あの人と。

Haru.

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After Story

ルリと

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 翌日、僕が起きた頃にルリは戻ってきた。器用に自分でドアを開けて入ってきたルリを、僕とダグは手招きして抱きしめる。

「お帰り、ルリ」

「昨日はありがとうな」

「なんのこと? 僕、遊んできただけだよ」

 そう言ったルリはプイッとそっぽを向いてしまったけれど、尻尾は嬉しそうにゆらゆら揺れている。やっぱりいつまでも可愛い子です。

「来年はルリも一緒にお祝いしようね。寂しかったんだよ」

「……僕、邪魔じゃない……?」

「邪魔なわけないよ。ルリは僕たちの大事な子だもん。ね、ダグ」

「ああ、勿論だ。親離れには早すぎるぞ」

「……そっか」

 ちょっと不安そうだったルリは安心したように雰囲気が柔らかくなって、そっと僕とダグにもたれかかって頭を擦り付けてきた。甘えるような仕草がものすごく可愛いです。

 ゴロゴロ喉を鳴らすルリを一頻りうりうりと撫でて満足したら、みんなでご飯を食べることに。ダグは昨日、今日とお休みを取っていたから今日もお仕事はなし。先に起きていたダグは僕が起きるまでご飯を食べないで待っててくれたみたいで、3人で揃って食べられます!

 しかも今日はみんなで床に座って食べることになりました! ラグの上にトレーを並べて、そこにお皿をズラッと並べて好きなものを好きなだけ食べる形式です。なんだかピクニックみたいでワクワクします。

「ルリ、ルリの好きな果物も沢山あるからね!」

「わ、わ、綺麗なお花! これ、ルリの!?」

 久しぶりに“ルリ”呼びいただきました! ルリ、最近ではすっかり大人っぽくなってきて自分のことは僕って呼ぶようになっちゃったから生まれたばかりの頃のルリ呼びがほとんど聞けなくなっちゃったのです。可愛かったのに……ルリがルリ呼びに戻るのは興奮した時です!

 頑張って飾り切りした甲斐がありました……! 飾り切りはダグの方が上手なんだけど、これはダグ用のご飯とケーキを作った時に一緒に作ったから僕が切ったものです。果物でお花のブーケみたいにしてみたのです。いい反応が見られてよかった……

「全部ルリのだよ。沢山食べてね」

「やったぁ! 母様ありがと!」

 うちの子が眩しい……また作ってあげよ……

 嬉しそうに果物を食べるルリを眺めながら僕達も朝ごはんを食べる。ダグも優しい目でルリを見てます。あ、早く食べ終わったダグがおもむろにリンゴを取り出して……わぁ、一瞬で色んな動物ができたよ。それをそっとルリに差し出せば……

「父様すごい! これもルリの!?」

「そうだぞ。食べていい」

「ありがとう父様!」

 あ、うさぎが食べられた。今度は鳥が……! いやリンゴなんだけども。なんか言葉にしたら面白いなぁ……

 ルリが食べ終わったのと同時に僕も食べ終わり、そこからはのんびりまったりです。

「アルバスさんと何かお話しした?」

「母様と父様のお話だよ。父様も母様もすごく仲が良くて、目も当てられないくらい? の甘さだって。団長、ニヤニヤしてた」

 ま、間違ってはないけども……! アルバスさん……! 

 そしてその次の瞬間、さらなる爆弾が投下された。

「あとね、あの体格差は凄いって言ってたよ。夫婦になるのは体格差があると大変なの?」

 アルバスさぁあああああん!! うちの子になんてことを……! それって絶対夜のあれこれのことを指してますよね……! ニヤニヤしながらそんなことを言うアルバスさんは簡単に想像出来ます……

「た、大変なこともある、かもね」

「どうして?」

「ど、どうしてって……」

 本当に恨みますよアルバスさん……! 自分が子供に同じようなこと聞かれたらって思わないのか……! ……いや、アルバスさんなら面白がって答えそうだね……そしてリディアに怒られるんだね……縫い針片手にその口を縫って差し上げましょうか? くらい言いそう。にっこり笑顔で。

