あの人と。

Haru.

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After Story

対等な関係

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すみません! 遅れました!
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「サダン君はいつから兵舎に入るの?」

 合格者の正式な騎士団への入団は1月1日だけど、入団試験に合格したらいつ兵舎に入ってもいいことになっている。それまで鍛えるもよし、実家に戻って最後に家族や親戚に挨拶してきてもよしで、とにかく問題を起こさなければ大丈夫なのです。まぁ兵舎に入ったら規則とかは守らなくちゃなんだけどね。それでも仕事が割り振られるわけではないから、非番の先輩騎士に頼んで訓練してもらうのもオッケーなのです。

「親戚連中にはもう挨拶してきたからこのまま兵舎に入るぞ」

「そうなの?」

「おう。だから雑用でもやらせてもらいながら空いてる先輩に鍛えてもらうことにする」

 グッと拳を握るサダン君はやっぱり留学してた時よりも逞しくなってます。思わずふんっと力を込めて力瘤を作ってみたけど……うん、嘘ついた。瘤にならなかったよ! 真っ平ら! ……鍛えたほうがいいのかなぁ。でもそのままでいいってダグは言ってくれてるし……うぅ、そもそも運動神経皆無な僕に鍛えるなんて無謀な話だよね……筋肉は諦めます!

「俺も空いている時なら見てやれるぞ」

「あ、じゃあ今度ダグに魔法の手合わせしてもらう時にどうかな?」

「ああ、いいな」

 魔法だけって言う条件付きの試合なら僕もできるし……っていうか僕もやりたいです! 僕とダグ、ダグとサダン君、サダン君と僕っていう組み合わせで出来るよね。楽しみです!

「え……い、いいんですか!?」

「ああ。やる気のある人間を鍛えるのはこっちも楽しいからな。かかりっきりというわけにはいかないが、見れる時は見てやろう」

「あ、ありがとうございます!」

 本当に嬉しそうなサダン君の笑みは、僕が留学していた頃と何も変わらなくてほっこりしました。

「サダン君が僕の護衛騎士になるのはいつかな~」

「ユキの護衛騎士って……それかなりのエリートだろ! ようやく受かった俺にはまだ早すぎだろ……」

、ってことはいつかなってくれるの?」

 ニマニマ~っと笑ってサダン君を見てみると、グッと何か詰まったような顔をしたサダン君は物凄く言い辛いそうにぼそり。

「そりゃ、俺だって……騎士になったからには……」

「ふふ、騎士としての誇りを忘れないことが一番大事だよ」

「騎士としての誇り、か……そうだな、気を付けるよ」

「うん! 頑張ってね」

 騎士としての誇りを忘れて、騎士って言う立場を利用して色々と問題起こしたり、そうでなくともだらけてしまう人とかは絶対上に行けないもん。誇りを忘れずに、かつ上へ上へとひたすら頑張って向上していく人は上に行きやすいのです。まぁ上に行って満足して怠けたら下されるけどね。

 僕はきっとサダン君ならどんどん上がっていくんじゃないかな、って思います。神子の予感ですよ!



 その後もお互い会っていなかった頃は何をしていたのかって言う話をのんびりとしていると、ガチャリと扉が開いてルリが戻ってきました。ちょうどよかった、サダン君に紹介しよっと。

「ルリ、お帰り。こっちへおいで」

「ただいま、母様に父様。……この人が母様の大事なお友達のサダン君?」

「そうだよ。騎士団の入団試験合格したんだよ!」

 のっしのっしとやってきてグリグリと擦り付いて甘えてくるルリをわっしゃわっしゃと撫でる。うん、相変わらずふわふわで温かい! 抱きしめちゃおう! ルリが大きすぎて抱きしめると言うより抱きつくどころかしがみついてるみたいだけどね!

「そうなの? おめでとうございます」

「あ、ありがとうございます。初めまして、サダンです。神獣様、ですよね……?」

「僕はルリだよ。神獣って呼ばないで欲しいな」

 ルリも僕と同じで敬われるのは好きじゃないのです。だからこそちゃんとルリとして扱ってくれる僕の周りの人たちは好きみたいだけど、神獣として扱ってくる貴族達は好きじゃないみたい。神官さんとか仕事柄そうしないとダメな人はまた別なんだけどね。

「えっと……じゃあルリ、でいいの、か……?」

「うん、いいよ。よろしくね」

「ああ、よろしく……」

 ルリがまるで握手、とばかりに差し出した右前脚をサダン君が恐る恐る握るとルリは軽く上下に振ってからスッと脚を引いて僕の背もたれになるように寝転ぶとくありと欠伸を一つ。きっとルリはリゼンブルから駆けてきて疲れているのだろうからと、おやすみの意味を込めて頭を撫でてあげるとすぐに眠ったようです。

「……すげぇフワフワだった……」

「ふふ、でしょ? 僕今凄くあったかいよ」

「うわ、羨ましい」

 この場所は譲らないよ! ルリが自ら来たんだし僕は動きません!

