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本編
58 相性
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「わぁっ!!」
「おっと……大丈夫か?」
……何もないところで足を滑らせました。雨が降ったばかりで地面が濡れていたわけでもないよ。運動神経皆無なだけだよ。
ダグが危なげなく支えてくれて無様に転げることは回避できてよかった。
「大丈夫、ありがとう」
「そうか、よかった。それにしてもユキはよく足を滑らせたり躓いたりするな?」
「う……」
そうなんだよ、今回が初めてじゃないんだよ。ヴィルヘルムに来てからも既に片手じゃ足りないくらい転びかけて、その度にリディアとかダグに支えてもらってる。
「靴が足に合っていないのか?」
「……違うよ、僕の運動神経が皆無なだけだよ。靴はどれも履き心地すごくよくて疲れにくいよ」
「……そうか。じゃあ剣術は難しいかもな……短剣術くらいは、と思っていたが刃物を持っているときに転んでも危ないしやめておこう」
「うん、どこかしら切る光景が目に浮かぶよ……」
剣を使えたらかなり強みになるとは思うけど、それで怪我してたら元も子もない。下手したら周りも巻き込むから剣術は諦めよう。
「そうなると危険だから魔法だけにしておこう。ユキは魔力が随分と高いようだし、下手に剣を使うより魔法に特化した方がいいだろう」
「え? 僕の魔力わかるの?」
歴代神子は魔力が高かったとは聞いてたけど僕も高いとは聞いてないよ? 調べたりとかもしてないし。
「わかるぞ。魔力が高い者が制御をしていないと、身体から魔力が漏れ出るものなんだ。ユキは竜人の第3王子の事件があるまではうっすらと漏れ出ていたのが、事件が終わってからその量がグンと増えた。ここまでの魔力は見たことがない。魔力量が低から中くらいのものならば威圧を受けるだろう」
「えっ?! じゃあ僕無意識のうちに周りを威圧してたの? い、いそいで魔力制御覚えないと……!」
第3王子の威圧で騎士さんたちが倒れていったのを思い出して焦る。
「大丈夫だ。城の中は基本的に魔力が高い者ばかりだからな。そうそう魔力による威圧を受ける者はいない」
「そう、なの……? よかった……」
「ああ、だから城の中では問題はないが……そうだな、外に行けば魔力が低い者などそこら中にいるし、外に出るにはその問題もあるな」
「そっか、じゃあ護身魔法の前に制御もしっかり覚えないとね……」
「焦る必要はない。ゆっくり覚えよう」
「……そうだね、焦ってたら失敗しちゃうもんね」
焦りは禁物! お城にいるならあまり威圧は気にしなくていいみたいだし、外に今すぐ行きたいわけでもないからゆっくり覚えていこう。
「俺としてももう少しユキの魔力を感じていたいからな」
「ん? どうして?」
威圧は受けないにしても何かしらの違和感とかありそうだけど……ちがうの?
「いや、どうやらユキと俺の魔力は相性がいいみたいでな……今もユキから漏れ出た魔力が俺を包み込むようで随分と心地いい」
「へ?! 魔力に相性とかあるの?」
「あるぞ。魔力の相性の良さに感じる心地よさは比例する。それでも威圧が効かないほど相性がいい魔力はそうそうないけどな」
「……てことは僕たちは特別?」
「そういうことだな。まぁ俺はたとえ魔力の相性が良くなくともユキのことを好きになっていたさ。魔力の相性に気付く前から惹かれていたからな」
「そっか……そっかぁ……ふふふ、嬉しい!!」
たまらずダグへ飛びついた。ダグはもちろんそんな僕を支えて抱きしめ返してくれる。
大好きな人と魔力の相性がいいなんて! それに、たとえそれがなくても僕を好きになってくれていただなんて嬉しすぎる!! いつから好きでいてくれてたのか気になるけど、今好きでいてくれるならもうそれだけでいいや!
「はは、くすぐったいぞ、ユキ」
編み込みを崩さないように逆サイドの頭をダグの首にすりすりと擦り付けるとくすぐったいと笑われた。
仕方なく頭を擦り付けるのはやめてぐいっと首をのばして軽くキスをすると、一瞬驚いた表情を見せてからふっと微笑んだ大好きな人。
「大好き、ダグ」
「ああ、俺も愛している」
ダグからも軽くキスをされて2人でくすくすと笑い合う。幸せでたまらない。ダグも同じように思ってくれてると嬉しいな、なんて。
「そういえば僕はダグの魔力わからないよ?」
相性がいいのかどうか僕にはわからない。
「俺が魔力を制御しているのもあるが、1番はユキが魔力に慣れていないからだろう。元の世界には魔力は存在しなかったのだろう? だからその存在をまだ感知できていないんだ。ユキが魔法を習い始めればわかるようになるさ」
「そうなの? 僕も早くダグの魔力感じたいなぁ……」
「……手っ取り早く魔力を感知する方法もないことはないが、な」
「え? どうやるの??」
知りたい知りたい! そしてやりたい!!