 そんなことを現実逃避のごとく考えながら僕がたいそうキョドッていると横からにゅっとダグの助け舟が。

「キスがしづらいからな。ほら、これだけ身長差があるとユキも首を痛めてしまうかもしれないだろう?」

「そっかぁ、父様と母様、しょっちゅうキスしてるもんね。大変なんだぁ……」

 ……ダグラスさん、誤魔化してくれてありがたいけどこれはこれで恥ずかしいのですが……!!  ……しょっちゅうキスしてるとこをなぜルリが知っているのかとかそういう突っ込みは無しの方向で……ダグは見られていようとも御構い無しなのです。

「あ、母様が腰が痛いって言ってる日もキスしすぎて痛くなっちゃったの?」

「え!? あ、うん、そうだね!」

 そ、それはまた違うけど本当のことなんて言えません! ダグも笑ってないでなにかフォローしてよ……!

「大変なんだね。父様、母様を無理させちゃダメだよ」

「ああ、そうだな」

 くつくつと笑うダグは随分と楽しそうです。僕はもはや瀕死だと言うのに……そんな僕をルリはきょとりとした顔で見上げてきます。

「母様、疲れてるの? 僕の肉球触る?」

「……触る」

 ルリが差し出してくれた随分と大きくなった肉球をむにむにむに……あぁ、癒されます……成長したからか少し硬くなった肉球はその弾力もまたいい感じで……ずっと触ってられます。といってもずっと触っているわけにはいかないのでルリが嫌がらないくらいでやめました。

 そのままのんびりまったりして、気温が高い時間帯は涼しい部屋でゆっくり3人でお昼寝して、夕方の涼しい時間に3人仲良く庭でお散歩しました。夜も3人で眠りましたよ! 

 ……普通川の字なら子供が真ん中だと思うんだけど、ルリが母様がベッドから落ちたら大変と言いだし、その上にルリには暑くて普段僕達が被ってる布団は被れないからってこともあってなぜか僕が真ん中で眠ることに。……まぁルリが嬉しそうだったからいいのか、な? うん、ご満悦そうなルリを見れたからそれでいいのです。


 次の日、レイのお手伝いに向かえば途中でヴェルナーさんがやってきて、ロイが僕を呼んでいると伝えられた。レイの許しも得て、ヴェルナーさんについてロイの執務室に行くとそこにはヴォイド爺もいた。何かあったのだろうか。

「ロイ、何かあったの?」

「ルリのお披露目がきまった」

「あー……わかった。ルリには僕から伝えておくよ」

「いや、私から伝えるが……ユキを呼んだのはユキにも並んで欲しいからなんだ。神獣ルリ神子ユキの庇護下にあるとアピールして欲しい」

 成る程……? 僕はどうやら神様に特別愛されているって伝わっているらしいから、ルリが僕の庇護下にあるとされればさらにその後ろにいる神様が後ろ楯になる、みたいな感じかな? ルリに手を出せば下手したら神様も出てくるぞっていう感じ?

 あとは……あくまでもルリは僕の元にいるだけで、ヴィルヘルムが抱え込んでいるわけではない、という他国へのアピールかな。神獣ほどの力を持つものを一国が抱え込むのは国交にも影響がでるらしいからね。諍いのもとは潰しておくに限ります。

「わかった、いいよ」

「すまんな」

「ううん。ほかにやることはある?」

「それなんじゃがユキ、何か見世物になるような魔法を放って欲しいんじゃ。出来ればルリと2人でのぉ」

「ん──……わかった、何か考えてみるね。場所は僕のお披露目と同じ場所?」

「それを予定している」

 ならあそこくらいのスペースがあるっていう認識でとりあえずはいいかな。あのスペースを使って、さらに見に来た人達を楽しませるような、驚かせるような何か、かあ……かといって危険なものはもってのほか。大変そうだけどやりがいはありそうだね。

 日程等はこれから計画を練るらしく、今日のところは解散してまた後日ルリも含めて集まることになりました。その時にある程度何をするか教えて欲しいとのことなので、頑張って考えます。
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