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After Story
僕の周りは
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ロイの誕生日も過ぎ、僕がここに来てからちょうど1年が経った。いつに僕が来たよっていう詳しい日付は去年にお城から新聞が発行されているから、一周年記念の今日はいろんなところでお祭りが開かれているみたい。
ちなみに舞踏会はないよ。そんな話は出たらしいんだけど、ロイの誕生日があまりにも近くて、遠方から来ることになる人たちも大変だしってことで舞踏会はお披露目をした日と同じ日付にってことになったんだって。正直舞踏会自体いらないけど、キラキラのダグを見るためって思ったらいいイベントだと思います。
さて、そんなわけで1日何も予定がない僕は今日何をするかというと、ダグとデートです。日曜だからレイのお手伝いもなかったんだよ。ダグはお休みの希望をあげててくれたのです。
まずは手を繋いで2人でゆっくり庭をお散歩。
「ふふ、去年の今頃はダグはガッチガチに硬くてタメ口なんて以ての外だったよね」
「そうだな。あの頃の感覚としてはユキ、というより神子、だったからな。すぐにユキに仕えることが楽しくなっていったが」
「ふふ、ダグもリディアもロイ達も、みんな僕を僕として見てくれるから僕もすぐにこの世界に馴染めたんだろうなぁ」
ずーっと神子として扱われてたら耐えられなかっただろうなぁ。だってたまーに人前で神子として振る舞うと肩凝るもん。あれがずっとなんて発狂しちゃいます。
「言っただろう? 俺もリディアもユキがユキだからこそ仕えたいと思った。陛下もユキがユキだからこそ支えたいと思った。ユキの心が優しくて、人を思いやることを特別なことと思わないユキだからこそ、俺たちはユキのために何かをしたくなるんだ」
「ありがと。みんながいてくれてよかった」
ダグを筆頭としたみんなの支えがあるからこそ、僕はこうやって幸せに暮らせるんだもんね。
「俺もユキがいてよかった」
「ふふ、おそろい」
「そうだな、おそろいだ」
えへへ、ダグ大好きです。ぎゅうっと腕に抱きついて擦り寄れば優しく頭を撫でてくれて。大きな優しい手も大好きです。
「ダグ、ここでお昼食べよ?」
「いいぞ」
暫く歩いてたどり着いた芝生のこの場所は夜中に僕が泣き叫んだところ。ダグに引き止めてもらったところ。ダグにプロポーズを受けたところ。思い出の場所なのです。なんだか今日はここで過ごしたいなって思ったんだ。
大きな絨毯を敷いて2人で座り、まだお昼には少し早いからのんびりと寄り添って風の音に耳を寄せる。そよそよと吹く心地いい風は寒さを感じさせることはなく。1年前、ぽっかりと穴が空いたように感じた胸は今は幸せで満ち溢れている。
しみじみと1年前を思い出しているとダグがポツリ。
「あの歌が聴きたい」
「え?」
「ここでユキが歌った歌だ」
「えっ、やだやだ、あれ失恋ソングだもん」
僕失恋なんてしてないししたくもないよ……! ダグとずっと一緒にいるんだもん。
「失恋? そうなのか? なんでその曲をあの時に歌ったんだ? っ、まさか故郷に想いを寄せていた人間が……!」
「違う違う!! 僕の初恋はダグだから! んー……大好きだった人に置いてかれて1人になっちゃった女の人を、元の世界から置いていかれた僕に重ねたのかな。ああ、僕も1人だなぁって。自然とあの曲が頭の中に流れてきたんだ」
「そうか……ユキは1人じゃないからな」
「ふふ、わかってるよ。こんなにダグが愛してくれてるもん」
