惰眠童子と呼ばれた鬼

偶然は必然

１P

「ねぇ、今日は近くにいてくれるんでしょ？ゴホッゴホッ！ん、ケホッ」


「あぁ。なんだ、風邪でも引いたのか？昨日のゆずと大根おろしは大して効かなかったか？」


「咳だけ、熱もないから大丈夫よ。もしかしたら狐アレルギーなのかもね。う、嘘よ、嘘嘘。それ以上距離を開けないでっ」


　昨日のように学校へ向かって歩く。結局俺はキツネをあの状態のまま腕に抱き、小娘の部屋で一夜を明かした。


　小娘が朝起きて来た時。まだ眠っているキツネを見て昨日の姿を思い出し、ビクッと跳ねた。が、目を覚ましたキツネが「ん、んあー、よく寝たのじゃー」といつもと同じだったので、安心したのか小娘はキツネの頭を撫でた。


　小娘、意外と度胸がある。まだ手にも口周りにもカラスの血がついているというのに、わずかに手を震わせるだけで撫でるとは。


　だがキツネもすごかったぞ。あの女嫌いのキツネが、絶叫することも暴れることもなく耐えきってみせたのだ。ただ、目に涙を溜めてガタガタ震えてはいたがな。


　小娘をドン引きの目で見るキツネは、昨日の“食事”の後とは違い落ち着いている。疲れている様子だが、これでしばらくは“食事”をしなくても大丈夫だな。


　そしてそのあと、俺とキツネはそろって風呂場に連行されたな。２人共、血まみれなのでまずは風呂に入れと。


　風呂から戻ると朝食が用意されていた。ハチミツが塗られたトーストと、甘いココアだった。どちらも俺には甘すぎるが、まぁ悪くはない。


　今日は和比呂も本体が登校するということなので、俺も学校の近くで待機する。９時間の暇をどう潰そうか。