惰眠童子と呼ばれた鬼

那月

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あきづき

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 そんなに嫌か。嫌だろうな。なにせ勝手に視えるのは問題ないが、望んで意識して力を使えば酷く体力を使うし精神的な疲労もある。高校卒業を控えた和比呂は小娘同様、忙しい。


 だがそれでも、鬼と交わした約束は絶対だ。深い深い溜め息を吐き、和比呂は渋々頷いた。


「放課後になったらここに誘導する。準備が整ったら視てやるよ。ところで、見慣れねぇ私服の男が1年に入ってんだが、人外だな。あんたの仲間か?」


「あれは妖狐、俺の下僕のキツネだ。女が苦手だが人間がたいそう好きでな、俺の代わりに小娘のそばにつけているんだ。視えたのか?」


「いや、3年間皆勤の俺が卒業間近で皆勤賞を逃すわけにもいかねぇから先に式を飛ばしていたんだ。完全に五感を共有する優秀な式だぜ」


 ほう。どうやら俺は、この人間を少し見くびっていたようだ。19代目ともなれば陰陽の力も弱くなると思っていたが、いやはや、式神まで使えるとはな。


 しかも本物と変わりなく動き、しゃべり、表情も変わる。語感さえ共有するとは、なかなかに高度な技術だ。


 今は自分の分身である式神が代わりに授業を受けているらしい。ここでこいつといれば、小娘の様子が鮮明にわかるな。


 俺の札も持たせているし、何かあればすぐに駆けつけられる。キツネは…………必要なかったな。


 俺は壁に背を預けて庭に目を向けた。使用人らしき男が竹箒を手に、せっせと庭を掃いている。目を閉じて気配を探ってみれば、他の場所にも何人かいるようだ。


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