あの人と。

Haru.

文字の大きさ
上 下
83 / 396
本編

81 めん……大変なことに

しおりを挟む
 現在ものすごくめんど……大変なことになってます。

 部屋に来たヴォイド爺とロイとアルは今にも泣き出さんばかりの様子を見せたがちゃっかり僕の前に座った。3人へとリディアが気持ちを落ち着かせるお茶を出したら3人とも速攻で飲み干した。……熱くないのかな。


「ロイとアルはなんでここに……」

 お茶を飲んでいくらか落ち着いたであろう2人に問う。

「ユキが授業を休むと聞いてな。なかなかないことだからひどく体調を崩したのでは、と心配して見に来たんだ」

「……そう」

「そしたら……っ……ユキが喰われっ……」

「ああ……うん……」

「せめて否定の言葉が聞きたかった……!」

「だって……ねぇ?」

 間違ってないんだもん。否定したってねぇ……

「私らの可愛いユキが……!!」

「……ユキは俺のだ」

 ちょっとダグ、今の聞こえたよ?! ロイ達には聞こえてなかったみたいだけど僕には聞こえたよ?! 今護衛モードのはずなのに一瞬だけ明らかに恋人モードだったよね?! もうもう、予想してなかった言葉聞けて僕にやけちゃうよ!

「ユキ、なんでそんなに笑っているんだ」

「えー? 内緒!」

 僕はダグのものだもんなんて言ったらものすごいことになりそうだから言わない。僕の胸に留めておくのです。


「はぁ……ああぁユキが……こんなにはやく……」

 ……あ、今回が初めてだと思われてる? 前回の時は授業もなかったしロイ達にも会わなかったからなぁ……言わないでおこう。


 と思ったらアルが爆弾投下。

「ユキ、今回が初めてだよな……?」

「……え? あはは……」

 初めてはもう少し前です。お披露目の日です。なんて言えない。

「……まさか、嘘だろう……いつだ、いつなんだ?!」

「い、言わない……」

「怒らないから言いなさい!」

「な、なんで言わないとダメなのさ! 初体験報告なんておかしいでしょ?!」

 そうだよ、なんで言わないとダメなのさ! ロイ達は僕の親なんでしょ?! 初体験はいつです! なんて親に報告するバカどこにいるのさ!!
 それに成人もしてるんだから何も問題ないし!!!

「ぐっ……それもそうか……だが……うぅ、ユキが……」

「もう、僕別に嫌なことされたんでも無理やりされたわけでもないからそっとしといてよ」

「うぅ……」

 目の前の3人の落ち込みようはものすごい。もうズーンっていう文字見えるもん。

 娘の初体験はまだだと思っていたけど実はすでに済んでいたことを聞かされた父親の心境、かな……僕男だけど。

「もう……そんなに落ち込むことじゃないでしょ!

それより昨日僕みんなにお土産買ったんだよ。受け取ってくれる?」

「何?! ユキからのお土産?!」

 3人が一気に嬉しそうな顔になった。

「そうだよ、ちゃんと僕が選んだんだから! ダグ、出してくれる?」

「かしこまりました」

 ダグに頼んで魔法収納から3人へのお土産を出してもらう。万が一にも出しておいて割れてしまったら大変だから魔法収納にずっと入れといてもらってたんだ。魔法収納の中は時間が止まってるから何も動かなくて安心なの。

「はい、こっちがロイとアルに。こっちはヴォイド爺に」

「あ、開けていいのか?」

「もちろん!」

 ロイとアルは2人がかりで、ヴォイド爺は1人でドキドキと言った様子でそれでいて丁寧に包装を剥がしていき、それぞれの箱をゆっくり開いた。

「ロイとアルにはペアのグラス。ヴォイド爺にはガラスペンだよ。……気に入らなかった?」

 箱を開けた体勢のまま固まった3人に気に入らなかったのかと不安になる。

「そんなことはない! 綺麗なグラスだ!!」

「そうだよ、すごく気に入った!!」

「私もじゃ! 使うのがもったいないぐらいじゃ!」

 そう言って3人とも嬉しそうに笑ってくれた。よかった、どうやら気に入ってくれたみたいだ。

「ふふ、よかった。でもヴォイド爺、ちゃんと使ってね?」

「ああ、ちゃんと大切に使うさ」

「うん、僕も使ってくれた方が嬉しい。でもよかった、3人とも気に入ってくれて。

あ、そうだ。リディア、お財布どこに置いてある?」

「こちらにございますよ」

「ん、ありがとう。ロイ、これって国のお金じゃない? 残った分返すね」

 昨日リディアから渡されたお財布はきっと国の予算から出されたやつだと思うの。もう僕しばらく外行かないだろうし、使い道が無いから返しておこう。かなりの額入ってるから持ってるのも怖いし。