その証拠に実は今の僕の身体、キスマークだらけなのです……昨日ちょっとだけえっちして、その時に身体中に吸い付かれました……僕も負けじとダグに付けたよ。もはや一種のマーキングです。
「何があろうとも俺はユキを1人にしない。俺が離れたくないだけだが」
「僕も離れたくないよ」
まだ出会って1年しか経っていないのに、僕はもうダグがいないと生きていけない。もう何年もずっと一緒にいるんじゃないかってくらいにダグといることがあたり前になってて、もうダグは僕の一部になってるの。
「離さないから安心しろ」
「うん」
1年前と同じように強く抱きしめてくれる腕に、僕は相変わらず酷く安心した。この腕のおかげで僕は僕を保てた。あの日にダグが僕を、僕の心を引き留めてくれて本当によかった。
この日はのんびりと寄り添い合って1日を過ごした。他愛もないことを話して笑い合って、いつもの僕たちと何も変わらない1日を過ごし、僕は1年目という節目の日を終わらせた。これから何年もこの世界で生きていくんだから1年っていうのは“たった”かもしれないけれど、なんだか今日やっとこの国の国民として地に足がついたような、そんな気分になった。
その夜、僕とダグはダグと僕のいろいろな思い出で溢れた部屋にいた。
「ここは……?」
「僕の心の中、かなぁ」
なんとなく、そんな感じがした。多分、初めて神様に会った時の、真っ白だった部屋だと思う。ここは、僕がこの世界で生きていくことを覚悟したあの日からの思い出がぎっしり詰まっているんじゃないかな。
「大正解だよ、幸仁」
「こんばんは、神様」
「おや、驚かなくなってきたね」
「ここに僕たちがいるってことは神様が来ることは想像できたので」
「それもそうだね」
どこからともなく現れた神様は相変わらず楽しそうに穏やかな笑みを浮かべている。ダグも神様の出現には慣れたみたいで、驚いた様子はない。
「この1年よく頑張ったね、幸仁」
「僕何もしてないです。ダグといちゃいちゃしてただけですよ」
だって見てみてよ、この部屋ダグと僕がいちゃついてるところしか映ってないよ。……えっちしてるところはギリギリ映ってなくて本当に良かった。
「ふふ、そうでもないよ。この1年ですでに獣人に対する意識は変わりつつある。もともと中立よりの立場にあった者達中心ではあるけれど、大きな進歩だ。幸仁の影響はこの先も続いていくだろう? 私はこの世界がどうなるか楽しみでしょうがない」
「僕はもっとこの世界のことを知って、何かがしたいです。でも、もっと知識をつけなくちゃ……」
「焦らなくていい。焦っていいことなど1つもないからね。元々幸仁に義務はないのだから、幸仁のやりたいようにおやり」
「はい」
もうすぐ留学も始まるし、留学先では身分を隠すからきっといろんな人と対等な立場で話し合える。いろんな人の意見やいろんな国の話を聞いて、僕が何をするべきか、何ができるのかを考えたい。
「周りの過保護な者達が騒がない程度に頑張るんだよ」
「はぁい」
みんなものすごーく過保護だからなぁ。ちょっと微熱出しただけで大騒ぎするんだもん。
「ダグラス、幸仁が少し微熱を出しただけで大騒ぎされると言っているぞ」
ちょっ、神様……!
「ユキ、微熱でも気にするに決まっているだろう。ユキが倒れたらどうする」
「微熱で人は倒れないと思うけれど」
「ですよね!」
「まぁ幸仁は倒れそうな見た目はしているけれどね。この世界の人間に比べて随分小さい上に力もないから仕方ないだろう」
……神様はどっちの味方なの? 味方してくれたと思ったらなんかものすごく貶された気が……ひ弱ってことでしょ……そりゃこの世界の人に比べたら弱いけども!!
