あの人と。

Haru.

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After Story

のんびり

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 んぅ……なんだかものすごく寝た気がする。気分的にはそう、目覚ましをかける必要もない穏やかな休日……お休みの日ってさぁ、あれ、もうお昼前? 寝すぎちゃったなぁ、なんてこともあったりするよ、ね……

 ……お昼前? 今、何時?

「じゅぎょっ……~っっっ!!!」

 身体と喉が痛すぎて奇声になった……じゅぎょっ……一文字足りないだけでなんかすごい変な言葉になるね……辛い。

「くっくっく……おはよう、ユキ。凄い起き方だな?」

 ひょいっと突然視界に現れたかっこいい人。僕の自慢の旦那様です。昨日は意地悪だったけど!!!

 というか起き方とか言ってる場合じゃないから! 今明らかに授業終わりくらいの時間だよね?! 僕サボリやらかしたの?!

「授業なら心配するな。ヴォイド様に緊急の仕事が入ったそうで今日はなしになった」

 あ、そうなの……よかったぁ、僕授業なのに誰も起こしてくれなかったのかと思ったよ。もしくは僕が起きなかったか?
 授業なしかぁ、起きても授業なんて受けれる状態じゃなかっただろうしちょうどよかったなぁ。

 ……ん? まてよ、ダグはなんでこの時間にここにいるの? しかも私服で。どういうこと?

「どうした? ……ああ、俺は今日は元から休みだったんだ。言うのを忘れていたな。ユキもたまたま休みになったし今日はゆっくりしような」

 お休み……そうなの? そっか、お休みなのかぁ……えへへ、ならいっぱいいちゃいちゃできるね。せっかくだし神様に作ってもらった暖炉の前でゴロゴロしようかな? あのふわふわのラグとクッションすっごく気になってたんだよね。

「ご機嫌だな。起きて少し早いが昼食にしよう」

 はぁい!

 水を口移しで飲ませてもらってからあっという間に着替えさせられて部屋へ。

「……リディアは?」

 いつも着替える時にはリディアがやってくるのに来なかったし、部屋にもいない。でもフードカバーが被せられたお皿がたくさんテーブルに並んでるね?

「俺が休みなら、と飲み物と食事だけ用意したら出て行った。まぁ、俺たちの出す空気にさらされたくなかったんだろう」

 なるほど。たしかにリディアは僕とダグの出す甘い空気にうへぇって顔して逃げるもんね。ついに事前に逃げるようになったのかぁ。

 リディアは僕みたいにアルバスさんに甘えて甘~い空気になったりしないのかなぁ。……うん、想像できないや。なんかアルバスさんがからかってリディアが怒って、って流れしか思い浮かばない。でも結局はちょっとデレるリディア。多分これだ。

 うーん、前にロイはアルに殴られてたし夫婦や恋人のあり方ってそれぞれだねぇ。僕は現状に大満足! ダグ大好き!!

「さて、食べるか」

「うん!」

 なんだか今日の僕、すっごく幸せです。ぐっすり眠れて、起きたら授業はお休みになってて、ダグもお休みで側にいて?! 膝に乗せられたってことはご飯も食べさせてくれるってことで……出だしから幸せバロメーター振り切ってるけど大丈夫かな?!


 ゴロゴロと甘えながら昼食を済ませ、ダグに暖炉の前に連れて行ってもらった。僕は靴までもダグに脱がせてもらって、ダグも靴を脱いでラグに上がると脚を開いて座ったダグにもたれかかるように降ろされた。すかさず側にあったクッションを引き寄せてみれば……

「ふわふわ!」

 ふわふわのラグにふわふわもちもちのクッション……まさに神様クオリティの素晴らしいものです……ここは僕をダメにするエリアかな?!

「本当に手触りがいいな。今日は少し寒いし暖炉もつけてみるか」

「うん!」

 暖炉は遠くからでも魔力を送れば付けられる仕様で、流した魔力の量で強さも調節可能! 幻影系の魔法かな? 本当に薪が燃えているように見えて、たまにパチっと弾ける火が綺麗です。

