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After Story
似た思い
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昨日はダグとまったりいちゃいちゃしながら早めに寝て、体調も万全な今日はうんと楽しむ日です。ダグとリディアからはしゃぎ過ぎないなら自分で動き回っていいって許可ももらったし!!
「ねぇダグ、お屋敷の中見てみたい!」
「ああ、いいぞ」
やったぁ! 手を差し出してくれたダグの手を握り、さらに腕にひっついていざ出発です!
「一階から行くか」
「うん!」
ダグの部屋は二階だから、一旦降ります。一階のエントランスに続く階段は緩くカーブしていて、木製の手摺とバーガンディのカーペットがマッチしていて落ち着いた雰囲気です。
「ふかふかでこけても痛くなさそう」
「危ないから転ばないでくれ。まぁ俺がいるから大丈夫だとは思うが」
「ダグにしがみついてるから大丈夫!」
いくらふかふかでも転げ落ちたら絶対痛いし怪我するもん。しっかり逞しいダグの腕にしがみついておきます。ダグは僕がこけてもビクともしないし安全です。
「一階は何があるの?」
「一階は応接室、厨房、使用人の部屋、それから一度外に出ることになるが温室もあるな。書庫なんかもあるぞ」
「僕厨房行きたい!」
「はは、つまみ食いでもするのか?」
「しないもん!」
僕そこまで食い意地張ってないもん! どんな感じなのかみたいだけだもん!
むぅ、と頬を膨らませるとくつくつと笑いながらチュッとキスをされて頭を撫でられました。キスされた瞬間のダグの表情がかっこよ過ぎて一気に上機嫌になりました。ルンルンと歩いてダグに案内されるままに着いていきます。
楽しそうな僕とそんな僕を優しい目で見つめるダグの様子を使用人さん達が微笑ましげに見ていたなんて僕は気づきませんでした。
僕の希望通りダグは厨房へと連れてきてくれて、大きな扉からひょこりと中の様子を覗いてみると広々とした厨房で5人の料理人さんが働いていました。お昼に向けての下拵えの最中なのかみんなで野菜の皮を剥いたり切ったりしてます。お義父さん達だけじゃなくて使用人さん達の分も用意しなくちゃだからかかなりの量です。もしかして私兵さんの分も用意してるのかな?
「残念だったな、今つまみ食いできるものはなさそうだぞ」
「しないもん! ダグのばかばかばか」
くつくつ笑うダグをべしべしと叩いてもダグは全くビクともせず、むしろもっと楽しそうに笑う始末。悔しい。
「えっ、神子様!?」
あ、邪魔しないようにってそっと見てたのに大きい声出しちゃった。料理人さん達の手を止めちゃった……
「ご、ごめんなさい、お邪魔するつもりはなかったのです……」
若干身体を縮こめつつ謝ればばびゅんっと飛ぶようにこっちへ向かってきた料理人さん達にあっという間に囲まれました。賑やかな人達みたいです。あと騎士さんみたいに筋肉が凄いから圧がすごいよ。
「いえいえ邪魔などと!! 何か御用でしょうか?」
「ちょっとお屋敷の中を見せてもらっているのです。僕も料理をするのが好きなので厨房はどんな感じなのかなぁ、と」
「そうでしたか! どうぞご自由にご覧になってください! あ、何かお出ししましょうか? なんでもお作りしますよ」
そう言った料理人さん達は揃って自慢の上腕二頭筋やら胸筋やらを強調するようなポーズをとりまして。一体何を料理するのだろうかと少し困惑してしまった。
「い、いえ、大丈夫です。また来ます」
「そうですか……またいらしてくださいね」
「はい!」
しゅん、としたマッチョな料理人さん達はちょっと可愛かったけれど僕がずっといたら調子が変わらない気がしたから退散します。お仕事の邪魔をするわけにもいかないしね。
料理人さん達へ別れを告げたら次は書庫へ。一階の奥まったところにあるそこはもはや図書館でした。
「ほぇ……」
天井まで続く本棚にビッシリと本が並んでいて、目当ての本を探すのには一苦労しそうです。そしてこれを全て読むにはどれだけの時間がかかるのだろう。僕の部屋の何倍も多いですよ。
「好きに読んでいいぞ」
「う、ん……」
好きに、と言われてもどこから手をつけたらいいかわからない。どこに何があるかもわからないし。
