あの人と。

Haru.

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After Story

甘いのは誰

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 長々と話して18時を少し回った頃、母さん達はそろそろ帰ると席を立った。少し寂しいけれど、昨日ほどではない。たくさん話せてだいぶ満足したからかな?

「ゆきちゃん、また来るわね? そろそろ私たちはお暇するわ」

「ご飯こっちで食べてかなくて大丈夫?」

 日本基準の4人前なら用意してもらえると思うけど……

「ええ、そこまで甘えられないわ。大丈夫、お昼を作るときに下拵えは済ませてあるの。また今度一緒にご飯食べましょうね?」

「うん! じゃあ、またね」

「またな、幸仁。ダグラスくんと仲良くな」

 くしゃくしゃと頭を撫でられて思わずにへっと笑ってしまう。

「もちろん! 気をつけてね」

 まぁゲートを通ったらすぐ家だから気をつけることはないだろうけど、気持ちの問題だよ。

「ああ、幸仁も身体には気をつけろよ」

「はぁい。もうお説教はやだから気をつけるよ」

 そうなのです。恐れていたお説教を受けたのです……父さんと母さんのソファの前で正座させられて……ダグもリディアもキョトンとしてたよ。
 幸い手短に終わったから良かったけど、半年以上してなかった正座をしたらもう足が痺れて痺れて……立ち上がれなくなった僕はダグに抱えられてソファに戻りましたよ。その時の兄さん達の生温い視線といったらもう……

「ダグラスくん、リディアさん、幸仁を頼みます」

「はい」

「お任せください」

 最後にみんなに抱きしめられ、みんなはゲートの向こうへ帰って行った。それを見送って神様も帰って行き、さらにリディアも夜ご飯を用意しに行ってダグと2人きりになった。

「いい人達だな。ユキが優しいのもよくわかる」

「ふふ、自慢の家族だよ。みんな末っ子の僕に甘くて優しいんだ」

「ユキを甘やかしたくなる気持ちは十分わかる」

「ダグが1番甘いからねぇ」

「いやか?」

「ううん、大好き!」

 ガバッと抱きついたらそのまま当然のように抱き上げてくれるダグ。ぐっと視線が近づいてダグの優しい微笑みが間近で見れるからこの体勢は僕のお気に入り。ダグの上に座った時よりもぐっと近くなるからね。

「なら良かった」

 んー大好き!

 ダグの微笑みがきらきら輝いて見えてすっごく綺麗で……思わず僕からキスをしてしまった。

「ん……んぅっ?! んっ、ふ……ぅん……っ」

 僕は軽く触れるだけのつもりだったのにダグのスイッチが入ったのかどんどん深くなっていくキスに、僕はもう身体の力など一切入りません。もうダグにされるがままに与えられる快感を受け入れる。

 多分立ってたらとっくに崩れ落ちてただろうなってくらいに身体がふにゃふにゃ。まぁ身長差がありすぎてダグとキスするのは基本抱き上げられたり座ったりしてするのが普通なんだけども。多分腰も抜けている僕はくたっとダグにもたれかかりながら終わらないキスに酔いしれる。

 本当にダグとのキスは気持ちいいなぁ……

 漸く唇を解放され、頭をダグの肩へ預けて息を整えているとさらりと頭を撫でられた。大きな手で撫でられるのはやっぱり気持ちいい。ただただ優しい手つきはただでさえぼうっとしている僕の意識を奪わんとするかの勢いだ。

「夜は寝かせないからな」

 耳元で囁かれて一気に覚醒した僕はバッとダグの表情を伺う。ダグは奥に炎を押し込めた眼をしていて、本当に今夜はダグの言葉通りになるだろうことがわかった。

「あ、う……」

「風呂も一緒に入るか?」

 む、無理無理無理! 絶対それお風呂でもえ、えっちなことされる……! 僕の体力もたないよ!!

 ぶんぶんと首を振るとくつくつと笑われ、からかわれたことを理解する。

「風呂はまた今度、な」

 い、いつかは一緒に入るんですか?! うぅ、お風呂一緒に入るのはまだちょっと慣れてないんだよぅ……ほぼ確実にいたずらされるんだもん……! しかも完全に明かりも付いてて恥ずかしい! えっちの時ももちろん恥ずかしいけど明かりは落とすもん! ……いくら暗くしてもダグには全部見えてる感あるけども。……気持ちの問題です!

