あの人と。

Haru.

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After Story

子供

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「さて、難しいお話はおしまいにして、ゆきちゃんのこっちでの色んなことを聞かせてちょうだい? 馴れ初めも聞きたいわ」

 母さんがにっこりとそう切り出し、僕とダグはこれまでの色んなことを母さんたちに聞かせた。


「まぁ! ならゆきちゃんは旦那様とほとんど毎日一緒に居られるのねぇ」

 母さんはダグが僕の専属護衛で基本側にいる、ということに強く反応した。母さんもラスみたいに恋愛小説大好きだもんね……

「うん。任務中は敬語になっちゃうけど、どっちのダグも僕にすっごく甘いよ」

「まぁ! ダグラスちゃんったら本当にゆきちゃんのことが大好きなのねぇ」

「人生で唯一の、愛しい人です」

 はぅ……すっごいキュンってした……もうキュンを通り越してズキュゥウン!! って感じだった……!

 僕もダグが大好き! 愛してる!!



「そういえば、こっちの世界って男の人しかいないのよねぇ? なら男の人でも子供を産めるのかしら?」

「ああ……それ用の魔法がある、とは聞いてるけど詳しいことは僕も知らないんだよね……」

 こっちに来てすぐにそれを聞かされてびっくりしたなぁ……ロイの微妙なフォローが懐かしいや。

「産めます。女性をなくして久しいこの世界では、そうして子孫を残してきたので」

「まぁ……ならゆきちゃんの子供もいつか見られるのかしら?」

 僕の、子供……

 僕の、子供かぁ……いや、ダグとの子供なら絶対可愛いし大事に大事にできる自信あるよ。でも、僕が産むのか……女の人しか妊娠しない世界で18年間育ったから、たとえ産めるとしても僕が子供を産むっていうことの想像がつかない。

「すまないね、それは無理だよ」

「神様?!」

「やぁ、幸仁。昨日ぶりだ」

 色々とあれこれ考えていると、突然神様が現れた。

「無理、ってどういうことです?」

「うぅん、なんて言ったらいいのかな……神子の血統を残すと権力が傾き過ぎてしまって大変なんだ。だから神子は子を残せないようになっている」

 ……なるほど。なら、僕が子供を産むことはないのか。

「あらそうなの? なら仕方ないわねぇ。孫は蒼ちゃんと翠ちゃんに頑張ってもらいましょうか」

「母さん……」

「まじかよ……」

 兄さん達から彼女とか好きな人とかの話聞いたことないけど……ああ、だからこそ今こんな微妙な顔してるのか。兄さん達もきっと誰かを好きになったことはないのだろう。それなのに孫を望まれたらちょっと戸惑うよね。

 でも、誰かを好きになったことなんてなかったのは僕も同じだよ。ダグが初めて好きになった人で、最後に好きになった人。ダグへの想いは留まることを知らず、日に日に増すばかり。

 だからきっと兄さん達も、素敵な人と巡り会えるよ。唯一だって思える人が、きっと現れる。
 ……まぁ、それがもしかしたら男の人で子供は無理、ってなる可能性もあるだろうけど。そうなったらそうなったで母さんは仕方ないって許してくれると思うよ。

 でもそういえば、ダグはどうなんだろう? もしかして、子供を望んでいたかもしれない……

「ダグは、僕との子供、欲しかった?」

「子供か……考えたこともなかったな。ユキとの子ならば可愛いだろうが、やはり俺にとっての1番はユキだからな。ユキさえいれば他はなんでもいい」

「そっか……」

 ダグに子供を作ってあげられないのは申し訳ないけれど、僕だけでいいって言われてすっごく嬉しい。僕も同じ気持ちだし、ね。

「でもそうね、ユキちゃん達ってすっごくラブラブだし、もし子供ができてもなんだか子供よりもお互いってなって子供がちょっと可哀想になっちゃうかもしれないわね?」

 なんておどけたように言った母さん。

 そんなことは……ある、かもしれない……流石に育児放棄は絶対しないし、もちろん大切に大切にするけれど、やっぱり僕にとっての1番はダグな訳で……もし子供にダグを取られたら自分の子でも嫉妬しちゃうだろうなぁ……

「そうですね、もしもユキが子供に取られでもしたら嫉妬してしまいますね」

 そう言い切ったダグ。同じ気持ちだなんて嬉しい!

