あの人と。

Haru.

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「ふぅん、いい子だねぇ。お相手の方も大事にしてくれるといいね」

「そうですね」

 よかったぁ、ダグの視線が和らぎました……どうやら満足のいく回答ができたようです。お仕置きルート回避完了! 甘やかしてもらおっと!!

「でも僕はお相手の方も羨ましいな。料理もできてお菓子も作れて、優しくてさらにこんなに可愛い子をお嫁にもらうなんて果報者だよね」

「たしかに。あとは幼児趣味の変態じゃないことを祈るだけだね」

 幼児趣味の変態……懐かしい。初めてお義父さん達と会った時にもそんな話出たなぁ。ダグは幼児趣味だったのかってお義父さん達からあらぬ誤解を受けたのは懐かしい思い出です。

 あの時はそこからお見合いを受けなかったのは……っていう話になって、僕がお見合いって言葉に反応して……っていう流れだったなぁ。

 なんて思い出していたらサダン君に呆れたような目を向けられました。

「お前のことだぞ? 変態だったらお前が餌食にされる可能性だって……」

 ああ、心配してくれてるのかぁ。まぁそんな心配は無用なんですけども。

「会ったことがないわけじゃないよ?」

 むしろ毎日会ってるし毎日一緒に寝てるしなんなら今もこの場にいますよ。サダン君が羨む肉体の持ち主ですよ。

「そうなのか? どうだった?」

「いい方だったよ?」

 ダグはいい人です。えっちの時はちょっと意地悪で、ベビードールを着せられたり、ダグのシャツを着せられたり、はたまた騎士服なんてものを着せられたりなんてするけど……あれ、ダグって思った以上に変態かもしれない……いやいやいや、優しいし!! たまにリボンであらぬところを縛られたりやらしいことを言わされたりするけど……だめだ、ダグは変態かもしれない……

 いや、うん、ダグは優しいよ? 優しいけど……えっちの方面では結構むっつりというか変態というか……なんだかサダン君の心配してることがそのまま僕に襲いかかってるんじゃって気になってきました。やばいぞ。

 落ち着くんだ僕。落ち着いてダグのいいところを考えるんだ。まず何より僕に甘いところでしょ。優しくて、誠実で、ちゃんと言葉と行動で想いを伝えてくれるところもいいよね。部下思いのいい隊長で、真面目で、あとはなんといってもあの惚れ惚れするほどの強さ! 鍛え抜かれた身体で剣を振るう姿は何度見てもかっこいいのです。

 うん、よかった。僕のダグはちゃんといい人だった。安心しました。

「……本当か? なんか今考えてなかったか?」

「ち、ちゃんと思い出してただけだよ! 変なこととかなかったから大丈夫!」

「それならいいんだけどよ……ラグルス達はついていくのか?」

「うん、一緒に行くよ。慣れ親しんだ護衛と世話役の方がいいだろうからってお相手の方が言ってくださったの」

 普通なら嫁入りとかしたらついていくのはせいぜい世話役くらいなものなのです。護衛は嫁入りしたおうちで新たな人を用意してもらう、みたいな感じなのが普通なの。契約云々給料云々のことがあるからです。だから僕のケースは一見特殊なわけだけど、多分この言い方なら納得してもらえるだろうなぁってことでこういう設定にしてます。

「それならいくらかは安心だな。何かあったら守ってもらえよ?」

「うん!」

 サダン君やスイーツ同好会のメンバーが安心したような様子を見せて、なんとか納得してもらえたところでこの話は終わりになりました。色々聞かれたらその内ボロが出そうでちょっと怖かったからよかったです。