「幸仁の故郷の基準でも弱い方じゃないかい?」
「そんなことない、はずです……!」
「断言できてないじゃないか」
うぐ……だって皆勤賞とかとったことないし……弱くはないと思ってるけど決して強い方ではなかった、よねぇ……兄さん達は健康の塊なのになぁ。
「気をつけないと駄目だな。微熱が出たらその日は平日でも1日ゆっくりするんだ」
「むぅ……微熱くらい大丈夫なのに」
「見ている俺達が大丈夫じゃない。頼むから大人しくしていてくれ」
「はぁい……」
心配させちゃうなら我慢するけど……そういえば母さん達もちょっと僕が微熱出すと高校休ませたがったし仕方ないのかなぁ。僕の周り、生まれてから今に至るまでずーっと過保護な人ばかりみたいです。
ちなみに舞踏会はないよ。そんな話は出たらしいんだけど、ロイの誕生日があまりにも近くて、遠方から来ることになる人たちも大変だしってことで舞踏会はお披露目をした日と同じ日付にってことになったんだって。正直舞踏会自体いらないけど、キラキラのダグを見るためって思ったらいいイベントだと思います。
さて、そんなわけで1日何も予定がない僕は今日何をするかというと、ダグとデートです。日曜だからレイのお手伝いもなかったんだよ。ダグはお休みの希望をあげててくれたのです。
まずは手を繋いで2人でゆっくり庭をお散歩。
「ふふ、去年の今頃はダグはガッチガチに硬くてタメ口なんて以ての外だったよね」
「そうだな。あの頃の感覚としてはユキ、というより神子、だったからな。すぐにユキに仕えることが楽しくなっていったが」
「ふふ、ダグもリディアもロイ達も、みんな僕を僕として見てくれるから僕もすぐにこの世界に馴染めたんだろうなぁ」
ずーっと神子として扱われてたら耐えられなかっただろうなぁ。だってたまーに人前で神子として振る舞うと肩凝るもん。あれがずっとなんて発狂しちゃいます。
「言っただろう? 俺もリディアもユキがユキだからこそ仕えたいと思った。陛下もユキがユキだからこそ支えたいと思った。ユキの心が優しくて、人を思いやることを特別なことと思わないユキだからこそ、俺たちはユキのために何かをしたくなるんだ」
「ありがと。みんながいてくれてよかった」
ダグを筆頭としたみんなの支えがあるからこそ、僕はこうやって幸せに暮らせるんだもんね。
「俺もユキがいてよかった」
「ふふ、おそろい」
「そうだな、おそろいだ」
えへへ、ダグ大好きです。ぎゅうっと腕に抱きついて擦り寄れば優しく頭を撫でてくれて。大きな優しい手も大好きです。
「ダグ、ここでお昼食べよ?」
「いいぞ」
暫く歩いてたどり着いた芝生のこの場所は夜中に僕が泣き叫んだところ。ダグに引き止めてもらったところ。ダグにプロポーズを受けたところ。思い出の場所なのです。なんだか今日はここで過ごしたいなって思ったんだ。
大きな絨毯を敷いて2人で座り、まだお昼には少し早いからのんびりと寄り添って風の音に耳を寄せる。そよそよと吹く心地いい風は寒さを感じさせることはなく。1年前、ぽっかりと穴が空いたように感じた胸は今は幸せで満ち溢れている。
しみじみと1年前を思い出しているとダグがポツリ。
「あの歌が聴きたい」
「え?」
「ここでユキが歌った歌だ」
「えっ、やだやだ、あれ失恋ソングだもん」
僕失恋なんてしてないししたくもないよ……! ダグとずっと一緒にいるんだもん。
「失恋? そうなのか? なんでその曲をあの時に歌ったんだ? っ、まさか故郷に想いを寄せていた人間が……!」
「違う違う!! 僕の初恋はダグだから! んー……大好きだった人に置いてかれて1人になっちゃった女の人を、元の世界から置いていかれた僕に重ねたのかな。ああ、僕も1人だなぁって。自然とあの曲が頭の中に流れてきたんだ」
「そうか……ユキは1人じゃないからな」
「ふふ、わかってるよ。こんなにダグが愛してくれてるもん」
その証拠に実は今の僕の身体、キスマークだらけなのです……昨日ちょっとだけえっちして、その時に身体中に吸い付かれました……僕も負けじとダグに付けたよ。もはや一種のマーキングです。
「何があろうとも俺はユキを1人にしない。俺が離れたくないだけだが」
「僕も離れたくないよ」
