あの人と。

Haru.

文字の大きさ
上 下
197 / 396
After Story

バランスは大事

しおりを挟む
 条件付きではあったけれどなんとか許可を貰えて、僕達は兵舎の食堂にやってまいりました!

「ユキ、どこがいいんだ?」

「奥の方でひっそりと見学できたら十分です!」

 あ、アルバスさんもついでにお昼を取ると言いまして、一緒に来ております。……なんかね、許可証を渡す代わりに半径5m以内に入るのを許せって言われてね……仕方なく、本当に仕方なぁく許しました。だってそうしないと許可証はあげないし、こっちで全部解決するなんて言われちゃったんだもん。ズルイよ!!

 まぁ、それはともかく残りの2人を引き摺りだ……見つけますよ!!

「ここでいいか?」

「はい! 騎士さんいっぱいですね! 皆さんどんなものを食べられるんですか?」

「ユキ様ならそう仰るだろうと思いまして、こちらのメニューの中からユキ様がお好きそうなものをご用意していますよ」

「わぁ!! 流石リディア! ありがとう!!」

 昨日はラギアスの部屋に行く前に部屋に戻っていいよって言ってたから、兵舎に行くなんて伝えたの今日の朝なのにリディアったら仕事が早い! 流石です! 見学のためにここに来てるっていうのに兵舎のご飯は一切手を付けないってどうよ? って思ってたからありがたいです。

「あなたはさっさとご自分の分を取って来たらどうです?」

「なんだぁ? 俺の分は用意してくれねぇのか?」

「なんでそんなことをしなくてはならないのです? 体力も腕力も有り余っているんですからさっさと自分で取ってきてください」

「わーったわーった」

 ったく、ちょっとくらい優しくしてくれたっていいだろ、なんてブツブツと言いながらアルバスさんがお昼を取りに行ったのを見送るリディアの様子が……おやおや?

「リディア?」

「なんでしょうか、ユキ様」

「ふふ、そんな顔するならもう少し優しくしたらいいのに」

 ちょっとまたやってしまった、って顔をしたのを僕は見逃しませんでしたよ!! リディアってもしかして、アルバスさんにきつく当たっちゃうこと気にしてるのかな?

「……別に、そんな顔などしていません。優しくしたらあっちがつけあがるだけです」

「リディア可愛い。心配しなくてもアルバスさんがリディアに愛想を尽かすことはないと思うよ?」

 だってリディアの性格って隠してたものじゃなくない? いや確かに、僕がリディアが実はドSって知ったのはダグと付き合いだしてすぐの頃だったけどもさ、でもそれから現在リディアとアルバスさんが付き合うまではまぁまぁ間があるわけで。もちろんアルバスさんもリディアの性格を知ってたわけで。大分ボロクソに言ってたしね。それでもリディアと付き合ってるんだから、ねぇ? 今更それでリディアを嫌いになるとは思えないなぁ。

「べ、別にそんな心配していません」

「そう? それならいいんだけどリディア、今リディアが果実水を注いでる容れ物、スープのお皿だよ」

 僕流石にそれで飲み物飲むのは嫌だよ? お椀的なものならまだ飲めるけど、スープ皿は縁が広いからね……飲むなら犬みたいに飲まないと無理。流石にそれはしたくないです。

「こ、これはアルバスの分です!」

「流石にやめたほうがいいと思うよ?!」

「……ですよね」

 うん、止めるべきだと思います。動揺してるのはわかってるからそれをアルバスさんに出すのはやめなさい。ほら、それはもうしまってしまって。

「なぁに騒いでんだぁ?」

 間一髪、リディアがとりあえず魔法収納に入れたところでアルバスさんが戻ってきた。手には山のようなご飯。いったい何人前あるのかな。ダグの1.5倍くらい?