「……濃い体液の粘膜接触だ。因みに唾液だと初めての魔力完治には薄い」
濃い体液……それって……!!
ボンッと一気に顔が赤くなるのがわかった。
「あ、う……た、たい、えきって……」
「おそらくユキの予想は間違ってないな。まぁ血液って手もあるが」
「血?! そのために怪我するなんてだめだめ!」
「じゃあ違う方の体液、だな」
ダグがニヤリって……! ニヤリって笑った……!!
その笑い方なんかやらしいです!! 普段のダグからは考えられないような表情だよ……!!!
「ま、まだ無理、です……」
僕今湯気出てるんじゃないかな。ふしゅーって。それくらい恥ずかしい。
「はは、わかってる。ちょっとからかっただけだ」
「い、意地悪……!」
「すまんな、嫌いになったか?」
そ、その質問はずるい……! 嫌いになるわけないのに!!
「嫌いになんてならないもん……」
「そうか、俺もだ」
「……バカ」
嬉しそうに笑うダグに照れてそんな風にしか言えない僕をダグもわかってるみたいで、優しく頭を撫でられる。
「ユキは可愛いな。
……さて、そろそろ喉も渇いただろう。お茶を飲みに戻ろう」
「……ん」
確かに喉が渇いてきたから手を引かれるまま大人しくついていく。
「どこで飲む?」
「……部屋」
「そうだな、2人きりになれるしな」
「っ……!! そ、そんなつもりじゃ……」
「違うのか?」
「あ、う……違わ、ないです……」
またリディアが2人きりにしてくれるかな、なんて考えたのはバレバレでした……
い、いいじゃんか! 2人きりの時間がなくて悶々としてたんだから2人きりになれるなんてご褒美なんです!!
「……俺も、2人きりになりたい」
耳元で囁かれてゾクリとした。
バッと耳を抑えてダグを見れば楽しそうに笑ってた。
絶対わざとだ! わざと耳元で言ったんだ!! 僕の反応見て楽しんでる!!
それにしても今日は随分とダグの表情が変わるなぁ。いろんな表情を見れるのは嬉しい。休みの日だから? それとも……僕といるから、とか……そうだったら嬉しいんだけど。
「おっと……大丈夫か?」
……何もないところで足を滑らせました。雨が降ったばかりで地面が濡れていたわけでもないよ。運動神経皆無なだけだよ。
ダグが危なげなく支えてくれて無様に転げることは回避できてよかった。
「大丈夫、ありがとう」
「そうか、よかった。それにしてもユキはよく足を滑らせたり躓いたりするな?」
「う……」
そうなんだよ、今回が初めてじゃないんだよ。ヴィルヘルムに来てからも既に片手じゃ足りないくらい転びかけて、その度にリディアとかダグに支えてもらってる。
「靴が足に合っていないのか?」
「……違うよ、僕の運動神経が皆無なだけだよ。靴はどれも履き心地すごくよくて疲れにくいよ」
「……そうか。じゃあ剣術は難しいかもな……短剣術くらいは、と思っていたが刃物を持っているときに転んでも危ないしやめておこう」
「うん、どこかしら切る光景が目に浮かぶよ……」
剣を使えたらかなり強みになるとは思うけど、それで怪我してたら元も子もない。下手したら周りも巻き込むから剣術は諦めよう。
「そうなると危険だから魔法だけにしておこう。ユキは魔力が随分と高いようだし、下手に剣を使うより魔法に特化した方がいいだろう」
「え? 僕の魔力わかるの?」
歴代神子は魔力が高かったとは聞いてたけど僕も高いとは聞いてないよ? 調べたりとかもしてないし。
「わかるぞ。魔力が高い者が制御をしていないと、身体から魔力が漏れ出るものなんだ。ユキは竜人の第3王子の事件があるまではうっすらと漏れ出ていたのが、事件が終わってからその量がグンと増えた。ここまでの魔力は見たことがない。魔力量が低から中くらいのものならば威圧を受けるだろう」
「えっ?! じゃあ僕無意識のうちに周りを威圧してたの? い、いそいで魔力制御覚えないと……!」
第3王子の威圧で騎士さんたちが倒れていったのを思い出して焦る。
「大丈夫だ。城の中は基本的に魔力が高い者ばかりだからな。そうそう魔力による威圧を受ける者はいない」
「そう、なの……? よかった……」
「ああ、だから城の中では問題はないが……そうだな、外に行けば魔力が低い者などそこら中にいるし、外に出るにはその問題もあるな」
「そっか、じゃあ護身魔法の前に制御もしっかり覚えないとね……」
「焦る必要はない。ゆっくり覚えよう」
「……そうだね、焦ってたら失敗しちゃうもんね」
焦りは禁物! お城にいるならあまり威圧は気にしなくていいみたいだし、外に今すぐ行きたいわけでもないからゆっくり覚えていこう。
「俺としてももう少しユキの魔力を感じていたいからな」
「ん? どうして?」
威圧は受けないにしても何かしらの違和感とかありそうだけど……ちがうの?