今はじっくり本を読むつもりはないので大体どんな感じかを見たら次に行きます。ここでの滞在が長くなるようならダグのお勧めを読もうと思います。
「こっちは使用人の部屋が固まっている」
「これ全部?」
ダグが示した方には結構な数の扉があります。これ全部なら結構だよ。
「基本的にはな。街から離れているからこうして部屋を与えるんだ。離れに部屋を持っている使用人もいるが」
「凄いねぇ……」
タウンハウスにも住み込みで管理する使用人がいるから、リゼンブルがかなりの数の使用人を抱えていることがわかる。リゼンブルって本当にお金持ちなんだなぁ……ってことはダグは騎士にならなくてもお義兄さんの手伝いでも全然生活できたのでは? と思ってしまった。そういえばダグが騎士になろうと思った理由は聞いたことがない気がする。
「ねぇダグ、どうしてダグは騎士になろうと思ったの?」
「あぁ……休憩がてら温室で話そう」
「長くなるの?」
「少しだけな」
「ん、わかった」
それならとまた歩き出したダグにひっついて歩き、お屋敷を裏口から出て、そのまま続く石畳の道を歩けばすぐに温室へ着いた。中央にはテーブルセットがあってお茶ができるようになっています。僕とダグはそこへ座って話すことに。
「俺が騎士になった理由だったな。一応このリゼンブルの一員ではあるから、全て断っていたとはいえ……見合いの話が絶えなかったんだ」
少し言いづらそうにしたダグになるほど、と納得した。前に僕はお見合いって言葉にすごく反応しちゃったからね。また僕が不安にならないか気にしてくれたのだろう。全く気にならないわけじゃないけど断ったならいいです。
「貴族連中は俺のリゼンブルという肩書きを欲しているだけだった。まだ子供だった俺は俺じゃなくてリゼンブルとしてしか俺を見ない貴族連中に辟易してな」
「あ……それって……」
「そうだ、今のユキと似た思いだろうな。ユキは神子としてしか見られないことが嫌なように、俺もリゼンブルとしてしか見られないことが嫌だった。ユキがあの言葉を発表した時はやはり俺たちは似ていると思った」
そう言って苦笑しながら僕の頬を撫でたダグに、僕は一度口を開きかけてすぐ閉じた。何を言おうとしていたのか、何が言いたかったのか自分でもわからなかった。
「俺は俺の力だけを評価してくれるところへ行きたかったんだ。騎士なら貴族としての権力は関係ない。貴族からの干渉を受けることもない。まだ子供だった俺にとっては絶好の逃げ場だったんだ」
「……ダグは今、僕と一緒にいて、貴族達にそういう目で見られるの、嫌じゃない……?」
舞踏会で会う貴族はもちろん、お城でたまにすれ違う貴族達はあからさまに取り入ろうとしてくる人達ばかりだ。すきあらばといったギラギラと欲にまみれた視線を向けてくる貴族は少なくない。ダグが家を出るほどに嫌だったそんな視線に晒してしまっているとしたら……
「そんな顔をさせてしまうと思ったからあまり言いたくなかったんだがな……おいで、ユキ」
「ん……ごめんね、ダグ」
膝に乗せて抱きしめてくれたダグに擦り寄れば優しく撫でてくれた。
「謝る必要はないぞ、ユキ。俺は今ユキと共に居ることが何よりも幸せなのだからな。俺も大人になって連中のあしらい方も学んだ。今ではむしろ連中に俺とユキの仲を見せ付けることが楽しいくらいだ。心配しなくてもユキが思うような嫌な思いはしていないさ」
「……ほんと?」
「ああ、本当だ」
優しく微笑むダグは嘘をついているようには見えない。ということは本心なのだろう。ダグに嫌な思いをさせてなくてよかった……
「……僕、悩むなんて子供なのかなぁ」
「ユキは神子として生活を始めてまだ1年と少しだ。慣れていないのも仕方ない。それに、ユキには俺がいるからな。俺がいくらでも支えてやるからユキはそのままでいい」
「……ありがと、ダグ」
まだまだ割り切ることは出来そうにないからダグに甘えます。いつか気にならなくなる日が来るのかなぁ、とぼんやりと考えてみるけれどあまり想像は出来なかった。今はまだ優しい旦那様に甘えることにします。
「ねぇダグ、お屋敷の中見てみたい!」
「ああ、いいぞ」
やったぁ! 手を差し出してくれたダグの手を握り、さらに腕にひっついていざ出発です!
