あの人と。

Haru.

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After Story

今更ながら

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「あのお店行きたい!」

「行くか」

 見えたのはアンティーク雑貨を置いているお店。なんだか雰囲気がすっごく素敵なのです。これは見ないわけにはいかないと僕の本能が言ってます!

 お店の扉を開くとカランカランと金属でできたウィンドチャイムが鳴った。お香が焚かれているのか良い香りがしてなんだかソワソワする。

「初めて入ったがいい店だな。よく見てみよう」

「うん!」

 ダグと一緒にお店の中をあっちを見たりこっちを見たり。オシャレな小物で溢れかえっていて、ついついいろんなものに手を伸ばしてしまいます。

「わ、これダグみたい」

 僕が手に取ったのは銀の狼の小さな置物。なんだか優しげな眼差しでダグにそっくりです。

「ならユキはこれだな」

「僕のイメージは兎なの?」

 ダグが手に取ったのはさらに小さな黒い兎の置物。グイッと上を見上げています。

「可愛いユキにぴったりだろう? ほら、並べてみてもちょうどいい」

 2つの置物を並べると、狼は兎を見下ろし、兎は狼を見上げているようになった。まるで最初からセットとして作られたかのように体勢的にはぴったりだ。

「若干兎が食べられそうな気もするけど……」

 兎と狼が仲良くって弱肉強食の世界じゃありえない光景だよね……兎がペロッといかれちゃいそう。

「ベッドの中では俺がユキを食べているだろう?」

「ばか……っ!」

 間違ってないけど! 間違ってないけど外で言うことじゃない!!

「くく、可愛いな。これ買うか」

「……狼は僕が買う」

「わかった」

 2人でお会計を済ませたらお店を出てまた街をぶらぶら。兎と狼はどこに置こうかなぁ。ベッドサイドのテーブルに置いたらなんだか新婚夫婦向けジョークグッズの枕みたいになりそうだよね……狼と兎が見つめ合うようにしてたらOK、みたいな……いい場所考えよう!

 少し歩いたところで見つけた結構大きなお酒屋さんで騎士さんへのお酒を手配して、ダグにもお酒を一本購入。騎士さんには樽に入ったビールを3つほど。ダグにはダグがよく飲んでるウイスキーです! このウイスキー美味しいのかなぁ?

「ダグ、他に欲しいものは?」

「何か揃いの装飾品だな。銀細工の店があるから見にいこう」

「うん!」

 えへへ、お揃いの装飾品だって! 僕も欲しいです。ダグとのお揃いはダグを身近に感じられて心が温かくなるのです。いやまぁダグ本人も十分近くにいるんですけどね!

 少し先にあった銀細工のお店に入り、ガラスケースに並べられた装飾品を見ながら2人で何にするか話し合う。

「指輪とブレスはあるもんね」

「そうだな。アンクレットかネックレスか……ピアスもあるが穴を開けていないしな」

「開けるのって痛い?」

 開けるのは構わないんだけど……痛いかなぁ? ちゃんと消毒しないと化膿するんでしょ? ダグとリディアがちゃんと見ててくれると思うけどちょっと怖いかも……

「どうだろうな。そこは人によると思うが……怖いならやめておこう」

「じゃあアンクレットかネックレス?」

「そうだな」

 まずアンクレットから見て次にネックレスを見る。華奢な細工からゴツい細工まで色々とあって見ていて楽しいです。

「ダグのお仕事で支障ないのはどっち?」

「どっちでも問題ないぞ。だがネックレスの方が見やすい位置にあっていいかもな」

 たしかに騎士さんってブーツ履くからアンクレットは完全に見えなくなる。ネックレスももちろん服の中に入れてしまうけど、編み上げのブーツの中より断然取り出して見やすい。

「どんなのがいい?」

「ここら辺はユキに似合いそうだ」

 僕はダグが好きなものを聞いたつもりだったんだけどなぁ……そういえばダグって僕が希望を聞いても毎回僕に似合うものや僕が好きなものを選ぶ気がする。僕のことを考えてくれるのは嬉しいけど、なんだか負けた気分になる……ちょっと悔しいです。

「どうした?」

「なんでもない。ここらへんはダグにも似合いそうだよ」

「ああ、俺も好きなデザインだ。これにするか」

「うん!」

 選んだのは羽根がモチーフのネックレス。細かな作りだけど、華奢すぎるわけじゃないからがっしりした体型のダグでも似合うと思います!