「いや、どうやらユキと俺の魔力は相性がいいみたいでな……今もユキから漏れ出た魔力が俺を包み込むようで随分と心地いい」
「へ?! 魔力に相性とかあるの?」
「あるぞ。魔力の相性の良さに感じる心地よさは比例する。それでも威圧が効かないほど相性がいい魔力はそうそうないけどな」
「……てことは僕たちは特別?」
「そういうことだな。まぁ俺はたとえ魔力の相性が良くなくともユキのことを好きになっていたさ。魔力の相性に気付く前から惹かれていたからな」
「そっか……そっかぁ……ふふふ、嬉しい!!」
たまらずダグへ飛びついた。ダグはもちろんそんな僕を支えて抱きしめ返してくれる。
大好きな人と魔力の相性がいいなんて! それに、たとえそれがなくても僕を好きになってくれていただなんて嬉しすぎる!! いつから好きでいてくれてたのか気になるけど、今好きでいてくれるならもうそれだけでいいや!
「はは、くすぐったいぞ、ユキ」
編み込みを崩さないように逆サイドの頭をダグの首にすりすりと擦り付けるとくすぐったいと笑われた。
仕方なく頭を擦り付けるのはやめてぐいっと首をのばして軽くキスをすると、一瞬驚いた表情を見せてからふっと微笑んだ大好きな人。
「大好き、ダグ」
「ああ、俺も愛している」
ダグからも軽くキスをされて2人でくすくすと笑い合う。幸せでたまらない。ダグも同じように思ってくれてると嬉しいな、なんて。
「そういえば僕はダグの魔力わからないよ?」
相性がいいのかどうか僕にはわからない。
「俺が魔力を制御しているのもあるが、1番はユキが魔力に慣れていないからだろう。元の世界には魔力は存在しなかったのだろう? だからその存在をまだ感知できていないんだ。ユキが魔法を習い始めればわかるようになるさ」
「そうなの? 僕も早くダグの魔力感じたいなぁ……」
「……手っ取り早く魔力を感知する方法もないことはないが、な」
「え? どうやるの??」
知りたい知りたい! そしてやりたい!!
「……濃い体液の粘膜接触だ。因みに唾液だと初めての魔力完治には薄い」
濃い体液……それって……!!
ボンッと一気に顔が赤くなるのがわかった。
「あ、う……た、たい、えきって……」
「おそらくユキの予想は間違ってないな。まぁ血液って手もあるが」
「血?! そのために怪我するなんてだめだめ!」
「じゃあ違う方の体液、だな」
ダグがニヤリって……! ニヤリって笑った……!!
その笑い方なんかやらしいです!! 普段のダグからは考えられないような表情だよ……!!!
「ま、まだ無理、です……」
僕今湯気出てるんじゃないかな。ふしゅーって。それくらい恥ずかしい。
「はは、わかってる。ちょっとからかっただけだ」
「い、意地悪……!」
「すまんな、嫌いになったか?」
そ、その質問はずるい……! 嫌いになるわけないのに!!
「嫌いになんてならないもん……」
「そうか、俺もだ」
「……バカ」
嬉しそうに笑うダグに照れてそんな風にしか言えない僕をダグもわかってるみたいで、優しく頭を撫でられる。
「ユキは可愛いな。
……さて、そろそろ喉も渇いただろう。お茶を飲みに戻ろう」
「……ん」
確かに喉が渇いてきたから手を引かれるまま大人しくついていく。
「どこで飲む?」
「……部屋」
「そうだな、2人きりになれるしな」
「っ……!! そ、そんなつもりじゃ……」
「違うのか?」
「あ、う……違わ、ないです……」
またリディアが2人きりにしてくれるかな、なんて考えたのはバレバレでした……
い、いいじゃんか! 2人きりの時間がなくて悶々としてたんだから2人きりになれるなんてご褒美なんです!!
「……俺も、2人きりになりたい」
耳元で囁かれてゾクリとした。
バッと耳を抑えてダグを見れば楽しそうに笑ってた。
絶対わざとだ! わざと耳元で言ったんだ!! 僕の反応見て楽しんでる!!
それにしても今日は随分とダグの表情が変わるなぁ。いろんな表情を見れるのは嬉しい。休みの日だから? それとも……僕といるから、とか……そうだったら嬉しいんだけど。
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