惰眠童子と呼ばれた鬼

那月

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朝霧神那、襲来

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「まぁいい。しかし小娘、この短時間で随分と元気になったものだな」


「元気だけがあたしの取り柄だもの。病気にかかったこともないし、風邪だって1度もひいたことはないわ。健康診断ではトップクラスよ」


「俺だって病気をしたことはないぞ?」


「アンタは鬼でしょ。元々体が丈夫なんだから、当たり前だわ」


「キツネはよく拾い食いをして腹を壊すし、よく風邪をひいて何日も寝込むよな?そのたびにうちに来て、迷惑極まりない」


「あーもう、僕のことはいいじゃろ!それよりも、どうして人間の若い女がここにいるのか教えてくれよ、旦那」


 無駄に元気な彼女から貧弱なキツネに視線を移す。苦虫を噛み潰したような顔で腹を押さえているが、また何か派手な色のキノコでも食ったか?


 ニヤッと笑った俺は再び、クスクス笑っている彼女に視線を向けた。その笑顔の裏に何を隠している?


 さて、そろそろ本気でここに来た理由を聞いてやるか……


「俺はまだ知らない。この小娘の度胸を試したまでだ」


 何も知らないキツネに、大変面倒臭いがこれまでの経緯を軽く説明してやると、彼女を見るキツネの目が変わった。怯えの目から、尊敬の目へと。


 すげぇ強者じゃな、とでも言いたそうな目で見つめているが、彼女に対する恐怖心が消えたわけではないらしい。


 キツネは部屋の隅からハイハイしながら戻ってきたものの、やっぱり俺の隣、しかも彼女の手がギリギリ届かないくらい離れて座った。


「で、約束どおり小娘の話を聞いてやる。面倒臭いが我慢して聞いてやるんだ、長くなるようなら多少省いてもいい。長いとまた寝てしまうからな」


「また寝るの!?先に自己紹介しておくわね。あたしは昨日18歳になった朝霧神那。今年高校を卒業したら県外の美大に行くの。将来の夢は画家!風景画も好きだけど、好きで得意なのは人物画よ」


「後半は省いてもよかったな」


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