「なんでもないですよー」

「んぁ? 何だか知らねぇが、俺はそのままのお前が好きだぞ」

「っうるさいです!!」

 聞いてたんじゃん! ご飯取りに行ったと見せかけて他の騎士さんに取りに行かせて影から聞いてたのかな? ポンと頭に乗せられた手を勢いよく弾いたリディアはお顔が真っ赤で可愛いです。

「くっくっく、可愛い奴だな」

「あんまりからかわれると後が怖いですよ?」

「プリムスの酒を飲まされるなら大歓迎だがな」

「あれ? それって弱点だったんじゃ……」

「おう、弱点だぞ。主に下半身に効くな」

 下半身……それってもしかして……? ちらっとリディアを見たら真っ赤になってプルプルと震えている。あー……プリムスのお酒、アルバスさんには媚薬的な効果があるのかぁ。もしかして前に腰を庇っていた日ってそれであんなになってたの? 初えっちで媚薬かぁ……そりゃ腰も大変なことになるよね。

「えーと……お疲れ様?」

「元はと言えばダグラスが……!」

「間違ったことは言ってないぞ。ただし俺はどういう効果があるのかは言ってないがな。お前も聞かなかったんだから俺のせいにするな」

 確かにそう言われてみたらそうかも……僕もどんなふうにプリムスのお酒に弱いのか聞いてなかったや。まさかそっち方面とは思わなかった。だって弱点って聞いたら体が痺れるとか、力が抜けるとか、眠くなるとか想像しちゃわない?

「お陰でいい夜だったぞ」

 その一言でリディアの纏う空気が絶対零度となった。なんでアルバスさんはこうもリディアの地雷を踏み抜くかな……! ものすごく寒いんですけど!!

「と、とりあえずご飯にしましょ? リディアもほら、一緒に食べよ? ダグとラギアスもここ兵舎だしついでに食べちゃいなよ」

「……かしこまりました」

「では失礼します」

 席順は僕の右にアルバスさん、左にダグ。向かいは右斜め前がラギアス、左斜め前がリディアです。今はリディアとアルバスさんを離すべきと判断しての結果です。

 ……なんだけども。

「……机が……高い……」

 食べる前もちょっと思ってたんだよ。ちょっと……ごめんなさい、見栄を張りました。うん、大分高いかなって……でもさ、座ってる分には問題なくて。だからちょっとその事実から目を逸らしてたわけなんだよ。そしたらいざ食べようと思ったら嫌な位置にお皿が並んでるの……!

「ぶっふぉ!! ユキ、ちっこいもんなぁ!! おっちゃんのお膝に乗せてやるぞ?」

 ……明確な殺意が芽生えた瞬間でした。うっかり幻影魔法を放っちゃわないようにここは癒しを得なければ!!

「ダグ、食べさせて?」

「かしこまりました」

 お互いに体をひねって向かい合うような体勢になり、あーんっと口を開けたらいつものようにまずはサラダから口に入れられる。おっ、いつもと違う味! でも美味しいよ!! さっぱりとしたドレッシング、僕好きです! 一個気になることあるけどまぁそれは置いておいて……お次はスープ! ……うん、美味しいんだよ。文句なしに美味しいんだけど……ま、まぁいいや、メインもちょっと食べて……付け合わせも……

「全部お肉……! 美味しいけど全部お肉!!」

 見事に全部にお肉が入ってますよ!! サラダにはササミ! スープにはベーコンとチキン! メインはビーフ! 付け合わせはマッシュポテトにベーコン! ……流石戦闘職種向け! 一食で鳥、牛、豚、コンプリートしちゃってるよ……

「肉を入れてなきゃ残しやがるんだ。サラダなんざ誰も手ぇつけねぇぞ。体が資本なんだからバランス良く食えって言ってんのに」

 なるほど。騎士さん達みんなお肉好きそうだもんなぁ……

「お肉ばっかり食べると疲れやすくなるから騎士さんには致命的な気が……」

「だろ?」

「あとは……野菜が足りないと体臭がきつくなったり……あっ、皮膚の炎症とかもありますよ」

「皮膚なぁ……こいつらにとっちゃそこらは説得力ねぇんだよなぁ……」

 あー、うん、たしかに動ける筋肉があれば大丈夫! みたいな人たしかに多いよねぇ。でもさぁ……

「騎士さんって禿げとか気にしないんです?」

「あ? ハゲ?」

「皮膚ってつまり頭皮も入ってるんですよ? つまりは抜け毛の原因になることも……」

 まぁ野菜食べたら絶対禿げない! とは言えないけど、肌荒れの原因は作らない方がいいよねぇ。

「……おっし、サラダもっと取ってくっか」

 ……アルバスさんも含めて色んな騎士さんが立ち上がってご飯を受け取れるカウンターの方へ向かって行きました。僕とダグはお互いに禿げても~って話してるけども、まぁなるべく禿げたくはないよねぇ。