「一階から行くか」
「うん!」
ダグの部屋は二階だから、一旦降ります。一階のエントランスに続く階段は緩くカーブしていて、木製の手摺とバーガンディのカーペットがマッチしていて落ち着いた雰囲気です。
「ふかふかでこけても痛くなさそう」
「危ないから転ばないでくれ。まぁ俺がいるから大丈夫だとは思うが」
「ダグにしがみついてるから大丈夫!」
いくらふかふかでも転げ落ちたら絶対痛いし怪我するもん。しっかり逞しいダグの腕にしがみついておきます。ダグは僕がこけてもビクともしないし安全です。
「一階は何があるの?」
「一階は応接室、厨房、使用人の部屋、それから一度外に出ることになるが温室もあるな。書庫なんかもあるぞ」
「僕厨房行きたい!」
「はは、つまみ食いでもするのか?」
「しないもん!」
僕そこまで食い意地張ってないもん! どんな感じなのかみたいだけだもん!
むぅ、と頬を膨らませるとくつくつと笑いながらチュッとキスをされて頭を撫でられました。キスされた瞬間のダグの表情がかっこよ過ぎて一気に上機嫌になりました。ルンルンと歩いてダグに案内されるままに着いていきます。
楽しそうな僕とそんな僕を優しい目で見つめるダグの様子を使用人さん達が微笑ましげに見ていたなんて僕は気づきませんでした。
僕の希望通りダグは厨房へと連れてきてくれて、大きな扉からひょこりと中の様子を覗いてみると広々とした厨房で5人の料理人さんが働いていました。お昼に向けての下拵えの最中なのかみんなで野菜の皮を剥いたり切ったりしてます。お義父さん達だけじゃなくて使用人さん達の分も用意しなくちゃだからかかなりの量です。もしかして私兵さんの分も用意してるのかな?
「残念だったな、今つまみ食いできるものはなさそうだぞ」
「しないもん! ダグのばかばかばか」
くつくつ笑うダグをべしべしと叩いてもダグは全くビクともせず、むしろもっと楽しそうに笑う始末。悔しい。
「えっ、神子様!?」
あ、邪魔しないようにってそっと見てたのに大きい声出しちゃった。料理人さん達の手を止めちゃった……
「ご、ごめんなさい、お邪魔するつもりはなかったのです……」
若干身体を縮こめつつ謝ればばびゅんっと飛ぶようにこっちへ向かってきた料理人さん達にあっという間に囲まれました。賑やかな人達みたいです。あと騎士さんみたいに筋肉が凄いから圧がすごいよ。
「いえいえ邪魔などと!! 何か御用でしょうか?」
「ちょっとお屋敷の中を見せてもらっているのです。僕も料理をするのが好きなので厨房はどんな感じなのかなぁ、と」
「そうでしたか! どうぞご自由にご覧になってください! あ、何かお出ししましょうか? なんでもお作りしますよ」
そう言った料理人さん達は揃って自慢の上腕二頭筋やら胸筋やらを強調するようなポーズをとりまして。一体何を料理するのだろうかと少し困惑してしまった。
「い、いえ、大丈夫です。また来ます」
「そうですか……またいらしてくださいね」
「はい!」
しゅん、としたマッチョな料理人さん達はちょっと可愛かったけれど僕がずっといたら調子が変わらない気がしたから退散します。お仕事の邪魔をするわけにもいかないしね。
料理人さん達へ別れを告げたら次は書庫へ。一階の奥まったところにあるそこはもはや図書館でした。
「ほぇ……」
天井まで続く本棚にビッシリと本が並んでいて、目当ての本を探すのには一苦労しそうです。そしてこれを全て読むにはどれだけの時間がかかるのだろう。僕の部屋の何倍も多いですよ。
「好きに読んでいいぞ」
「う、ん……」
好きに、と言われてもどこから手をつけたらいいかわからない。どこに何があるかもわからないし。
今はじっくり本を読むつもりはないので大体どんな感じかを見たら次に行きます。ここでの滞在が長くなるようならダグのお勧めを読もうと思います。
「こっちは使用人の部屋が固まっている」
「これ全部?」
