あの人と。

Haru.

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After Story

閑話 if 幸仁が本当のショタになったら(3)side.ダグラス

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 ユキが小さくなった。いや、今までも小さかったが、それとは比べ物にならないほどに小さくなった。こちらの世界だと2歳くらいの大きさだが……おそらくユキの元の世界ではもう少し大きいのだろうな。拗ねてしまいそうだから言わないでおこう。

 小さくなったユキはたまらなく可愛い。小さい足でポテポテと歩く姿も、小さい手で一生懸命にグラスを持って飲み物を飲む姿も可愛い。何をしてもたまらなく可愛く、何度天を仰いだことだろうか。

 ユキがこの姿になってから既に朝と昼の2回、食事を食べさせたが、口も手も小さくなって食事を取りにくくなったユキに手ずから食べさせるのは楽しい。雛に餌付けをしているような気持ちになるんだ。小さい口で一生懸命に咀嚼している姿はいつまでも見守りたくなる程に可愛い。

 ユキもユキなりに今の姿を楽しんでいるようで、幼い身体につられた精神に悩むことはないようだ。本当の自分との乖離に悩みそうなものだが、そこは神の力が働いているのかもしれないな。

「ユキ様、こちらをどうぞ」

「ありがと!」

 今もリディアにウサギのぬいぐるみを渡されて嬉しそうに受け取っている。大人の姿なら微妙そうな顔をしていただろうな。

「だぐー、みてみて、だぐとぼく!」

 ユキはダラスとウサギのぬいぐるみを指差して嬉しそうに笑っている。確かに大きなクマと小さなウサギは俺とユキみたいだな。ウサギがクマに食われそうだが、まぁ、食っているというか喰っているしな。間違ってない。

「ユキはウサギか。なら寂しがらせたら駄目だな」

「そうだよ、うさぎさんはさびしいとしんじゃうんだよ」

 うさぎ……可愛すぎやしないか? たまらずぎゅうぎゅうとしがみついてくるユキを抱きしめると嬉しそうに笑っている。ああ、この笑顔を守りたい。

「俺がずっと一緒にいるからな」

「うん!」

 ユキは一頻り抱きついたら満足したのか、ウサギとダラスで遊び始めた。ダラスを操ってウサギを抱き上げてそのまま抱きしめさせ、ダラスの手を操ってウサギの頭を撫でさせている。遊び方も可愛すぎるぞ、ユキ。

 ダラスとウサギを楽しそうに操っていたユキだが、今は昼食後で満腹。そして部屋はちょうどいい感じに暖かい。次第に船を漕ぎ出したユキをそっとダラスの上にうつ伏せで寝かせてみると……

「んぅ……いっしょ……ねん、ね…………し……」

 ねんね……可愛すぎるだろう、ユキ。叫び出さなかった俺を誰か褒めてくれ。

「……毎秒可愛いを更新してないか?」

「相変わらずお花畑みたいな頭をしていますね……と、いつもの私でしたら言っていたでしょうが、今日は同意です。特に精神も子供の姿につられた瞬間が可愛いですね」

「わかるぞ。ユキはいつも可愛いが、子供の姿のユキはまた違った可愛さだな」

「ええ、本当に」

 すっかり寝てしまったユキの前髪を避けてやり、風邪をひかないようにと柔らかいブランケットを掛ける。起きたらまた軽くおやつを食べさせてから陛下方にこのユキを見せに行くか。ユキのこの姿を見せなかったら後であれこれと文句を言われそうだからな。



 ……と思っていたんだが、ユキの家族が揃ってやってきたことで陛下方へユキを見せるのは後回しになった。

「「可愛すぎだろ……ゆきこっちおいで」」

「あらあら、この姿は4~5歳くらいかしらね? 可愛いわねぇ」

「……なんで小さくなったことに誰も突っ込まないんだ? 父さんがおかしいのか? いやまぁ確かに幸仁は可愛いが」

 昼寝から起きてココアと共にクッキーを食べていたユキは、現れた家族に嬉しそうに駆け寄って兄達へ抱っこをせがんだ。スイもソウも溶けた顔でユキに触れている。あの姿のユキに抱っこをせがまれたらああなるのも頷けるぞ。

 ユキの父のマサヒトさんだけが俺の元へやってきてユキのことを尋ねてきた。普通そうだよな、成人しているはずの息子がいきなり幼児になっていたら疑問を持つのが当たり前だと思うが、双子もミカコさんも気にせずユキを可愛がっている。