「ふふ、2人はずーっと新婚さんみたいにラブラブなのでしょうね」

 照れるけど多分そうかも……僕ダグに甘えるのやめられないし、ダグも僕を甘やかしてくれるし……どんどんベッタリになっていってて、しかもそれが普通になってきてるからなぁ……ずっと新婚気分……いいじゃん!!

「ずっと新婚気分なぁ……2人は普段どんな感じなんだ? そんなにラブラブしてるのか?」

「……スイ様、お2人の普段のご様子はご覧にならない方がよろしいかと……レモンを丸齧りしてもまだまだ甘く感じますよ」

「そんなにかよ……」

 うわぁって顔しないでよ……

「だって僕ダグのこと大好きだもん」

「ユキ……俺もユキを愛している」

 ん~大好き!!

 これこれこの表情! 甘くって優しい微笑みが大好きなの!!

「おーい幸仁。俺等いるぞー」

 はっ!! キュンとしすぎて家族の前でダグに抱きついてグリグリすり寄ってた! なんて恥ずかしいことを!!

 ばっと離れたらダグがちょっと残念そうな顔をした。よ、夜にえっちするんでしょ……? そ、それまで待って!

「本当に仲良いんだな……まさか普段は膝抱っこで座ってたりとかな!」

「……」

 えっと。多分蒼兄さんは冗談のつもりで言ったんだと思うんですけども……8割がた本当なんだよなぁ……2人でいる時って基本僕はダグの上に座ってるし……最近は隣り合って座っててもいつのまにかダグの上に座ってることがある。ダグの膝に座ることが自然になりすぎてて移動させられても気付かないのです。

「ははは、膝抱っこくらいこの2人には普通のことだよ。なんならダグラスが幸仁を1日中抱え上げて移動している日だって珍しいことじゃないんだから」

「……そこまでか……」

 神様……! なんで暴露するのです……?! というかどれだけ僕達の暮らしを見てるんですか! 神様って暇なのかな……

「昼寝も基本的に幸仁がダグラスに抱えられて、って感じかな。ほかにも……」

「もう十分です。弟のそんな生活はもうお腹いっぱいです……」

「おやそうかい? 残念だ」

 兄さん2人がすっごいげっそりしてる。父さんも微妙そうな顔してるけど母さんはニコニコと楽しそう。

 僕も家族には暴露されたくなかったなぁ……! 事実だけどさぁ……! 
 それにしても他人の口から聞かされたら僕達の普段ってすっごいなぁ。まぁ今の生活をやめるつもりもさらさらないけどね!

「ゆきちゃん羨ましいわ。お母さんはもう歳だし、お父さんともゆきちゃんたちほど身長差があるわけじゃないからお膝抱っこはもうしてもらえないもの」

「母さん膝抱っこしてもらいたいの?」

「ちょっぴりね? ゆきちゃん達を見てたらなんだか付き合いたての頃を思い出してすこーし羨ましくなっちゃったの」

 そう言って照れたように笑う母さんは息子から見ても可愛かった。まだまだ父さんに恋をしているんだろうなぁって感じでほっこりした。

 母さんは確かに40代だけど、見た目がすっごく若くて兄さん達と歩いているとたまに姉に間違われるから、膝抱っこもまだいけるんじゃない、かな? 親のを見させられるとなるとうぅむ、とは思うけど、別に2人で楽しむ分には問題ないかと。

「……今度、な」

「本当?! でも私、すっごく重いわ……」

「美加子は軽いよ。付き合いたての頃から何も変わっていない」

雅仁まさひとさん……」

 あ、雅仁は父さんの名前です。

 この2人もすっごくラブラブだよね。普段そんなそぶりは見せないけど、ハッとした時に甘~くなるんだよ。父さんは結局母さんに甘いから。


 兄さん達は相変わらずげっそりしていた。

「リビングじゃないといいな……」

「そうだな……」
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