ダグが示した方には結構な数の扉があります。これ全部なら結構だよ。
「基本的にはな。街から離れているからこうして部屋を与えるんだ。離れに部屋を持っている使用人もいるが」
「凄いねぇ……」
タウンハウスにも住み込みで管理する使用人がいるから、リゼンブルがかなりの数の使用人を抱えていることがわかる。リゼンブルって本当にお金持ちなんだなぁ……ってことはダグは騎士にならなくてもお義兄さんの手伝いでも全然生活できたのでは? と思ってしまった。そういえばダグが騎士になろうと思った理由は聞いたことがない気がする。
「ねぇダグ、どうしてダグは騎士になろうと思ったの?」
「あぁ……休憩がてら温室で話そう」
「長くなるの?」
「少しだけな」
「ん、わかった」
それならとまた歩き出したダグにひっついて歩き、お屋敷を裏口から出て、そのまま続く石畳の道を歩けばすぐに温室へ着いた。中央にはテーブルセットがあってお茶ができるようになっています。僕とダグはそこへ座って話すことに。
「俺が騎士になった理由だったな。一応このリゼンブルの一員ではあるから、全て断っていたとはいえ……見合いの話が絶えなかったんだ」
少し言いづらそうにしたダグになるほど、と納得した。前に僕はお見合いって言葉にすごく反応しちゃったからね。また僕が不安にならないか気にしてくれたのだろう。全く気にならないわけじゃないけど断ったならいいです。
「貴族連中は俺のリゼンブルという肩書きを欲しているだけだった。まだ子供だった俺は俺じゃなくてリゼンブルとしてしか俺を見ない貴族連中に辟易してな」
「あ……それって……」
「そうだ、今のユキと似た思いだろうな。ユキは神子としてしか見られないことが嫌なように、俺もリゼンブルとしてしか見られないことが嫌だった。ユキがあの言葉を発表した時はやはり俺たちは似ていると思った」
そう言って苦笑しながら僕の頬を撫でたダグに、僕は一度口を開きかけてすぐ閉じた。何を言おうとしていたのか、何が言いたかったのか自分でもわからなかった。
「俺は俺の力だけを評価してくれるところへ行きたかったんだ。騎士なら貴族としての権力は関係ない。貴族からの干渉を受けることもない。まだ子供だった俺にとっては絶好の逃げ場だったんだ」
「……ダグは今、僕と一緒にいて、貴族達にそういう目で見られるの、嫌じゃない……?」
舞踏会で会う貴族はもちろん、お城でたまにすれ違う貴族達はあからさまに取り入ろうとしてくる人達ばかりだ。すきあらばといったギラギラと欲にまみれた視線を向けてくる貴族は少なくない。ダグが家を出るほどに嫌だったそんな視線に晒してしまっているとしたら……
「そんな顔をさせてしまうと思ったからあまり言いたくなかったんだがな……おいで、ユキ」
「ん……ごめんね、ダグ」
膝に乗せて抱きしめてくれたダグに擦り寄れば優しく撫でてくれた。
「謝る必要はないぞ、ユキ。俺は今ユキと共に居ることが何よりも幸せなのだからな。俺も大人になって連中のあしらい方も学んだ。今ではむしろ連中に俺とユキの仲を見せ付けることが楽しいくらいだ。心配しなくてもユキが思うような嫌な思いはしていないさ」
「……ほんと?」
「ああ、本当だ」
優しく微笑むダグは嘘をついているようには見えない。ということは本心なのだろう。ダグに嫌な思いをさせてなくてよかった……
「……僕、悩むなんて子供なのかなぁ」
「ユキは神子として生活を始めてまだ1年と少しだ。慣れていないのも仕方ない。それに、ユキには俺がいるからな。俺がいくらでも支えてやるからユキはそのままでいい」
「……ありがと、ダグ」
まだまだ割り切ることは出来そうにないからダグに甘えます。いつか気にならなくなる日が来るのかなぁ、とぼんやりと考えてみるけれどあまり想像は出来なかった。今はまだ優しい旦那様に甘えることにします。
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