あの人と。

Haru.

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After Story

リラックス出来る空間で

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 お昼を食べ終わり、もうそろそろラスが来るかなっと少しソワソワと待つ。だって年下の悩みを聞くなんて初めてだから……! ちゃんと相談に乗ってあげられるかちょっと緊張してます!

 そんな感じで待っていたものだからドアがノックされた音にビクッとなってしまった。

「どっどうぞ!!」

「ユキ、今日はごめんね」

「ううん、大丈夫! 座って座って! ……んー、そうだな、こっちにしよう」

 本当はカウチに座ってもらおうと思っていたけれど、少し硬い表情のラスを見て予定変更。今日は暖炉前の癒しゾーンに座りましょう! リラックスしないと話せるものも話せないしね!

「え?」

「こっちこっち。はい、ここ座って。あ、靴は脱いでね」

「えっここ床……」

「ふかふかで気持ちいいよ! リラックス出来るから座ってみて!」

「わ、わかった……」

 ラスは王子だし床になんてちっちゃい頃くらいとかもしかしたら床に座ったこと自体ないのかも。おずおずといった様子で靴を脱いでラグの上に上がると、これまたおずおずと座った。

「ほらほら、クッションも使って使って」

「う、うん。……わ、ふかふか」

「でしょ? 僕のお気に入り!」

「前来た時はこんなのなかったよね? 部屋も広くなってるし……まさかまた神様?」

「正解! 僕は断ったんだけどね、パッと作っちゃって。ありがたく受け取ることにしたの」

 問答無用で作られちゃったからねぇ。まぁ、ここすっごく気持ちいいし作って貰えて良かったんだけどね。

「へぇ……床に座るってちょっと違和感あったけど……なんか、いいね。あったかい感じする」

「でしょ? 最近はダグとここでゴロゴロするのがマイブーム」

「あー、いいなぁ。たしかに寝転がりたくなる……」

「寝転がってもいいよ? ラスの楽な体勢になりなよ」

「えー、でも俺床に寝転んだことない……」

「気持ちいいよー? ほらほら、一回寝転んでみなよ」

 バフッとクッションに倒れこんでラスも寝転ぶように誘ってみる。どこかうずうずとしたような様子だから寝転びたいって気持ちはあるのだろう。

「ふかふかのクッションとふわふわのラグに包まれたくない?」

「包まれたい!」

「おいでませ!」

 一名様極楽へご案内! ラスもこのふわふわに虜になってしまえ!!

「うわぁ~、これはやばい! 気持ちいい……これ部屋にもほしいー……」

「暖炉をつけるとさらに最高だよ」

「暖炉? 熱くない?」

 不思議そうに言うけれどのんのん! これは特別な暖炉なのですよ!

「神様仕様で全く熱くならない優れものです! 魔力をちょっと送るだけでほら、温もり空間の完成~」

 暖炉の火は見ているだけで癒されるからね。今のラスにはピッタリだと思いますよ!

「おおー! なんだろ、温かいのに熱くない……いいね、これ」

「でしょでしょ? リラックス出来るよねー」

「うん。力抜けるー……」

 ぐでっと寝そべったラスはいい感じにリラックス出来てるように見える。よしよし、これなら相談も乗りやすそうだ。

「ふふ、そろそろ話せる?」

 リディアがちょうど良くお茶とお菓子をトレーに乗せて渡してくれた。ふふん、このスペースではお行儀悪く寝転んでお菓子を食べても良いのですよ! えへへ、浄化の魔法で落としちゃったお菓子のカケラとかを綺麗に出来るからこそ出来ることです。じゃないとこんなに毛足の長いラグの上で飲み食い出来ません!