 あっ、今ちょうどこっち見てる人少ないから今のうちに探りましょう。

 ……ん? あれ? ……うん、間違いない、よね。

 んんんんん??
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

離縁しようぜ旦那様

たなぱ
BL
『お前を愛することは無い』 羞恥を忍んで迎えた初夜に、旦那様となる相手が放った言葉に現実を放棄した どこのざまぁ小説の導入台詞だよ?旦那様…おれじゃなかったら泣いてるよきっと? これは、始まる冷遇新婚生活にため息しか出ないさっさと離縁したいおれと、何故か離縁したくない旦那様の不毛な戦いである

クソ雑魚新人ウエイターを調教しよう

十鳥ゆげ
BL
カフェ「ピアニッシモ」の新人アルバイト・大津少年は、どんくさく、これまで様々なミスをしてきた。 一度はアイスコーヒーを常連さんの頭からぶちまけたこともある。 今ようやく言えるようになったのは「いらっしゃいませー、お好きな席にどうぞー」のみ。 そんな中、常連の柳さん、他ならぬ、大津が頭からアイスコーヒーをぶちまけた常連客がやってくる。 以前大津と柳さんは映画談義で盛り上がったので、二人でオールで映画鑑賞をしようと誘われる。 マスターの許可も取り、「合意の誘拐」として柳さんの部屋について行く大津くんであったが……?

俺の妹は悪女だったらしい

野原 耳子
BL
★冷酷な第一王子✖頑張るお兄ちゃん騎士 伯爵家の長男であるニアは、妹のダイアナが聖女様を傷付けた罪で家族もろとも処刑された。 だが、首を斬り落とされた瞬間、十六歳だった頃の過去に戻ってしまう。 家族を救うために、ニアは甘やかしてきた妹を厳しく鍛え上げ、自分自身も強くなろうとする。 しかし、妹と第一王子の出会いを阻止したことによって、 なぜかニアの方が第一王子に気に入られて側近になってしまう。 第一王子に執着され、運命は予想外な方向に転がっていくが――

今、私は幸せなの。ほっといて

青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。 卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。 そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。 「今、私は幸せなの。ほっといて」 小説家になろうにも投稿しています。

美形な兄に執着されているので拉致後に監禁調教されました

パイ生地製作委員会
BL
玩具緊縛拘束大好き執着美形兄貴攻め×不幸体質でひたすら可哀想な弟受け

BL r-18 短編つめ 無理矢理・バッドエンド多め

白川いより
BL
無理矢理、かわいそう系多いです(´・ω・)

国王様は新米騎士を溺愛する

あいえだ
BL
俺はリアン18歳。記憶によると大貴族に再婚した母親の連れ子だった俺は5歳で母に死なれて家を追い出された。その後複雑な生い立ちを経て、たまたま適当に受けた騎士試験に受かってしまう。死んだ母親は貴族でなく実は前国王と結婚していたらしく、俺は国王の弟だったというのだ。そして、国王陛下の俺への寵愛がとまらなくて? R18です。性描写に★をつけてますので苦手な方は回避願います。 ジュリアン編は「騎士団長は天使の俺と恋をする」とのコラボになっています。

【完結】真実の愛とやらに負けて悪役にされてポイ捨てまでされましたので

Rohdea
恋愛
最近のこの国の社交界では、 叙爵されたばかりの男爵家の双子の姉弟が、珍しい髪色と整った容姿で有名となっていた。 そんな双子の姉弟は、何故かこの国の王子、王女とあっという間に身分差を超えて親しくなっていて、 その様子は社交界を震撼させていた。 そんなある日、とあるパーティーで公爵令嬢のシャルロッテは婚約者の王子から、 「真実の愛を見つけた」「貴様は悪役のような女だ」と言われて婚約破棄を告げられ捨てられてしまう。 一方、その場にはシャルロッテと同じ様に、 「真実の愛を見つけましたの」「貴方は悪役のような男性ね」と、 婚約者の王女に婚約破棄されている公爵令息、ディライトの姿があり、 そんな公衆の面前でまさかの婚約破棄をやらかした王子と王女の傍らには有名となっていた男爵家の双子の姉弟が…… “悪役令嬢”と“悪役令息”にされたシャルロッテとディライトの二人は、 この突然の婚約破棄に納得がいかず、 許せなくて手を組んで復讐する事を企んだ。 けれど───……あれ? ディライト様の様子がおかしい!?

処理中です...