あの人と。

Haru.

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本編

115 そのままで

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 朝。ぱちっと突然目が覚めた。

 ……すっきりしてる。なんだか完全に治って微熱もないって感じがする。前は微熱あったのに。

「ん……起きたのか。気分はどうだ?」

「あ……起こしちゃった? ごめんね。なんだかすごくスッキリしてるの。まるで何もなかったみたいに」

 夜に僕が引きずり込んだダグが僕が起きた気配で起きてしまったみたい。

 ……しまった、寝顔を見そびれた。前のは結局寝顔ではなかったし……ちょっと悲しい。

「いや、もう時間もいいくらいだし大丈夫だ。どれ……たしかに熱はなさそうだな。本当に気分は良いのか?」

「うん。むしろいつもより元気?」

 なんか力がみなぎるというか何というか……今ならショパンの練習曲27曲全部一気に弾けそう。

「……まだ安静にしてろ。ぶり返すかもしれん」

「うーん、たぶん大丈夫だと思うけど……」

「それでも今日の移動は俺がユキを運ぶ。それでも何もなかったら明日はいつも通り動いて良い」

「わかった」

 ……とか言って明後日も無理はするなとか色々言われそうだけどなぁ。まぁいいか。別にダグに抱き上げられて移動するの嫌いじゃないし。ダメ人間感満載だけどもね。

「アーノルドさん達、来てる?」

「昨日の夕方着いたと聞いたが……ユキの様子で今日会うか決めると陛下が仰っていた」

「じゃあ会いたい。僕もう大丈夫だから、ね?」

 座って話すくらい全然問題ないと思うのです!

「……リディアがいいと言ったらな」

 ……それはかなり大変そうな条件ですね……許可、くれるかなぁ……










「いけません! ……と、言いたいところですが……ユキ様はお譲りにならないのでしょう? 遠くからいらしたリゼンブルの皆様を会わずに帰すなどなさりたくないのでしょう。仕方ありませんのでお会いすることは許します。が、移動はダグラスにすべて任せ、万が一少しでもお熱が出た場合はベッドへ連行します」

 ものすごーく渋々といった顔でそういったリディアに僕は思わず満面の笑みを浮かべてしまった。

「うん!! ありがとうリディア、大好き!!」

 ガバリと抱きつけば苦笑を浮かべつつポンポンと撫でてくれる。

「まったく……ユキ様にはかないません。本当は本日はゆっくりなさってほしい気持ちをわかっていてくださいね」

「うん。心配してくれてありがとう」

「……そろそろ引き剥がしていいか?」

 ……聞いといてすでに引き剥がしてますよ、ダグラスさん。

「嫉妬?」

「……悪いか」

「ううん、嬉しい!」

 だって僕たちバカップルだもーん。

 今度はダグに抱きついてぐりぐりと首筋に頭を擦り付けて甘える。ダグはぎゅーっと抱きしめつつ頭を撫でてくれる。たまらない。

「はぁ……イチャつけるのもお元気になられた証拠でしょうが、今は朝食をお召し上がりくださいませ。そのうちに私は陛下へ報告をして参りますので」

 僕の元気指数ってイチャつくかどうかで測れるのか。まぁ確かにしんどかったら甘えようにも身体動かせないしなぁ……思う存分イチャつけるなら元気って素晴らしい。

「うん! お腹すいた!」

「それはよろしゅうございました」

「さぁ、食べに行くか」

「ん!」

 ダグに抱き上げられてそのまま隣の部屋へ向かい、いつかのようにダグの上に座らされる。

「僕ここ?」

「いやか?」

「ううん、嫌じゃない」

 嫌なわけじゃないけど、僕自分で食べれるよ? 歩いちゃダメとは言われたけど手を動かすのダメとは言われてないのに。そんなに僕の身体弱そうに見える? いやまぁダグ達に比べたら相当弱いんでしょうけども。

「ならいいだろう。俺がユキに食べさせたいだけだ」

「楽しい?」

「ああ、もちろん」

 楽しいのか。ならいいかな。今日はダグに食べさせてもらお、う……

 ……熱々のリゾットだあ……いや、うん。確かに昨日二食抜いてるから胃に優しいものを、ってことなんだろうけど、これ食べさせてもらうの恥ずかしいんだよなぁ。

 昨日? あれは元から冷まされてたから、息を吹きかけて冷まされてあーんって流れじゃなかったから大丈夫だったんだよ。でも熱々だとダグは息を吹きかけて冷ますわけで……

 恥ずかしい!!

 結局僕はリゾットの味はまたしてもあまりわからなかった。かなしい。




 とりあえずご飯は食べ終え、ロイに報告に行っていたリディアが戻ってきて、アーノルドさん達はどっちにしろお昼前に来る予定だったからそのまま会うことに。

 ……僕が会わない、ってなってたら呼んでおいてそのまま帰す事になってたんだって。申し訳ないことにならなくてよかった……!

 アーノルドさん達とは、昼前に挨拶を済ませて、お昼はロイ達も交えてみんな一緒に、って予定らしい。その後にできればお茶もしておしまいなんだって。楽しみだよ。

 でも、とりあえず……

「お風呂入りたいなぁ……」

「いけません。病み上がりでお風呂など……」

「でもお義父さんとお義母さんに挨拶……」

 流石に昨日熱の影響とはいえ汗掻いた状態で会いたくないよ。スッキリ綺麗な状態で会いたい。

「……わかりました。一瞬で済ませましょう。その前に浴室を温めてまいりますので少々お待ちを」

「ごめんねリディア。ありがとう」

 ものすごく助かります!

「いえ、では私は準備してまいります」

 

「お義父さん、お義母さん……」

 さっきまで黙ってたダグがしみじみと呟いた。何もおかしいことはないのにどうしたのだろうか。

「? 間違ってないでしょ?」

「そう、だな……いや、なんだか照れるな」

「照れてるダグは可愛いけど……僕のこの世界の両親はロイ達だからダグにとっての義理の両親はロイとアルだね!」

「……複雑だ」

 国王と王妃が義父と義母だもんねー。なかなかいないと思うよ。

「レイが義兄でラスが義弟!!」

「やめてくれ……!」

「どうですか年下の義兄をもった感想は」

「……歳はかまわんが、王族が義理の家族というのが、な」

「やっぱり? 僕的にロイ達は王って感じより家族って感じだからいいけどダグからしたら複雑だよね」

「ああ……そういうことになることを失念していた」

「……慣れて?」

 だって僕と結婚するということはそういうことなのです。慣れてもらわなかったら困るわけです。

「……努力はする」

 まぁねぇ。確かに騎士としては王家に仕える立場だし、辺境伯家の次男としても、王族が義理の家族って真面目なダグからしたらどうしたら、って感じだよね。

 権力狙いの嫌な貴族にとったら願ってもないことだろうけどもダグはそんな人間じゃないから戸惑うよね。まぁそとそもダグがそんな人間だったら好きになってなかった気がするけども。

「ふふ、難しく考えなくて良いと思うよ?」

「そうか?」

「だってそのままのダグがいい人だから、ロイはダグを僕につけてくれたんだし、付き合うことも結婚することも認めてくれたんだから」

 まぁ色々と言われましたけどもね! でも親心みたいなやつだろうし、最終的には僕が幸せなら、って許してくれたもの。

「それもそうか。あまり気にしないでおこう」

「うんうん!」

 そのあとお風呂の用意が終わったリディアに本当に一瞬でお風呂に入れてもらった。湯冷めしないようにマッサージはなしだったけどスッキリしたから十分です!!
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