 店員さんを呼び、出してもらって2人で1つずつお会計。自分のものを自分で、じゃなくてお互いのものをお互いに、です。お会計が済んだらひとまず僕はポシェットに、ダグは魔法収納にしまいこんでおいてお店を後にした。きっちり包んでもらったネックレスはお城に帰ってからつけてもらうのです。楽しみ!

「あとはみんなへのお土産買わなくちゃ」

「俺はまだユキに買うぞ。買い足りない」

「……僕ダグが破産しそうで怖いよ」

「他に使い道がないんだ。ユキに使わなければ無駄に金がたまっていく。これだけユキに買っていても貯金する余裕があるくらいだからな」

 どれだけ稼いでるんだろう、僕の旦那様……そういえば何気にダグのお給料って聞いたことがなかったかもしれない……僕にあれだけ買ってまだ余るほどのお金……だってダグからもらうものって高価なものばっかなんだよ!? 服も装飾品も王族や上級貴族が身に付けるような物ばかりなの! それでもお金が余る……

「……もしかしてダグのお給料って桁違い?」

「騎士の中でも多い方だな。団長の次くらいに多いんじゃないか?」

 ……衝撃の事実です。他の国じゃどうかは知らないけど、ヴィルヘルムだと騎士団長っていったら下手したら大臣よりも権力あるんだよ。軍務大臣なんて言っちゃえばお飾りで、実質的な力があるのは断然騎士団長な訳です。騎士団長の力は宰相さんと並んでるって言ってもおかしくないくらい。

 そんな騎士団長のお給料はもちろん桁違いなわけですよ。基本給は宰相さんよりちょっと少ないくらいで大臣くらいかな? でも、騎士っていうのは危険が伴うお仕事だから、命をかけてくれてありがとうねっていう意味を込めて危険手当が出る。危険手当は騎士としての能力が高くなるほど仕事に危険が増すから高くなる。最大で基本給の半分くらいだったかな? 騎士団長ともなればもちろん最大限もらえるだけの実力があるから……騎士団長のお給料は余裕で宰相さんより多くなります。

 ダグはそんな騎士団長のアルバスさんの次くらいに多い……え、ものすごくない? 26歳っていう若さでそれ? 下手したらすでに宰相さんと同じくらいもらってるんじゃ……

「……ダグってすっごくお金持ち?」

「騎士になってから今の給金をもらうまでそう時間はかからなかったからな……小さい屋敷くらいなら建てられるぞ」

 ……初耳です。それはお金使いたくなるよ……何か使い道探すよ……ずっと使わないでいたら下手したら死ぬまで使わないもんね……

「だが家はあるから屋敷を建てる必要がないからな……余計に金が余っている」

「……僕もうダグが破産する心配はしないでおくね」

「そうだな、心配しなくていいと思うぞ」

 そんなにお金持ってたなんて……全く知らなかったよ。まぁだからってダグへの想いが変わるわけでもないんだけどね。プレゼントは嬉しいけど申し訳ないなって気持ちが前に来るし、僕はお金目的でダグのことが好きになったんじゃないからね。

 プレゼントをくれるダグが好き、じゃなくて、愛しいダグがプレゼントをくれる、なのです。これは大きな違いだよ!

 だって僕ダグからの贈り物が全くなくてもダグのこと大好きだもん。ダグと一緒にいられるだけで幸せですから!

「無駄遣いだけはしないようにね」

「ユキに渡すものはちゃんと厳選している。ユキに渡すのに値するかどうかをまず確かめるからな。粗悪品は1つもないだろう?」

「まぁそうだけど……」

 僕にふさわしくないものって一体なんだろうって気になるけれど、ダグからもらうものに質の悪いものがないことは確かです。

「その上ユキの好みから外れていることもないはずだ」

「たしかに……」

 ダグからもらったもの、っていうステータスでまずテンションは上がるけど、実際に着たりつけてみて気に入らなかったものとかって全くない。全部しっくりくるんだよね。どれもこれもしっくりきすぎて余計にテンションが上がるパターンです。通販だと失敗するもの結構あるって兄さんたちに聞いたことあるのに……ダグは失敗なし……

 かっこよくて、優しくて、強くて、センスも良くて、所持金もものすごい僕のダグ、超人すぎませんか?
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