あの人と。

Haru.

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After Story

課題と

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「つーか水かけられそうになったんだよな……俺も注意して周り見とくわ」

「ありがと!」

 昨日先生は相手の子は今日に改めて呼び出して退学するかどうかを学園長さんを交えて話すとかなんとか言ってました。まぁ残るにしろ出て行くにしろお説教とペナルティはあるらしいけどね! ちなみに残るって本人が言ってもあまりにも獣人への態度が変わらないなら強制退学らしいです。だって誓約書書いてるんだもん。

「っと、そろそろホームルームだな。1限は……げ、算学じゃねぇか……」

「苦手なの?」

「いや、算学自体は嫌いじゃねぇんだけどよ……教師がちょっとなぁ……ロベルト先生って言うんだが、悪い奴じゃないんだけどお堅い奴でな」

「ふぅん?」

 お堅い人かぁ……僕のイメージじゃオールバックで眼鏡かけてて神経質! シャツにベストを着て、きっちりネクタイも締めて、ラインの綺麗なスラックスを履いてる! おまけに指し棒を常に装備! ……こんな感じ? でもまぁそんなベタなことはないよねぇ。

 なーんて思ってたらホームルームが終わって入ってきたのはまさに僕が想像した通りの先生で。切れ長の目とキュッと引き結ばれた口角が気難しそうな雰囲気を醸し出してます。

「授業を始める。まずは留学生、私は年下だからとお前を特別扱いするつもりはない。この学年に入った以上同等以上の学力レベルを求める」

「はい」

「よろしい。では38ページからだ」

 わぁ、本当にお堅い先生……サダン君が苦手になるのもわかるかもしれない。多分ちょっとした手抜きとかも許さないタイプだと思うもん。課題とか忘れたら物凄そうです。気をつけよっと。

 ロベルト先生の授業はわかりやすかった。効率を重視した教え方で、サクサクと進めていくけれど解説は丁寧で質問にもきっちり答えていく。いい先生だけど……

「ここまでの範囲を応用も含めて次回テストをする。もちろんいつも通り課題もあるから忘れないように」

 ……生徒には好かれなさそうです。だって課題の量も多いんだもん。教科書とは別に問題集があって、それを授業内容のところをやってこなくちゃだめらしい。ただ、その問題集もロベルト先生が書いたもので、問題数がかなり多い。そして解答は配られていないと言うパターン。見た感じ解けるものばかりだったから僕は大丈夫だけど、ロベルト先生が出て行った瞬間机に突っ伏したサダン君に思わず笑ってしまいました。

「うぅ……」

「大丈夫?」

「あぁ……別に算学は嫌いじゃねぇけどよ……これをやる時間があるなら身体を鍛えたいんだよなぁ」

「わからないところあったら教えるよ?」

「本当か!? 俺いつも応用のとこで躓くんだよなあ……なのに次回テスト……」

 応用かぁ。懐かしいなぁ、高校の数学でも応用になった途端に解けなくなる子いたな。解き方がわかれば簡単なんだけどね。

「あはは、頑張ろうね」

「おう……教えてくれよな」

「もちろん」

 僕に教えられることならなんだって教えるよ。大きな試験の時なんかは勉強会とかやりたいなぁ。夢だよ夢! ヴォイド爺の授業では定期試験みたいなのはなかったもん。試験期間のあの独特の雰囲気をまた味わえるかなってワクワクしているのです。


 その後もきっちり授業を受けて、放課後になればサダン君が算学の宿題を一緒にやろうと。場所はサダン君のお部屋。寮が一緒だって言うのは昨日聞いてました! 友達と一緒に宿題なんてワクワクで、るんるんとスキップしながら──嘘です、運動音痴の僕はスキップなんて出来ません。でも気持ち的にはそんな感じでサダン君についていくと、高校生男子! って感じのお部屋に招待されました!