まだ出会って1年しか経っていないのに、僕はもうダグがいないと生きていけない。もう何年もずっと一緒にいるんじゃないかってくらいにダグといることがあたり前になってて、もうダグは僕の一部になってるの。
「離さないから安心しろ」
「うん」
1年前と同じように強く抱きしめてくれる腕に、僕は相変わらず酷く安心した。この腕のおかげで僕は僕を保てた。あの日にダグが僕を、僕の心を引き留めてくれて本当によかった。
この日はのんびりと寄り添い合って1日を過ごした。他愛もないことを話して笑い合って、いつもの僕たちと何も変わらない1日を過ごし、僕は1年目という節目の日を終わらせた。これから何年もこの世界で生きていくんだから1年っていうのは“たった”かもしれないけれど、なんだか今日やっとこの国の国民として地に足がついたような、そんな気分になった。
その夜、僕とダグはダグと僕のいろいろな思い出で溢れた部屋にいた。
「ここは……?」
「僕の心の中、かなぁ」
なんとなく、そんな感じがした。多分、初めて神様に会った時の、真っ白だった部屋だと思う。ここは、僕がこの世界で生きていくことを覚悟したあの日からの思い出がぎっしり詰まっているんじゃないかな。
「大正解だよ、幸仁」
「こんばんは、神様」
「おや、驚かなくなってきたね」
「ここに僕たちがいるってことは神様が来ることは想像できたので」
「それもそうだね」
どこからともなく現れた神様は相変わらず楽しそうに穏やかな笑みを浮かべている。ダグも神様の出現には慣れたみたいで、驚いた様子はない。
「この1年よく頑張ったね、幸仁」
「僕何もしてないです。ダグといちゃいちゃしてただけですよ」
だって見てみてよ、この部屋ダグと僕がいちゃついてるところしか映ってないよ。……えっちしてるところはギリギリ映ってなくて本当に良かった。
「ふふ、そうでもないよ。この1年ですでに獣人に対する意識は変わりつつある。もともと中立よりの立場にあった者達中心ではあるけれど、大きな進歩だ。幸仁の影響はこの先も続いていくだろう? 私はこの世界がどうなるか楽しみでしょうがない」
「僕はもっとこの世界のことを知って、何かがしたいです。でも、もっと知識をつけなくちゃ……」
「焦らなくていい。焦っていいことなど1つもないからね。元々幸仁に義務はないのだから、幸仁のやりたいようにおやり」
「はい」
もうすぐ留学も始まるし、留学先では身分を隠すからきっといろんな人と対等な立場で話し合える。いろんな人の意見やいろんな国の話を聞いて、僕が何をするべきか、何ができるのかを考えたい。
「周りの過保護な者達が騒がない程度に頑張るんだよ」
「はぁい」
みんなものすごーく過保護だからなぁ。ちょっと微熱出しただけで大騒ぎするんだもん。
「ダグラス、幸仁が少し微熱を出しただけで大騒ぎされると言っているぞ」
ちょっ、神様……!
「ユキ、微熱でも気にするに決まっているだろう。ユキが倒れたらどうする」
「微熱で人は倒れないと思うけれど」
「ですよね!」
「まぁ幸仁は倒れそうな見た目はしているけれどね。この世界の人間に比べて随分小さい上に力もないから仕方ないだろう」
……神様はどっちの味方なの? 味方してくれたと思ったらなんかものすごく貶された気が……ひ弱ってことでしょ……そりゃこの世界の人に比べたら弱いけども!!
「幸仁の故郷の基準でも弱い方じゃないかい?」
「そんなことない、はずです……!」
「断言できてないじゃないか」
うぐ……だって皆勤賞とかとったことないし……弱くはないと思ってるけど決して強い方ではなかった、よねぇ……兄さん達は健康の塊なのになぁ。
「気をつけないと駄目だな。微熱が出たらその日は平日でも1日ゆっくりするんだ」
「むぅ……微熱くらい大丈夫なのに」
「見ている俺達が大丈夫じゃない。頼むから大人しくしていてくれ」
「はぁい……」
心配させちゃうなら我慢するけど……そういえば母さん達もちょっと僕が微熱出すと高校休ませたがったし仕方ないのかなぁ。僕の周り、生まれてから今に至るまでずーっと過保護な人ばかりみたいです。
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