「ルリ一度寝たらなかなか起きないから撫でてみる? まあ起きてても撫でられるの嫌がらない子だけど」

「いいのか?」

「うん!」

 どうぞうちの子の立派な毛並みを堪能あれ! と笑えばサダン君はルリの背中へ手を伸ばし、もふりと手が包み込まれる感触にでろっと顔が溶けてそのまま手を埋めてみたりするすると撫でて毛並みを楽しんだり……

 しばらくそうして堪能したサダン君が手を離した時にはサダン君の目はキラッキラになっていました。アニマルセラピーだね! ルリの毛並みは最高だから癒されるのも当然です!

「起きてる時に聞いたら肉球も触らせてくれたりするよ。特に疲れた時とか」

「マジかよ、今度聞いてみよ」

 僕もよく癒してもらうからサダン君も是非! きっとルリに病みつきになっていくこと間違いなしだよ。

「……というか俺今一般的に考えたらめちゃくちゃ価値のある光景を目の当たりにしてる気がする」

「ん?」

 ああ、神子ルリ神獣? たしかにそうかもしれないね。お城にいる人ならまだしも、それ以外なら僕とルリを見ることなんて少ないもん。

「なんか2人ともいい意味で神子とか神獣らしくないよな。まあユキのそういうところが好きなんだけど」

「ふふ、ありがとう。僕堅苦しいの嫌いなんだよね」

「そう見える。まあ俺もユキの立場だったなら嫌になってただろうなぁ」

 サダン君も堅苦しいの嫌いそうだもんね。やっぱりゆったりまったりできるのが一番だよ。そう思うとこうやって好きにさせてくれる今の環境ってありがたいなあ。神子としてあっちへこっちへ引っ張りだこって言う状態じゃなくてよかったです。

 敬われることが嬉しいって人もいるだろうけど、僕にはそんな感覚がいまいちわかりません。だってみんなと対等な関係でまったりできる方が落ちつかない? 敬われるってことはそれだけ上に立つ人間としての振る舞いをしなくちゃダメってことでもあるし、僕はそんな疲れるのは嫌です。まあ敬われることが好きな人は僕の感覚がわからないんだろうしお互い様だね。

「なあ、敬われるのが嫌なら舞踏会とかはどうやって乗り切ってるんだ?」

「ん? ダグに癒されながら、かな? あと最近の舞踏会だと僕が親しくない人を怖がるからってことで僕への挨拶は無しになってるからまだ大丈夫なの」

「それってあの時の……俺が外に連れ出さなきゃ……」

「何言ってるのサダン君! 僕、サダン君にお出かけに誘われてすっごく嬉しかったんだよ。それにすっごく楽しかったもん。悪いのは悪いことを考えた犯人であって、サダン君じゃないよ。……サダン君は楽しくなかった?」

 サダンくんだって一緒に怖い思いしたんだよ。なんでサダン君が悪いってなるのさ。サダン君を悪く言う人がいたら僕が許さないよ!

「俺も、楽しかった……」

「よかった! 僕外へ行くのは難しいけど、こうやってたくさん遊ぼうね!」

「ああ、そうだな」

 ようやくサダン君の表情が柔らかくなって一安心です。

「あ、でもラギアス優先でいいからね?」

 場をもっと和らげたくてニマニマとそう言ってみるとボッと一気に真っ赤になったサダン君。

「なっ……! べ、別にそんな……」

「因みに明日はラギアスお休みです!」

 ダグもお休みだけど、ダグがずっとそばにいるならってことで専属である2人が休みでもいいことになったのです。

「は!? いや、ユキわざと休みにしたな!?」

「えー? なんのことかなあ? 今日の夜会う約束してるんだよね? !」

「~~~~っっ!!」

 湯気がでそうなほど真っ赤になったサダン君がボフっとクッションにうずくまったのを見て僕とダグはニヤニヤ。早く2人が付き合いだしたって報告が聞きたいです!
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