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第十八話 大好きだから②
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「めちゃくちゃ美味しかったです。ご馳走様でした」
「よかったぁ。洗い物しちゃうから、お風呂入ってきちゃったら?疲れてるでしょ」
一緒に食器を洗おうと立ち上がるも「今日は手伝っちゃだめ」と言われ、クッションに座らされた。まさに上げ膳据え膳。
ただ、確かに疲れてはいるけれど、別に睡眠時間が確保出来ていなかったわけではないし、昨日の夜、ホテルに帰ってからはぐっすり眠れたから、気遣われるほどではない。どうしたものかと考えながら、美緒さんがシンクで食器を濯ぎ始めたのを、肘をついて眺める。
——この人、俺の奥さんになるんだよな。
付き合い始めてからここまで、無理をしたり進展を急いだりしたつもりはないけれど、かなりのスピード感で進んできたような気がする。
「…ねえ、美緒さん」
「んー?」
「俺のこと、‘矢野くん’って呼べなくなるってことでいいんですよね?」
「……うん」
小さく頷いて、えへへと笑う顔があまりにも幸せそうで、これは夢じゃないんだなと思う。
立ち上がって、食器を洗っている背後に立ち、そっと腰に手を回す。すると、洗い物を続けながら、美緒さんは自分の足の爪先で俺の足の甲をすりすりとなぞる。器用だ。耳の後ろにキスをして、髪の匂いを鼻いっぱいに吸い込む。
「どうしたの?」
「…幸せを嚙み締めてるんです」
すると、美緒さんは「あっずるい」と少し洗い物の水の勢いを強める。あっという間に食器を洗い終え、くるりと体を回転させた。ぎゅっと飛びつくように抱きつかれる。
「私にもちゃんと噛み締めさせて」
ぐりぐりと胸に額を押し付けた後、ぱっと顔を上げ、照れたように微笑むから、その頤に手をかけて、そっと唇を重ねた。啄むようなキスを何度も繰り返しながら耳朶に触れると、美緒さんはとろんとした表情でこちらを見上げてくる。
風呂に入るよりも先にベッドに連れ込んでしまいたいという気持ちが首をもたげてくるけれど、きっと今寝室に行ったら、そのまま明日の朝まで出てこられないだろう。
それなら。
「…ねぇ、今日一緒に入りません?風呂」
「へ?…お、お風呂は一人で入った方が落ち着くんじゃない?」
実は今まで何度か誘ってきたけど応じてくれなかったことの中に、一緒に風呂に入るというのがあった。
美緒さん曰く「それはさすがに恥ずかし過ぎる」らしい。でも、夫婦になるのだ。しかも今回、俺は「めちゃくちゃ疲れている」という設定になっている。多少の我儘は通りそうな気がする。
「あーなんか疲れちゃって風呂入ってる途中で寝ちゃうかもしれないなあ。美緒さんと一緒に入れたら疲れがとれそうなんですけど……だめ?」
「……そんな言い方されたら……んむっ…」
最後まで聞かずに、ちょっと乱暴に唇を重ねて口内に舌を入れる。歯列をなぞるように深いキスを続けていると、そのうちに控えめにではあったがそれに応えるように舌が絡んだ。了承と受け取ってよさそうだ。
俺は美緒さんの膝の裏に手を入れ、横抱きにして持ち上げる。「ちゃんとつかまっててください」と耳元で囁くと、その愛しい人は小さく頷いた。
「よかったぁ。洗い物しちゃうから、お風呂入ってきちゃったら?疲れてるでしょ」
一緒に食器を洗おうと立ち上がるも「今日は手伝っちゃだめ」と言われ、クッションに座らされた。まさに上げ膳据え膳。
ただ、確かに疲れてはいるけれど、別に睡眠時間が確保出来ていなかったわけではないし、昨日の夜、ホテルに帰ってからはぐっすり眠れたから、気遣われるほどではない。どうしたものかと考えながら、美緒さんがシンクで食器を濯ぎ始めたのを、肘をついて眺める。
——この人、俺の奥さんになるんだよな。
付き合い始めてからここまで、無理をしたり進展を急いだりしたつもりはないけれど、かなりのスピード感で進んできたような気がする。
「…ねえ、美緒さん」
「んー?」
「俺のこと、‘矢野くん’って呼べなくなるってことでいいんですよね?」
「……うん」
小さく頷いて、えへへと笑う顔があまりにも幸せそうで、これは夢じゃないんだなと思う。
立ち上がって、食器を洗っている背後に立ち、そっと腰に手を回す。すると、洗い物を続けながら、美緒さんは自分の足の爪先で俺の足の甲をすりすりとなぞる。器用だ。耳の後ろにキスをして、髪の匂いを鼻いっぱいに吸い込む。
「どうしたの?」
「…幸せを嚙み締めてるんです」
すると、美緒さんは「あっずるい」と少し洗い物の水の勢いを強める。あっという間に食器を洗い終え、くるりと体を回転させた。ぎゅっと飛びつくように抱きつかれる。
「私にもちゃんと噛み締めさせて」
ぐりぐりと胸に額を押し付けた後、ぱっと顔を上げ、照れたように微笑むから、その頤に手をかけて、そっと唇を重ねた。啄むようなキスを何度も繰り返しながら耳朶に触れると、美緒さんはとろんとした表情でこちらを見上げてくる。
風呂に入るよりも先にベッドに連れ込んでしまいたいという気持ちが首をもたげてくるけれど、きっと今寝室に行ったら、そのまま明日の朝まで出てこられないだろう。
それなら。
「…ねぇ、今日一緒に入りません?風呂」
「へ?…お、お風呂は一人で入った方が落ち着くんじゃない?」
実は今まで何度か誘ってきたけど応じてくれなかったことの中に、一緒に風呂に入るというのがあった。
美緒さん曰く「それはさすがに恥ずかし過ぎる」らしい。でも、夫婦になるのだ。しかも今回、俺は「めちゃくちゃ疲れている」という設定になっている。多少の我儘は通りそうな気がする。
「あーなんか疲れちゃって風呂入ってる途中で寝ちゃうかもしれないなあ。美緒さんと一緒に入れたら疲れがとれそうなんですけど……だめ?」
「……そんな言い方されたら……んむっ…」
最後まで聞かずに、ちょっと乱暴に唇を重ねて口内に舌を入れる。歯列をなぞるように深いキスを続けていると、そのうちに控えめにではあったがそれに応えるように舌が絡んだ。了承と受け取ってよさそうだ。
俺は美緒さんの膝の裏に手を入れ、横抱きにして持ち上げる。「ちゃんとつかまっててください」と耳元で囁くと、その愛しい人は小さく頷いた。
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