あの人と。

Haru.

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本編

56 心地いい

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「ユキ、おはよう」

「お、おはよう……!」

 デートですよ!!!! 

 今日のダグは騎士の制服じゃなくて私服……! いつもと雰囲気変わって破壊力が抜群です!!

「今日は髪の毛いじってるんだな」

「う、うん、リディアがやってくれた」

 そうなんです。今日はデートだからってリディアが気合入れてサイドの髪を編み込んで髪留めで留めてくれたの。短いからまだ無理だと思ってたけど編み込みって髪の毛短くても出来るんだね、知らなかったよ。

「そうか、よく似合う」

「あ、ありがとう……」

 ほ、褒めてくれた……! リディアありがと~っ!!


「ユキ様、ダグラス、座ってはいかがです?」

「う、うんそうだね。ダグ、座ろ?」

「ああ、そうだな」

 突っ立ったままだった僕達に呆れたようだけどどこか微笑ましそうに言ったリディアの言葉に、並んでカウチに座る。

 うぅ、空気が甘いよぅ……の、望んだことだけどいざこの雰囲気になると照れる……
 
「ユキ様、本日の昼食はどちらでお召し上がりになられます?」

「あ、えっと、天気がいいから庭で食べたい。ダグ、それでもいい……?」

「ああ、もちろんだ」

「では本日の昼食はお庭へお2人分ご用意させていただきますね。

さて、では私はお庭へテーブル等をご用意して参りましょう。ほら、貴方達も本日は扉の外の警護だけで構わないでしょう」

「えっ、リディア?!」

「ああ、大丈夫ですよ、すぐに戻るなんて無粋なことは致しませんから」

「ちょ、まっ……」

 えぇと、リディアが今日の護衛と一緒に出て行ってしまった。ものすごいいい笑顔で。あれだよ、ドSモード発動してるときと同じ笑顔だったよ。

 ……つまりはダグと2人きり? いや護衛は扉の外にいるんだろうけども、部屋の中には2人きり、と……


「……リディアも気が利くな。ほらユキ、おいで」

 あ、あぅ、隣に座ってるダグが僕に向かって腕を広げてますよ……自分の膝をポンポンしながらってことはそれってそこに座れって意味ですよね……!

 いや確かにあの夜もダグの上に座ってたけども……! あれは飛びついた勢いでそのまま、って感じだったし……その、勢いがなくちゃ恥ずかしくて行けないのですが!

 ん? って顔してる!! う、うぅ、これ行かないとダメなやつですよね……

 でもやっぱり恥ずかしくて視線を彷徨わせながらじりじりとにじり寄っていくと、しびれを切らしたのかダグにグイッと引っ張られてそのまま膝に乗せられた。

「わぁっ! ……もう、びっくりするじゃんか」

「はは、なかなか来ないユキが悪い」

「だって恥ずかしい、し……」

「恥ずかしがることないだろう? 俺たちしかいないんだから」

「な、なんか恥ずかしいの!」

「はは、ユキは可愛いな」

「可愛くないもん……」

 なんて返したけどダグに可愛いって言われるのが嬉しいって思う自分がいる。
 男としてどうなんだろう、って思うけど、この世界じゃ男が可愛くても別におかしくないから、ダグのこれはバカにしてるとかじゃなくて普通に褒めてくれてる、ってことなわけで。恋人に褒められて嬉しくない人間なんていないと思う。


 ダグの顔を見るのが恥ずかしくて、ぽすりとダグの胸に顔を埋めると旋毛にちゅってキスされた感触が1つ。

「ユキ」

 ものすごく甘い声で呼ばれて、ゆっくり顔を上げると大好きな微笑みを浮かべたダグがいた。

 そのままダグは額に瞼に頬にと僕の顔のいたるところにキスを落として一度顔を離し、じ、と僕と目を合わせると、ゆっくり近付いてきて────



 あ、キス、される────



 最初は軽く触れるだけのキス。

 そんな優しいキスも段々と深くなっていき、貪られるようなキスに変わっていく。

「ん……はっ、ぅ…………ふぁ…………」

 息も奪われるようなキスにただただ翻弄される。

 くちゅくちゅと響く水音と唇の隙間から漏れ出た僕の小さな喘ぎが恥ずかしくてたまらなくて、頭がぼうっとしていく。



 だけど、僕の口を犯すダグの舌がどこか心地よくて────



 その心地良さをもっと感じたくて、いつのまにか僕からもダグへ舌を絡めていた。

 そうするとよりいっそうキスの激しさは増し、飲みきれなかった唾が隙間からこぼれ顎を伝っていくのがわかった。

 だけどそれすら気にしている余裕なんてなくて、ひたすらダグにしがみついて必死にその舌に応えた。


「んぅっ、ぅ…………ふぅ……ぁ、はっ……」





 唇が離れてもまだ頭はぼうっとし、舌は痺れている。

 とっくに力の入らなくなった身体はもうダグに預けたまま。乱れた呼吸はなかなか整わない。



「っは、はぁ……はっ、ふ……は……ぁ……」

 やっと呼吸が落ち着いてきた頃、ダグが1つ深く息を吐いた。

「どう、したの……?」

「……いや、思った以上に抑えが効かなくて、な。すまない、また無理をさせたな」

 僕をキツく抱きしめながらそう言ったダグの声は、欲を押さえ込んだような、そんな響きを孕んでいた。

「……ううん、大丈夫だよ。その……ダグとのキス、好き、だから……」

 これは本心。キスがあんなに心地いいなんて知らなかった。ダグに、教えられてしまった。

「っ……そんなことを言って……俺がどれだけ抑えているかわかっているのか?」

「う……その……」

 ダグが我慢してるのは分かってる。告白した夜だって抑えてるって言ってたし、今だって目と声が欲を孕んでる。いつも冷静なダグの目がギラギラと光っていて、その目と目が合った瞬間、腰に何か重いものがズクリと走った。

 僕を傷つけないようにって必死に抑えてくれてるんだろうな……

「はぁ……頼むから、あまり煽らないでくれ……」

 コツリと額を合わせたダグはどこか切なげで、胸がきゅうと鳴った。

「煽ったつもりはないんだけど……」

「十分煽られてる……」

「ご、ごめんなさい? えと、その、嫌なわけじゃ、ない、けど……まだちょっと怖いかな、って……」

「ああ、わかっている。初めてだろう? 怖くて当たり前だ。ユキに辛い思いはさせたくないからいくらでも待つさ。……なるべく早いとありがたいが」

 最後の一言を気まずそうに言ったダグに少し笑ってしまった。

「ふふ、うん。待ってて。

……ところで、さっきから何か当たっているのですが……」

 ダグの膝の上にまたがった状態で座った僕のお尻に何か硬いものが……いや、何かなんて聞かなくてもわかるけども……

「……言うな。その内収まるから……暫くこのままでいてくれ」

「う、うん、わかった……」


 手でする、って言うのが思い浮かんだけど、爽やかな日曜の午前からそれはどうかと思うので大人しくダグに抱きしめられておきます。……よ、夜ならまだしも、ね……?
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