「ん? たしかに予算から出しているが……ユキ、全然使ってないじゃないか。何も買わなんだのか?」

「買ったよ? 楽譜とお土産」

「いやいやいや、もっと欲しいものはなかったのか? なんでも買えるようにと用意したのに……もっとユキの欲しいものを買ってよかったのだぞ?」

「んー、僕あまり欲しいものとかってないし、買おうと思ってた物はダグが買ってくれたから……」

 今も左手の薬指に嵌ってる指輪を見つめそっと撫でる。これ以外にも髪飾りとガラスペンまで買ってくれたからなぁ……

「む? 指輪か?」

「ふふ、そう。ダグとお揃いなの。お互いの瞳の色を着けてるんだよ」

「ほぉ……なぜ薬指なんだ?」

「へ?! えっと……元の世界だと、ブレスレットじゃなくて指輪なの。恋人とか夫婦とかが着けるの……左手の薬指にお揃いの指輪をはめるんだよ」

 独占欲云々は省いて説明! そこまでは言わなくてもいいだろうし……

「そうなのか? ふむ……いいな。アル、私達も揃いの指輪をつけようか」

「は?! い、いや俺たちブレスレット着けてるし……!」

「いいじゃないか、指輪が増えても。それとも私からの指輪は受け取りたくないか?」

「そ、そうじゃないけど……」

「なら受け取ってくれるな?」

「……うん」

 ……わぁー、目の前でいちゃいちゃしだしたぁ……あまーい。




 ……はっ!! これってもしかして僕とダグのイチャつきを見たリディアの気分なのでは?!! ごめんねリディアいつもこんな気持ちだったのか……!

 ……まてよ、僕とダグってもっとデロデロに甘いような……ってことはリディアはもっとダメージを……? うわ、本当にごめんリディア。でもダグとイチャつくのはやめられません! ごめんね!!


「……陛下、指輪をお作りになるのは良いと思いますがこれからご公務なのでは?」

「む、そうだな。ユキ、では私達はそろそろ戻る。グラスも有り難く使わせてもらうよ。金の方は一応預かっておくが欲しいものがあればいつでも言うのだぞ?
あー……ダグラスとその……うん、まぁいいがほどほどに、な」

「……うん。お仕事頑張ってね……」

 なにこれものすごく恥ずかしい。いや、もう許して(?)もらえたのはいいけども……そもそも許しを貰うことでもないし別に僕が求めすぎてこうなってるんじゃないからね?!! ダグのばかぁ!!!

 ロイとアルは出て行ったけれどヴォイド爺は残った。

「ユキや、本当に無理やりではなかったんじゃな?」

「うん、それだけは違うよ。ダグはそんなことしない。ちゃんと僕の気持ちを聞いて、待っててくれたから」

「そうか……なら私ももうなにも言わんが……せめて自力で歩ける程度にはしておいた方がよいと思うぞ……? 
私もまだ仕事があるからもう行くの。来週の授業は今日やる予定じゃったことをそのまま回すから用意はその通りにな。ガラスペン、ありがたく使わせて貰うよ」

「……うん、ヴォイド爺もお仕事頑張って」

 ……だから僕のせいじゃないのに……! とか言ったらダグは僕が煽るのが悪いとか言うんでしょうけど!!
 ……ねぇそれって僕のせい? 僕のせいなの?


 うう、それでもダグとするのが嫌に感じない僕はバカなのでしょうか……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~

kurimomo
BL
俺がゲイだと自覚したのは、高校生の時だった。中学生までは女性と付き合っていたのだが、高校生になると、「なんか違うな」と感じ始めた。ネットで調べた結果、自分がいわゆるゲイなのではないかとの結論に至った。同級生や友人のことを好きになるも、それを伝える勇気が出なかった。 そうこうしているうちに、俺にはカミングアウトをする勇気がなく、こうして三十歳までゲイであることを隠しながら独身のままである。周りからはなぜ結婚しないのかと聞かれるが、その追及を気持ちを押し殺しながら躱していく日々。俺は幸せになれるのだろうか………。 そんな日々の中、襲われている女性を助けようとして、腹部を刺されてしまった。そして、同性婚が認められる、そんな幸せな世界への転生を祈り静かに息を引き取った。 気が付くと、病弱だが高スペックな身体、アース・ジーマルの体に転生した。病弱が理由で思うような生活は送れなかった。しかし、それには理由があって………。 それから、偶然一人の少年の出会った。一目見た瞬間から恋に落ちてしまった。その少年は、この国王子でそして、俺は側近になることができて………。 魔法と剣、そして貴族院など王道ファンタジーの中にBL要素を詰め込んだ作品となっております。R指定は本当の最後に書く予定なので、純粋にファンタジーの世界のBL恋愛(両片思い)を楽しみたい方向けの作品となっております。この様な作品でよければ、少しだけでも目を通していただければ幸いです。 GW明けからは、週末に投稿予定です。よろしくお願いいたします。

宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話 アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。 無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。 ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。 朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。 連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。 ※6/20追記。 少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。 今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。 1話目はちょっと暗めですが………。 宜しかったらお付き合い下さいませ。 多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。 ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

愛されなかった俺の転生先は激重執着ヤンデレ兄達のもと

糖 溺病
BL
目が覚めると、そこは異世界。 前世で何度も夢に見た異世界生活、今度こそエンジョイしてみせる!ってあれ?なんか俺、転生早々監禁されてね!? 「俺は異世界でエンジョイライフを送るんだぁー!」 激重執着ヤンデレ兄達にトロトロのベタベタに溺愛されるファンタジー物語。 注※微エロ、エロエロ ・初めはそんなエロくないです。 ・初心者注意 ・ちょいちょい細かな訂正入ります。

ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが

BL
 俺には大好きな兄がいる。3つ年上の高校生の兄。美人で優しいけどおっちょこちょいな可愛い兄だ。  ある日、そんな兄に話題のゲームを進めるとありえない事が起こった。 「あれ?ここってまさか……ゲームの中!?」  モンスターが闊歩する森の中で出会った警備隊に保護されたが、そいつは兄を狙っていたようで………?  重度のブラコン弟が兄を守ろうとしたり、壊れたブラコンの兄が一線越えちゃったりします。高確率でえろです。 ※近親相姦です。バッチリ血の繋がった兄弟です。 ※第三者×兄(弟)描写があります。 ※ヤンデレの闇属性でビッチです。 ※兄の方が優位です。 ※男性向けの表現を含みます。 ※左右非固定なのでコロコロ変わります。固定厨の方は推奨しません。

転生したらいつの間にかフェンリルになってた〜しかも美醜逆転だったみたいだけど俺には全く関係ない〜

春色悠
BL
 俺、人間だった筈だけなんだけどなぁ………。ルイスは自分の腹に顔を埋めて眠る主を見ながら考える。ルイスの種族は今、フェンリルであった。  人間として転生したはずが、いつの間にかフェンリルになってしまったルイス。  その後なんやかんやで、ラインハルトと呼ばれる人間に拾われ、暮らしていくうちにフェンリルも悪くないなと思い始めた。  そんな時、この世界の価値観と自分の価値観がズレている事に気づく。  最終的に人間に戻ります。同性婚や男性妊娠も出来る世界ですが、基本的にR展開は無い予定です。  美醜逆転+髪の毛と瞳の色で美醜が決まる世界です。

召喚された聖女の兄は、どうやら只者ではないらしい

荷稲 まこと
BL
国にほど近い魔境に現れた魔王に対抗するため、国に古くから伝わる"聖女召喚の儀"が行われた。 聖女の召喚は無事成功した--が、聖女の兄だと言う男も一緒に召喚されてしまった。 しかもその男、大事な妹だけを戦場に送る訳にはいかない、自分も同行するから鍛えてくれ、などと言い出した。 戦いの経験があるのかと問えば、喧嘩を少々したことがある程度だと言う。 危険だと止めても断固として聞かない。 仕方がないので過酷な訓練を受けさせて、自ら諦めるように仕向けることにした。 その憎まれ役に選ばれたのは、王国騎士団第3隊、通称『対魔物隊』隊長レオナルド・ランテ。 レオナルドは不承不承ながら、どうせすぐに音を上げると隊員と同じ訓練を課すが、予想外にその男は食いついてくる。 しかもレオナルドはその男にどんどん調子を狂わされていきーーー? 喧嘩無敗の元裏番長(24) × 超鈍感初心嫌われ?隊長(27) 初投稿です!温かい目で見守ってやってください。 Bたちは初めからLし始めていますが、くっつくまでかなり長いです。 物語の都合上、NL表現を含みます。 脇カプもいますが匂わせる程度です。 2/19追記 完結まで書き終わっているので毎日コンスタントに投稿していこうと思っています。 思ってたよりずっと多くの人に読んでもらえていて嬉しいです!引き続きどうぞよろしくお願いいたします。 2/25 追記 誤字報告ありがとうございました!承認不要とのことで、この場でお礼申し上げます。 ちょっと目を離した隙にエラいことになっててひっくり返りました。大感謝!

明日もいい日でありますように。~異世界で新しい家族ができました~

葉山 登木
BL
『明日もいい日でありますように。~異世界で新しい家族ができました~』 書籍化することが決定致しました! アース・スター ルナ様より、今秋2024年10月1日(火)に発売予定です。 Webで更新している内容に手を加え、書き下ろしにユイトの母親視点のお話を収録しております。 これも、作品を応援してくれている皆様のおかげです。 更新頻度はまた下がっていて申し訳ないのですが、ユイトたちの物語を書き切るまでお付き合い頂ければ幸いです。 これからもどうぞ、よろしくお願い致します。  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 祖母と母が亡くなり、別居中の父に引き取られた幼い三兄弟。 暴力に怯えながら暮らす毎日に疲れ果てた頃、アパートが土砂に飲み込まれ…。 目を覚ませばそこは日本ではなく剣や魔法が溢れる異世界で…!? 強面だけど優しい冒険者のトーマスに引き取られ、三兄弟は村の人や冒険者たちに見守られながらたくさんの愛情を受け成長していきます。 主人公の長男ユイト(14)に、しっかりしてきた次男ハルト(5)と甘えん坊の三男ユウマ(3)の、のんびり・ほのぼのな日常を紡いでいけるお話を考えています。 ※ボーイズラブ・ガールズラブ要素を含める展開は98話からです。 苦手な方はご注意ください。

《本編 完結 続編開始》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

処理中です...