「わりぃ、散らかってて……」

「これくらいなら大丈夫じゃない?」

 たしかに物は所々に散らばっているけれど、踏み場がないようなこともないし、埃が溜まっているようなこともない。多分こまめに掃除はしてるんだけどすぐ散らかしちゃうタイプなんだろうなぁ。僕的には落ち着く部屋だと思います!

「そうか? ならこっちの机でやろうぜ。あ、床に座るのって嫌か……?」

「嫌じゃないよ! 僕、家でラグの上に座ってたもん」

「そっか、よかった。俺も床に座るの好きなんだよ」

「僕もだよ」

 そのままゴロゴロ転がれるのも高ポイントです。カウチと違って、どこまで転がっても落ちることがないもん。好きな体制になれるのが楽なのです。

 2人でローテーブル挟んで座るとリディアが2人分のお茶とお菓子を出してくれた。

「あ、すんません。呼んだのはこっちなのに……」

「いえいえ、好きでやっていることですので。それに我々までお邪魔していますし」

「いや、それは別に構わないけども」

 リディアとサダン君が話している間に部屋をぐるっと見渡してみる。やっぱりこの部屋にも寝室が2つ付いているみたい。1人で入っても部屋数は変わんないのかぁ。

「ねぇねぇサダン君、寝室ってどんな風に使ってるの?」

「んあ? あー、片方はほぼ物置だな。つってもあんま使ってないんだけどよ。ユーキんとこは?」

「僕が1部屋、ラグとリディアで1部屋だよ。ラギアスは従者用の棟を借りてるの」

 本当は僕とダグで1部屋だけどそれは言っちゃダメなのです。だってここじゃ僕とダグはただの護衛と護衛対象なんだもん。普通その2人が一緒になんて寝ないもんね。

「追加で借りてるのか? なんならここの余ってる部屋使ってもいいぞ?」

「え?」

 思ってもみなかった提案をされて目をぱちくりとさせてしまった。聞き間違いかと思ったけどどうやらサダン君は本気のようで。

「禁止されているとはいえ差別が全くないわけじゃないからな……ユーキも心配じゃねぇ?」

「えっと……うん、心配だけど……流石にそんなに迷惑はかけられないよ」

「迷惑だと思ってたら言わねぇよ。どうする?」

「んー……返事はまた今度でもいい?」

「おう、いいぞ」

「ありがとう、サダン君」

 正直、ここにラギアスを住まわせてくれるならありがたい。まだサダン君と出会って間もないけれど、サダン君がいい人だってことはよくわかった。サダン君ならラギアスも大事にしてくれると思う。だけど……僕のことがある以上、すぐには返事はできない、かな。僕だけでは判断し難いです。

 そのあとは普通に課題を半分ほどやって、夜ご飯も一緒に食べてから部屋へ戻ってきた。パパッと遮音結界を張って緊急会議です。

「どうしよっか?」

「そうですねぇ……悪い話ではないと思いますが」

「俺もそう思うぞ。悪い感情は感じないからな」

 リディアとダグは肯定的な様子。ラギアスはどうかな?

「ラギアスはどうしたい?」

「……たしかに彼の部屋に住まわせてもらった方がいいのだと思いますが、俺は従者用の棟で構いません」

「んー……でも僕心配だよ? 嫌なこと起きてないかなぁって」

 サダン君の部屋ならそんな心配もないと思うんだけどなぁ。

「俺は……彼のそばにいるべきじゃありません」

「どうして? ……わかった、今回は断ろうか。でももし何かあるようだったら強制的にサダン君の部屋に入れるからね」

「……はい」

「うん。なら今日はこの話はおしまい!」

 本当は何かあってからじゃ遅いんだけど……ラギアスの様子を見ていたら無理やりサダン君の部屋へ入れることは出来なかったの。悩んでるような、なにかを考えているような……気になるけどラギアス自身もまだ整理できてなさそうな雰囲気だから僕は聞けない。

 何かあったら言うようにってずっと言ってきたから、何かあったわけではないと思うんだけど……なんか気になるなぁ……
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