「ダグラス君、幸仁はなぜあんな姿に?」

「今朝起きたらこうなってました。そうと断言されたわけではありませんが、恐らく神の悪戯でしょう」

「……なるほど。それならまぁそのうち戻るのかな。いやそれにしてもうちの息子は可愛いな。幸仁、パパのところにもおいで」

「とーさん」

「パパって呼んでくれないのか? このくらいの頃はまだパパ呼びだっただろう?」

「……ぼくなかみおとなだもん」

 ユキなら大人の姿でもパパ呼びをしていても俺は全然気にしないぞ。むしろ可愛いと思う。厳つい騎士が父親をパパと呼んでいたら個人の自由とはいえ少し引くが、可愛いユキならなんの問題もない。寧ろパパ呼びをしているユキを見てみたいくらいだ。

「ふふ、パパとママから父さんと母さんに変わったのは小学校に上がってからだったわよね。お母さん久しぶりにゆきちゃんにママって呼ばれたいわ」

「……ママ、パパ」

 ぽそりと呟いたユキは恥ずかしいのかマサヒトさんの肩に顔を埋めた。耳が真っ赤だから顔も真っ赤なことが丸わかりだ。やはりユキならパパとママ呼びをしていてもなんの違和感もない。ただただ可愛いだけだ。あまりの可愛さにマサヒトさんとミカコさんもデレッと溶けた顔をしているぞ。

「もうもうもう、可愛いわねぇ! なんでもお願いを聞きたくなる可愛さだわ!」

「……おねがい、きいてくれる?」

「あら、何をして欲しいの? なんでも言ってみてちょうだい」

「あのね、おかあさんの作ったおかしたべたい……」

 さっきおやつを食べさせたんだが……まぁいいか。ミカコさん達が来たことでクッキーも2枚目の途中で食べるのをやめたし夕食まではまだまだ時間もあるしな。

「まぁ! もちろんいいわよ! じゃあ一旦向こうに戻って作ってこようかしら」

「ミカコ様、キッチンならそこの扉の向こうのをお使いください。器具も材料も揃えておりますので」

「あら、ならありがたく使わせてもらうわね。ゆきちゃん、お手伝いしてくれる?」

「うん!」

 元気よく頷いたユキがキッチンへ行くのをリディアが引き止めて小さなエプロンをつける。胸元にうさぎの刺繍がしてあってユキによく似合っている。

「さてと、バター、牛乳と卵、砂糖に小麦粉にベーキングパウダーに……チョコチップもあるかしら? カップケーキの型も欲しいわ」

「ございますよ。ご用意いたします」

「かっぷけーき!」

「チョコチップのカップケーキ好きでしょう? ゆきちゃん、魔法であっためてバターを溶かせるかしら?」

「できるよ!」

 ユキのあの小さな手で調理器具を扱えるのか気になっていたが、魔法を使う前提でなら大丈夫そうだな。俺は料理のことはわからないしミカコさんとリディアに任せてのんびりと待つことにしよう。

 マサヒトさん達と話しつつ暫く待っていると顔に小麦粉をつけたユキがトテトテと戻ってきた。

「出来たのか?」

「いまね、やいてるの」

「そうか。粉がついてるぞ」

「ふふっ、くすぐったぁい!」

「よし、取れたぞ。ほら、マサヒトさん達がユキと遊びたそうにしてるぞ」

「んっ、あそぶ! おとうさーん!」

 ユキは嬉しそうにマサヒトさんの元へ駆けて行った。マサヒトさんは嬉しそうユキを抱き上げて頬を擦り合わせている。

「幸仁は何で遊びたいんだ?」

「かくれんぼ!」

「この部屋の中でか?」

「ぼくのおへやと、だぐのおへやぜんぶつかうの」

 なるほど、部屋から出ないなら外では禁止したかくれんぼも問題ないな。それにユキの部屋から俺の部屋まで全て使うなら広さも十分だ。

「なら扉を全て開けてこよう。扉の音で居場所がわかってしまうかもしれないからな」

「ありがと!」

 手洗いを除いて全ての扉を開け、ユキの元へ戻るとまずはユキが鬼をすることになったらしい。どうやら俺とリディアも参加らしいが……体の大きさ的に俺が1番不利じゃないか? まぁいい、ユキを楽しませるためなら俺も全力で隠れようじゃないか。
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