あの人と。

Haru.

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After Story

伝え方はひとつじゃない

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 ちょっと休憩してお腹の具合がマシになれば、東屋から出て景色を眺めることになった。僕を抱えていて手がふさがっているダグの代わりにリディアが敷物を敷いてくれて、その上にダグと2人で座る。もちろん僕はダグの膝の上ですよ!

「ユキにはこれと……こうだな」

 僕の膝に膝掛けをかけて、2人をすっぽり覆うように大きな毛布を被って中でぎゅっと抱きしめてくれたダグ。本当に温かいけれど、それ以上に心がポカポカと温かくなる。

 たまらず伸び上がってちゅっとキスをすれば、一瞬驚いた表情をしたダグはすぐに微笑んでキスをくれた。何度か啄ばむようなキスをして、ピタッと見つめ合った後にプハッと同時に笑って。そんなやりとりは擽ったさと甘い幸せをもたらしてくれるんだ。貪り尽くされるような激しいキスも好きだけど、こういう戯れのようなキスも大好き。だってなんだか甘酸っぱいのです。


 時折キスをしながら景色を眺めてダグが行ったことがあるところの話をたくさん聞いて、お腹の具合がマシになったらさっき食べれなかったデザートを食べて今度は一度だけ行ったお忍びデートの思い出を話して、なんてやってたらあっという間に時間は過ぎていった。

「そろそろ風が強くなるから城へ戻ろう」

「はぁい」

「また来るか」

「うん!」

「街にも行こうな」

 あは、バレちゃった。ダグの話を聞いてたらちょっとうずうずしちゃったのです。

「ロイにおねだりしなくちゃ」

 迷惑かけちゃうって思いはなくならないけど、適度に何かを頼まないとどこかで爆発するというのがダグとリディアの弁。爆発する前におねだりしてみようと思います。

「ユキにおねだりされたら断れないだろうな」

 ロイもアルも僕が何かを頼むと目をキラキラさせて喜ぶからねぇ……僕はわがままを言わないようにって自制してるんだけど、何も頼みごとをしないと物言いたげな視線を向けられます。穴が空くほど見られます。いっそ怖いくらいなんですよ!! それにこの前会ったらね、

「アルバスには頼みごとをしたのに私にはないのか」

「俺たちも何か頼まれるんじゃないかって待ってたのになぁ……」

なんて言われまして。目が笑ってなくてものすごく怖かったからこの機会におねだりしようと思います! 騎士さん負担かけてごめんなさい! 今度お酒持っていきます!



 それからまたダグとリディアの2人の連携プレーでクロードに乗せられ、ゆらゆらと揺られながらお城へと帰った。お城に着いた頃にはダグの言った通り風が強くなり始めていて、僕が風邪を引くことを危惧したダグはクロードを騎士さんに任せてさっさと部屋へ僕を連れて行った。

「さて、着替えて夕食までゆっくりしよう」

「はぁい」

「リディア、俺の部屋から適当に着替えを持ってきてくれ」

「わかりました」

 僕の部屋着は寝室のクローゼットの中に入っている。寝室のクローゼットにはまだ他にシーツの予備だとかタオルだとか僕の下着だとかが入れられているんだ。……シーツ類とタオルは僕とダグが汚しちゃった時用ですよ。え? それはいつのことか? そんなのひとつしかないし……そ、それはいいの!

 まだダグの部屋を神様にもらっていなかった頃はダグの着替えは寝室のクローゼットに入ってたんだけど、部屋が出来てからはそっちに移したんだ。ダグの寝室でもあるんだし置いてていいのにって言ったんだけど、代わりにシーツとタオルを入れたいって……そう言われた時は真っ赤になっちゃって何を想像してるんだってニヤニヤ笑われちゃった。その日の夜どうなったか……? そ、そんなの内緒です!

