あの人と。

Haru.

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本編

46 兵舎

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 お茶も飲み終わって漸くリディアの許しが出た。

 やっと連れて行ってもらえる……!!


 案内してくれるリディアに着いて行きながら疑問に思ったことを色々と聞いてみる。……部屋を出たところで目に入った崩れた壁は気にしないことにした。

「ね、ダグはどこにいるの??」

「ダグラスは城の敷地内にある、兵舎の自室にいるはずですよ。騎士のほとんどがそこで生活しています」

「ほとんどってことは違う人もいるの?」

「ええ。妻帯者や希望者ですね。それでも手続きが色々と面倒なのでほとんどは兵舎で暮らしていますよ」

 お城から出るってなれば確かに機密だとかで色々と面倒なことありそうだもんね。兵舎で暮らせるなら確かに兵舎のが楽そう。

「へぇ~。兵舎ってどんな感じなの? みんな1人部屋?」

「確かに兵舎はかなり大きめに作られていますが、隊員数が多いので流石にそこまでの部屋数はありません。基本的に新入隊員が4人部屋、一般騎士が2人部屋、上官になれば1人部屋ですね」

「2人部屋とかで揉め事起きたらどうするの?」

「ああ、部屋はお互いが納得した上で申請すれば替えることができるんですよ」

 なるほど。それなら友達とかに協力して貰えば替われそうだね。
 あと恋人ができても安心だ。
 ……ほら、騎士さんたちは年齢的にもまだまだ色んな意味で元気だろうし。自分の恋人がほかの男の人と同じ部屋とか気が気じゃないって人もいそうだし。

「それなら揉めなくてすむね」

「はい……と、着きましたよ。ここが兵舎です」

 お、話してたらいつの間にか兵舎に着いてたみたいだ。

 わぁ、本当に大きい建物。4階建てで、小中の校舎よりも断然大きい。僕の高校はいくつか校舎あったから比べにくいかな……

「本当に大きいね! 勝手に入っても大丈夫?」

「もちろん、ユキ様ですから何も問題はございませんよ」

 わぁ、神子特権かぁ。神子だからで押し通すのはどうかと思うけどこれくらいならいいかな?
 金品ねだったりしてるわけじゃないし……危ない場所ってわけでもないし……

「さあ、行きましょう。ダグラスの部屋は4階ですよ」

 ちょっと考え込んでたらリディアが先を促してきた。

 4階建ての4階……上の階が1人部屋なのかな? ダグは部隊長だから1人部屋だろうしね。頑張って階段登ろう。

「うん、行こう」

 兵舎の中に入ると、エントランス部分は談話室のようになっていた。ソファやテーブルが趣味よく並べられていて、おそらく夜間業務に当たっていない騎士たちがそれぞれ寛いでいる。

 わぁ、こんなに多くの騎士さんは初めてみた。ここにいるだけでも結構いるなぁ……


「お、おい、あれって神子様じゃないか……?」

「あの黒髪……絶対神子様だ」

「は、初めて見た……なんて可愛らしい……」


 きょろきょろと、周りを眺めていると騎士さんたちがざわめきだした。

 可愛いは余計だっ!!


「ユキ様、側を離れないでくださいね」

「う、うん……なんだか騎士さん増えてない……?」

 なんだか入ってきた時より人が増えてる。うぅ、広すぎてなかなか階段に着かないんだよ……!!

「ユキ様がいらしたのが伝わったのでしょう……一目見ようと集まっているようです」

「そんなぁ……」

「「「神子様っっ!!」」」

 わっ! なんか何人か飛び出してきた!!
 ……ん? なんか見たことある気がする……

「下がりなさい! ……あなた方は確か、第3王子の威圧で気絶した騎士ですね」

 ああ! あの時にいた騎士さん!! 見覚えがあったのはそういうことかぁ。

「は、はい……我々は神子様をお守りすることもできず……本当に申し訳ございませんでした。神子様がご無事で安心いたしました」

「いえ、僕こそいきなり命令してしまってすみませんでした。皆さんこそ体調は大丈夫ですか?」

「我々をお気遣いいただけるなんて……! はい、我々はなんともございません!! それよりも、我々はなんとお詫びしたら良いか……如何なる処罰もお受けいたします」

 そう言って飛び出して来た騎士さんたちが跪いた。よく見たら周りにも跪いてる騎士さんが結構いる。

 処罰?! えっまってなんでそんな話に?

「待ってください、処罰ってなんの話ですか」

「我々は神子様を危険に晒しました。騎士としてあってはならぬことです。ゆえに我らは処罰を受けて然るべきなのです」

 侵入を許したってことと第3王子の威圧に負けて気絶したってことに責任を感じてるのかな……?

「僕は今回のことであなた方を処罰するつもりはありません。僕は無事でしたし、今回は相手が悪すぎました。竜人のそれも王族が侵入してくるなど誰にも予想のつかなかったことで、対処法が練られていなかったのも仕方ありません。
確かに騎士というものはその場で臨機応変に対応することが求められるのでしょうが、今回ばかりはその限りではないでしょう。
仕方なかった、と片付けるのは騎士としての誇りが許さないのかもしれませんが、今回は僕が無事だったのでそれで良しとしましょう?」

「み、神子様……! なんと慈悲深きお心……!! 次こそは必ずやお守りいたします!!」

 あ、騎士さんたちが凄い勢いで泣き始めた。おおう、大勢の男の人達が泣いてると凄い光景になるなぁ……

「あ、ありがとうございます?
では僕はそろそろ行きますね?」

 騎士さんたちを蔑ろにするつもりはないけどはやくダグのとこに行きたいのです。

「は、はい! 突然失礼いたしました!!」


「いいえ、皆さんもゆっくり休んでくださいね。
リディア、行こう?」

「ええ、もうダグラスも起きているでしょう」

「ほんと?! はやく行こう!!」

「あ! お待ちくださいユキ様!! 部屋の場所をご存知ではないでしょう!!」

 つい駆け出した僕をリディアが引き留める。

 ……はい、知りませんでした。うう、はやくダグのとこに行きたいんだよぅ……自分の目で無事を確認したい。

「うう、案内して?」

「はい。焦って階段で転ばないようにしてくださいね?」

「さ、流石にそんなことにはならないよ!」

 ……多分。

「十分にお気をつけくださいね」

「はぁい」

 万が一は後ろにラギアスもいるし!! きっと大丈夫!! ……そうなったらほんとにごめんね、ラギアス。



 逸る気持ちを抑えて一段一段階段を登る僕は知らなかった。








「なぁ、神子様がダグラス部隊長のこと好きだって本当か?」

「俺も聞いた。王妃陛下方が話してたんだろ? 本当じゃねぇのか?」

「うわー、まじか……じゃあ神子様が上に行ったのって……」

「いやいや、ただの見舞いだろ!」

「でもさぁ、夜に好きな男の部屋に行くって……」

「いや、リディアさんも護衛もいたぞ?」

「たしかに……見舞いであってほしいなぁ……」

「そもそもダグラスさんはどう思ってるんだ?」

「たしかに! 普段は気さくだけど仕事には真面目な人だからなぁ……護衛対象かぁ……」

「……そっとしておこう」

「そうだな」


 なんて騎士たちが話してたことを。
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