「寒くないか?」

「うん! 温かいよ。それになんだかほっこりする」

「そうだな、暖炉の火は見ている分にも心地いいな」

 だよねぇ。実際は本当に燃えてるわけじゃないんだけど、そこはやはり神様が作っただけあってもう本物としか思えない精巧さだからね。本当の暖炉みたいにほっこりします。

「僕、冬はずっとここで過ごしちゃいそう」

 それくらい居心地いいよ、ここ。床に座ってまったりするのなんて久々だけどいいものだね。ものすごく楽です。ラグがふかふかで全く痛くないし。

「夜もここで寝てしまうんじゃないか?」

「あはは、寝ちゃいそう。そうしたらベッドに運んでくれる?」

「ベッドに運んで欲しいのか? 馬鹿な俺はお誘いだと勘違いしてしまうかもしれないな」

「えー、僕襲われちゃうの? ほぼ毎日なんて僕の身体もたないよ」

「どれだけここで寝るつもりだ……ちゃんとベッドで寝ないと風邪をひくぞ」

「はぁい」

 暖炉って時間をゆっくりにさせる効果でもあるのかなぁ。なんだかいつもよりのんびりな感じがして、ダグとの会話もゆったりとしたものに。くすくすと笑いながらゆっくりと言葉を交わしていると心が安らいでいく。胸が甘く締めつけられるような幸せではなく、じんわりとした温かい幸せを感じる。

 さらさらと髪を梳くように撫でられ、目を合わせればそっと優しいキスが落とされて……

「僕幸せ……」

「俺も幸せだ。愛している」

「僕も愛してるよ」

 くすくすと笑い合い、決して激しさはない優しい優しいキスをして、そのまま寝転んでじゃれ合っている内に、いつの間にか僕はゆったりとした優しい眠りについたのだった。



 起きたら大きな毛布の中でダグの腕に包み込まれ、優しい微笑みを浮かべたダグにゆっくり頭を撫でられていた。

「おはよう、ユキ」

「おはよ……んぅ……」

「まだ眠そうだな?」

「だってぇ……」

 ダグの手が気持ちよすぎるんだもん……絶対僕を起こそうとなんてしてないような手つきだよ。安心するしあったかいし起きれないよぅ……

「まだ寝るか?」

「おきるぅ……」

「今にも寝そうだが?」

「うー……」

 起きるには撫でる手を止めてもらったらすぐなんだけど、あまりに気持ちよすぎてやめて欲しくない……多分ダグもそれを分かった上で撫でる手を止めないのだろう。くつくつと楽しそうに笑っている。

「せっかくの休日なのに旦那をかまってはくれないのか?」

 ……起きなきゃ。ダグが寝かせようとしている感が半端ないけど起きなきゃ。

 名残惜しいけど撫でる手から逃れるように起き上がり、ぐぐっと伸びをして一気に力を抜けば眠気は少しはマシになった。同じように起き上がったダグの首に腕をまわし、ちゅっとキスをする。嬉しそうに微笑むダグは可愛いしかっこいいです。

「お昼寝ばっかしてごめんね」

「いや、気持ち良さそうに寝ているユキを見ているのは好きだから構わない。俺も一緒に寝ることだってあるしな」

 それも本当なんだろうけれど、かまってくれないのかって言葉が出たってことは、一瞬でも寂しいと思ったことがあったんだろうなぁって……本当にごめんね、ダグ。お昼寝の頻度ちょっと減らすね。ダグの側は心地よすぎてゼロには出来ないけど。

「何する? ダグのしたいことしよ?」

「とりあえず茶でも飲もう。何か腹に入れるといい」

 ……ダグのしたいことは? まぁお茶飲んでからでも全然いいけども……

「何が食べたい? クッキー、マカロン、ガトーショコラ、苺タルト……ユキが好きなものばかりあるぞ」

 リディア……どれだけ用意したの……

「クッキーかなぁ? 手軽に食べれるものがいいかも」

「ならマカロンも出すか」

 ラグに胡座をかいたダグの上に向かい合わせに座らされ、ダグが横に銀のトレイを出してからソーサーにティーカップに茶漉しにティーポット、それからクッキーにマカロンと次々に出したらお茶の準備は万端! ポットのお茶は蒸らしたやつを魔法収納に入れていたから注ぐだけで大丈夫なのですよ。カップも温めたものを入れてたからお茶がすぐ冷める心配もなし! 素晴らしい!

 まずはお茶をくぴり。ダグと一緒に飲むと美味しいリディアのお茶がさらに美味しく感じます。

「ほら、クッキーだぞ」

「あむ」

 ダグに差し出されたらもう迷わずに齧り付くくらいにはダグに食べさせてもらうのに慣れきった僕です。気分は餌付け。

「美味いか?」

「美味しい! ダグもあーん」

「ん」

 ダグも迷わずに食べてくれるから餌付けだって別にいいのです! こういうのは当人が良ければそれでいいのです。

「マカロンもな」

「んむ」

 うむ、美味しゅうございます!
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