 その後は少しお茶とお菓子をいただいて、お礼を言ってからサダン君と退出。今日のところは見学はここまで。明日とかにまた案内してくれるみたいです。

「どうだった?」

「んー、どうしようかなぁ。スイーツ同好会の雰囲気も好きなんだけど、魔法研究会で魔法について語るのも楽しかったんだよね」

 お城だとヴォイド爺と語れるんだけどさ、僕の魔法についてあれこれ考えるのつてあまり理解されないというか……否定されるわけじゃないけど、ダグも楽しそうだなっていう視線とともに頭を撫でてくるくらいなのですよ。だから魔研でちゃんと聞いて考察してくれたのは楽しかったなぁって。同年代の人とああいうことができるのって楽しいかもしれない。

「ああ、たしかにイキイキとしてたな」

「サダン君はスイーツ同好会での方が楽しそうだったよね」

 嬉しそうにお菓子に手を伸ばしてたよね。あまりにも美味しそうに食べるものだからスイーツ同好会の人達も嬉しそうに次々とサダン君に渡して、サダン君もそれを次々と食べて……ってなことをやってました。まるでわんこそばならぬわんこクッキーでした。僕は夜ごはんが食べられなくなるからってちゃんと量を考えたよ!

「俺甘いもの好きなんだよ。だからユーキのケーキ楽しみにしてるぜ」

「今度持ってくるね。甘めがいい? ビター目がいい? それとも普通?」

「普通かな。ビターなのも好きだけどビターすぎるとあまり好きじゃないんだよなぁ」

「わかった、調節して作るよ」

「すげえなぁ。俺も自分で作れたら手っ取り早いんだけどそういうのは苦手なんだよなぁ……」

 まぁたしかにサダン君が料理するイメージはないかなぁ。作っても男飯! みたいなお手軽料理を作ってそう。あんまり凝ったものは作らなさそうなイメージです。

「慣れたら簡単だよ」

「慣れるまでが大変だろ」

「まぁねぇ」

 僕も最初はよく失敗したもんね。焼き加減がわからなくて焦がしちゃったり、逆に生だったり……と思いきや生地がへたってなんだか不恰好になったり……今みたいにパパッと作れるまで結構かかりました。

「やっぱ俺は食う専門だな」

「まぁ人それぞれだしいいと思うよ?」

 ダグもまだ食べる専門だし。そのうち作れるようにさせてみせるよ!

「だよな! てことでケーキ待ってる!」

「わかったわかった。ちゃんと作ってくるよ」

「楽しみだ!」

 ニカッと笑ったサダン君に思わず僕も笑みをこぼして、だらだら歩いて寮に着けば別れてそれぞれの部屋へ。今日はもう解散です。

 部屋に入っていつものように遮音結界を張ってから楽な格好に着替えてカウチに座れば珍しくラギアスが近づいてきまして。

「どうしたの?」

「その……俺にお菓子の作り方を教えていただけませんか」

「お菓子の作り方? いいけどどうして?」

「う……その……」

 へにょ、と耳を垂らして視線をわずかながらも泳がせたラギアス。なんだか困っているような……珍しい仕草です。

「言いたくないなら別に大丈夫だよ。お菓子の作り方なんて悪いことじゃないんだし。……とりあえず今簡単なものでも作ってみる? そうだなぁ……プリンとかあまり失敗しなくていいかも」

 なにか悪いことに転用できるようなことなら理由を聞きたいところだけど、お菓子作りが悪いことにつながるとは思えないし。そこのところは置いておいてとりあえず一回作ってみましょう!

「いいのですか……?」

「いいよいいよ! 僕もなんだか食べたくなってきちゃった。リディア、牛乳と砂糖と卵ってあったよね?」

 確かキッチンの冷蔵庫にも幾らかの食材は入れてあるし、リディアとダグの魔法収納にも入ってたはず。どこかしらにはある材料だよね。

「ございますよ。ご用意いたしますね」

「ありがと! さてラギアス、先に手を洗うよ!」

「は、はい!」

 お菓子を作るんだからまずは基本の手洗いからだよ! 自分で食べるものに菌が入ってお腹をこわしました、なら自己責任で片付くけど、人に食べさせることがあるならそれは問題があるのです。その辺からしっかり教えておかなくちゃね。

 さて、楽しいクッキングの開始です!!
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