「……お食事の準備が整いましたが」

 突然聞こえたリディアの声にビクリと身体が跳ね、声の発生源を見れば笑ってない笑顔を携えたリディアがいた。

「り、リディア?! い、いつからそこに……!」

「少し前ですよ。大丈夫です。お2人がそれはそれは深いキスをなさっていたことなんて見ていませんから」

 ……それってもう見てたってことだよね。完全に見てるよね。

 見られた……!! 全く気づかなかった!!!

「……ダグは気付いてたの」

「ああ、もちろん」

 ダグのばかばかばか! なんで言ってくれないのさ!

「気付いてたなら言ってよ!」

「ユキが可愛くてつい、な」

 うぐ……可愛いって言ったら許されると……! 許される、と……うぅ、大抵は許してしまいます、はい。ダグは僕に甘いけどもしかして僕もダグに甘い?!

「いちゃいちゃなさるのは結構ですが、お食事が冷めてしまいますよ」

「はい! ごめんなさい!! すぐに食べます!!」

 リディアのひんやりとした視線を受けたらもう無条件に謝ってしまうよね。おそろしや……


 いつもよりちょっと急ぎめで夜ご飯を食べ終え、満腹の僕はお気に入りのカウチでちょっとひと休み。厳密に言えば僕のお気に入りのカウチに座ったダグの上に座ってひと休み、かな。詰め込みすぎたみたいでちょっと苦しいお腹を優しーくゆっくーり撫でてくれて身体の力も自然と抜けますよ。安定感もあるから遠慮なくグデッともたれかかりましょう。

「大丈夫ですか? 消化を助けるお茶をどうぞ」

「ありがと……」

 ありがたくあったかいお茶を少しずつ飲む。一気に飲んだらダメだ。大変なことになる予感しかしない。僕のお腹はもうほとんど隙間が残っていないのですよ……


 ちびちびと飲んでいたお茶も飲み干し、お腹もだいぶ楽になってからまた少し間を空け、お風呂に入ることに。ダグも自分の部屋のお風呂に向かって行っちゃった。

 そうして脱衣室にてリディアに服を脱がされている僕は迷っています。

 うんと綺麗にしてもらうかどうかを……!

 恥ずかしいけどさ、やっぱり綺麗な方がダグも喜ぶかなって。でもでもそんなことしたら僕もやる気だってダグが盛り上がりすぎて寝込むなんてことになりかねないかなって思うんだよね。でもやっぱり好きな人には綺麗だって思って欲しいし……

 そうやって迷った僕は結局……


「いつもより念入りに、綺麗にしてください……」

「ふふ、かしこまりました。では明日の朝も遅めに参りますね」

「うん……」

 やっぱりバレますよね! えっちするって!!

「ああ、ペンダントもお出ししておきますか?」

 普段は大事にしまっている魔法具のペンダントを使うか聞いてくるけれど……

「寝てる時に首に紐は怖いなぁ……起きてからでいいや」

 寝てる間に回復出来たらかなりいいんだけども、ね。身体で踏んづける余地のない長さならそうそう締まることもないだろうけど、あのペンダントは結構長めだから身体で踏んで万が一、なんてことがあるかもしれない。僕はものすごく寝相がいいってわけでもないし。まぁ、何かある前にダグが気付くんだろうけども、心配事は消しておくに越したことはない。

「かしこまりました。レモン水はいつもの場所に置いておきます。あとは……マリオン様からの結婚祝いをお召しになりますか?」

「え?!! や、いつも通りの服でいいです……!」

「おや、綺麗になりたいのでは?」

「あの服を着て綺麗になるとは限らないと思うな?!」

「黒は高貴なお色。ユキ様の漆黒の髪と瞳にぴったりでそれはそれは美しくなるかと思いますよ」

 たしかにお義兄さんからのは黒だったけど……! あ、アルバスさんからのは白でした。

「絶対着ないからね……!」

「ふふ……」

 着ないもん!!
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