ホスト狂いのホスト

第１１章

⑦

　えぇ、俺も標的になった！？嬉しそうな、狂気じみた笑い声にハスキーさんが目を覚まし「やめろ馬淵！！」と声を上げるが。え、馬淵？


「あぁ、やっぱりハスキーはわかってくれたのねぇ。そうよ、あたし、馬淵よ。ハスキーに言われたように運動して、食事も時間とバランスを気を付けて……ここまで減量できたの。他の誰も気づかなかったのに、ねぇっ！」


　マジか！ぽっちゃり系で、ハスキーさんに手っ取り早く痩せるストレッチをせがんでた馬淵ちゃんだ。まだひと月ちょっとくらいしか経ってないよね？なのに顔のラインまでほっそりして雰囲気が違う。まるで別人。


　それを、吹っ飛ばされた一瞬でハスキーさんは気づいたんだ。すげぇや。


「痩せてぇ、綺麗になってぇ、ハスキーを見返してやろうってワクワクしながら来たのぉ。ビックリするかなぁ？喜んでくれるかなぁ？褒めてくれるかなぁ？ってぇ…………なのに。どうして？ねぇ、どうして邪魔するのっ！？」


　馬淵ちゃんは俺達に切りかかってきた。ホスト仲間、スタッフ達は警察を呼んでいるが怖くて中に入れずにいる。男ばっかりの職場なのに、こんな時に何もできないなんて。


　俺が何とかしなきゃ。近くにあった空のボトルを手に構えるが、怖い！めっちゃ怖い！どうすればいい！？蛍様を俺の背中から離れないようにしながら、なんとか避けた。


　振り下ろされた包丁は高級なソファーを切り裂き、中からフワフワのわたが飛び出す。


「もぉ、避けないでよ！アンタ達が生きていたらハスキーはずぅっと、永遠に苦しむの。あたしが殺して、ハスキーに喜んでもらうのよっ！」