 そんなこんなでダグの着替えは部屋へ取りに行く必要があるのです。それをリディアに頼んだってわけだね。魔法収納にも着替えは入ってるんだけど、また補充しないとダメだから、着替えを取りに行けない状況じゃない限り使わないのです。

 なーんて考えている間に僕はスツールに下ろされ、せっせと靴紐を緩めているのです。ダグは僕の服をクローゼットから出してます。……服を出すだけなのにちょっと時間かかってるのはダグが僕に何を着せるか悩んでるからだよ。割とあります。

「よし、これにしよう」

 あ、決まったみたい。ダグが持ってるのは細身のズボンにダボっとしたシャツだね。珍しくフリルがなくて僕が結構気に入ってるやつですよ。

 戻ってきたダグは着替えを一度僕に渡すとその場に膝をついて僕のブーツをあっという間に脱がせてくれた。僕の格闘はいったい……まぁいいや。そのままささっと着替えさせてくれて、ダグもリディアが持ってきてくれた着替えに着替えて2人とも楽な格好になった。

 ダグに抱き上げられて部屋に戻れば、リディアも着替えを済ませていた。

「温かいお飲物をお入れ致しましたよ。ユキ様にはココアを、ダグラスはどうします、ホット・ウィスキー・トディでも作りましょうか?」

 僕にクリームもりもりのココアを渡しながら聞くリディア。ホット・ウィスキー・トディってなんだろ?

「……いや、普通の酒でいい。湯気だけでユキなら酔いそうな気がする」

「ああ、そうですね。では普通にどうぞ」

「ああ」

 むぅ、湯気だけで酔うって……お酒飲んだことないからわかんないけどきっとそこまで弱くないもん……!

 まぁいいや、今はココアだよ! もりもりのクリームがクリーミーなココアと混ざり合って……えへへ、すっごく美味しいです。

「ユキ」

「ふぇ?」

 ひゃ、鼻を舐められた!!

「クリームが付いているぞ」

「うぅ、普通に拭いてくれたらいいのに」

「まぁいいじゃないか」

 いいの、かなぁ……? 別に嫌ではないけどびっくりするし恥ずかしいじゃんか……

「ほら、早く飲まないとクリームが溶けるぞ」

「ああっ!」

 急がなくちゃ……! でも今度はクリームを鼻につけないように……! まぁ、結局その後も何回かつけちゃってその度に舐められたんだけどね!!


 ココアで身体を温めたらリディアが部屋から出ていったから、夜ご飯までダグといちゃいちゃして過ごすことに。ダグの足を跨ぐように座って、ぎゅうっと抱きついてすりよればダグも抱きしめ返して撫でてくれるのです。

「ん~大好きぃ」

「俺も好きだ。愛している」

 愛の言葉は言い過ぎると1つ1つの重さが軽くなるなんて言う人もいるけれど、ダグのは違うよ。何度同じ言葉を繰り返しても、その1つ1つにとろりと甘くてぎゅうぎゅうに詰まった愛が込められているのです。もちろん僕も目一杯ダグへの愛を込めていますよ! 言えば言うほど、言われれば言われるほど、ダグへの想いがどんどん強くなっていくから言葉に込められる愛が軽くなることは決して無いのです!

「ダグに愛してるって言われるの、大好き」

「それは良かった。何度言っても足りないくらいだからな。何度でも言おう。愛している、ユキ。俺の愛しいユキ」

 もうもうもう、胸が鳴り止まないじゃないか! きゅうきゅう甘く胸が締め付けられてたまりません!

「僕も何回言っても足りない! どうやったら僕の中にあるダグへの気持ちを全部伝えられるのかなぁ……言葉が足りないよ」

「全部伝わっているさ。俺の想いはユキに伝わっていないのか?」

「……ううん、伝わってる……ダグの仕草から伝わってくる……」

 僕に触れるときの優しい手や僕を見るダグの目、表情、それに僕の名前を呼ぶダグの声……1つ1つがダグの想いを僕に伝えてくれるんだ。

「そういうことだ。ユキの仕草も俺への想いを映し出してくれる。ユキの想いは全て伝わっている」

「そっかぁ……」

 全部、伝えられてるんだ……よかったぁ。一生かかっても伝えきれないんじゃないかって思ってたもん。

「ユキの仕草ひとつひとつから愛情を感じるたびに俺はたまらない気持ちになる。ユキへの愛しさが募ってたまらない」

「僕もダグの愛を感じるたびに胸がきゅうって締め付けられるよ。どんどんダグを好きになるんだ。僕たちお揃いだね」

「ああ、お揃いだ。俺たちは似た者同士だからな」

「ふふ、そうだった」

 そうだ、僕たち似てるんだった。だからきっと僕がダグの愛を感じるたびに、ダグも僕の愛を感じてくれてるんだ。えへへ、嬉しいね。
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