。


 たった1人きりで最期を迎えるのが怖かった。最後の1週間くらいはせめて、誰かと一緒に過ごしたかった。そんな思いが込められていたのかもしれない。


 さて。俺は、約束通り最期までそばにいると言ったが。ただそばにいるだけで何もできない。


 小娘は己の運命を受け入れてしまった。情が湧いたとかではない。ただ、小娘の性格を考えると全力で迫りくる死に抗うと思った。手助けをしようと思った。


 本人がこうなった以上、俺にはそばにいることしかできない。小娘を襲うものはもう、病以外なくなってしまったのだから。


 人間の小娘なんかに家を探し当てられ、叩き起こされ、死から1週間守ると約束させられ、結局は助けられない。


 馬鹿な話だ。ヤモリに良い土産話になる。全てが片付いたら俺は寝る、疲れたんだ。3年くらいは寝たい。



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