惰眠童子と呼ばれた鬼

那月

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人間の住処

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 キツネはあのあと、消防が駆けつけ鎮火するまで逃げ遅れた人を救助し続けていた。炎に巻かれ酷いやけどを負っても。周りが落ち着いてきたところで俺がいないことに気付いて帰ってきた。


 人間よりも頑丈なのだから、偽善でも、体を張って助けるべきじゃないのか?少しくらいは誰かのために自分が犠牲になることをしたっていいじゃないか。そう、俺を責め続けた。


 目の上が切れて流れた血で視界が赤く染まって。赤の世界にいたキツネは、怒りのあまり叫んでいた。


 手が届かず、柱が崩れて目の前で命を落としたのを見てしまったんだとあとで聞いたな。助け出しても手遅れ、親とはぐれた子供も助け出せなかったと。


 最後には俺を殴る拳を真っ赤に染め、ボロボロと泣き出して我に返る。俺の有様を見て自己嫌悪。


 俺はあえて抵抗しなかった。ボロクソに言われても、俺には全てが面倒くさい。何とも思わない。殴られるのは痛かったが、すぐに治ってしまう。


 ぶつけられた言葉は右から左。何度か意識が飛びそうになっても、こうしてしっかり覚えている。それほど、キツネは必死だったから。


 キツネは自分を殺してくれと俺に懇願した。だが俺はしがみつくキツネを払いのけ「死にたければ自分で勝手に死ね。できないのならば、お前はその程度のことでは死ねぬということだ」と吐き捨てた。


 なぜそんなことを言ったのかは今でもわからん。思ったことがそのまま口に出てしまったんだろうが。


 俺とキツネとでは、人間に対する想いも価値観も違いすぎる。俺は興味が無さ過ぎるし、逆にキツネは想いが強すぎる。こればかりはどうにも。


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