「……ん。あのさ、ユキの故郷ってまだ女の人がいたんだよね?」

「うん、いたよ」

「ならさ、ユキはそれまで女の人と結婚するっていうのが普通だったわけでしょ?」

「まぁ、そうなるね」

 だからといって同性愛に偏見があったかと言われるとそうじゃないけど、まぁ女の人と結婚して家庭持つのかな、とは思ってたなぁ。

「ならさ、ダグラスと付き合うことになってさ、抱かれることに抵抗はなかったの?」

「抵抗かぁ……うーん、嫌、っていうのはなかったかな。ちょっと怖いなぁとは思ったけど、ダグなら、って思えたから気持ち悪いとか、嫌だ、とかそんなことは全く思わなかったよ」

「それはダグラスが優しかったから?」

「それもあるかなぁ。ダグは無理矢理犯してやろうなんていう人じゃないからね。やろうと思えば力尽くで僕をおさえるなんて簡単なのに、僕の気持ちを聞いてちゃんと待ってくれたし、ゆっくりと進めてくれたから怖さもすぐなくなっちゃった。それに何より僕はダグが大好きで仕方なかったからね。ダグになら何されてもいいって今も思ってるから」

 まぁ、何されてもいいって思うのってダグが僕の本当に嫌がるようなことはしないって信頼してるからっていうのもあるんだけどね。

「そっかぁ……俺はさ、王子として育ってきたじゃん。しかも俺って2人しかいない王子の内の1人で、いっちゃえば兄上のスペアだからさ、夫側になることがほぼ前提で育てられてきたの。そういう閨教育も受けたし、そういうものなんだって思って、俺はずっと奥さんをもらうんだって思ってた」

 確かにこの国に王子は2人しかいないからなぁ……レイに何かあったら、次期国王の座はラスに回ってくることになる。ならばラスが夫側になる存在として教育を受けてきたこともわかる。ラスの中でそれが当たり前になっていたことも。

「そろそろ本当に相手を見つけないとってなった頃に、ユキがこの世界に来た。……ごめんね、ユキ。俺、多分あの時、本当にユキを好きだったんじゃないと思う。焦ってた時に可愛くて優しい人が現れて、この人ならってなっちゃったんだと思う。俺、ユキの中身を見ようともせずに俺の気持ちばっかり押し付けようとして、本当にユキに失礼なことしちゃったなって……本当にごめんなさい」

「いいんだよ、ラス。確かにあの時はビックリしたけど、ラスは僕とダグが付き合い始めたって言った時、迷いなく祝福してくれたじゃん。僕ね、あれすっごく嬉しかったんだ。ビックリしたけど、純粋におめでとうっていってくれて嬉しかった。だからそれで帳消し!」

 だって本当に嬉しかったもん。……根掘り葉掘り聞き出されたのは痛い思い出だけども。

「う……その時に俺さ、嫌だって思わなかったんだ……ユキに結婚してって言ったのに、ユキが他の男を好きになって嫌なんて1つも思わなかった。だから俺って本当はユキのこと好きだったわけじゃないんだって気付いたんだ」

「まぁ、うっすらそうだろうなぁとは思ったけど。僕は今幸せだし、ラスも応援してくれたからそれでいいよ。僕とダグの関係を応援してくれてるのは嘘じゃないでしょ?」

「それはもちろん! ユキとダグラスは、俺の理想の夫婦なんだ。仲良くて、喧嘩しなくて、一見ユキがダグラスに支えられてるように見えても実際にはお互いに支え合ってて。それに何より、2人はいつも自然体だから。2人がキラキラ輝いて見えて、応援せずにはいられないんだ」

 うわぁ、嬉しいなぁ。だってそれってさ、見る人が見たら僕がダグを支えているように見えるってことでしょ? 僕、ダグを支えたいって思って頑張ってるからすっごく嬉しい。ちゃんとダグの支えになれてるんだって。ダグは僕を支えてくれてるけど、僕はダグの支えになれてるかなって思うことは少なくないからね。ラスの相談に乗るはずが僕が喜ばされちゃったよ。

「ふふ、ありがとう。どうしよう、嬉しくて顔がにやけちゃう」

「あー、いいなぁ。今のユキすっごい幸せそうな顔」

「だって幸せだもん。大好きなダグとの関係を褒められて嬉しくないわけないよ」

「ユキはダグラスのこと大好きだもんねー」

「うん! 大好き! ……って今日は僕のことじゃなくてラスのことじゃんか。このままじゃ僕の惚気になっちゃうよ」

「うわ、それはやだ」

 ちょっと酷い。ラスも恋人ができたら惚気たくなる日がいつかくるはずだよ……!
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