恋人以上、永遠の主人

那月

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酒吞童子と茨木童子

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「鬼の頭のくせに人間の味方しやがってェ……多少手こずったがまァ、心を失った今となってはもォ、ワタシの可愛い人形だァ。君にならわかるだろォ、ナツメェ?」


「えぇ、よくわかるわ。だから何よ。人の心を甘く見過ぎているあんたは、人の心の強さに負けるのよ」


「へェ、話に聞いていた通りィ、クソ生意気な小娘だねェ。キャンキャン吠えるだけで何もできない弱者の証拠。ま、ワタシはこォんな所で立ち止まるわけにもいかないしィ、先に行かせてもらうよォ。じゃァねェー」


 ヒラヒラと手を振って、羅刹は上の階へと階段を登っていった。追いかけようにも、酒吞童子と茨木童子が立ちふさがる。


 最初から本気なのね。2人は大きく息を吸い込むと、ダンッ!と1歩踏み出して完全に鬼化。


 酒吞童子は全身に赤黒い鎧で身を包んだ感じ。イケメンだった顔もいかつくなって、ゴツい皮膚に1つだけの銀色の瞳が不気味に揺らめいて恐怖を感じる。


 美青年だった茨木童子も例外ではなく、彼の場合は銀色の甲冑みたい。両手の指先から延びる爪は脇差くらい長くて、壁まで斬れそうなくらい鋭利。


 2人に共通するのは額から生えている2本の白い角ね。これぞ鬼の象徴だわ。


 昔戦ったからよくわかる。鬼化した2人は倒せない。片方だけを相手にするのも大変なのに、硬い絆で結ばれている2人が共闘したらもう。


「どうしようマクベス。振り切って羅刹を追いかけても、茨木童子に追いつかれて引き戻されちゃうでしょうし」


「まともに戦えば酒吞童子の怪力でこの病院ごと壊されかねないね。じゃあ……」


 パワーを酒吞童子が、スピードを茨木童子が補う。逃げても、正面から戦っても勝てない。ならどうしろというのよ?今までのあたしならそう叫んでいたでしょうね。


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