あの人と。

Haru.

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本編

30 穏やかな 前半side.ロイディア

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「なぁロイ、今日はこのままユキと一緒に寝ないか? ユキを挟んでさ、3人で寝ようよ。いいだろ?」

 なんて良い考えなのだ。
 王族の子は産まれてすぐにそれぞれの世話役へ託される。日中は母親といることが多いが、共に寝ることはない。
 つまり、私達はレイともラスとも共に寝たことはない。それをユキと共に寝れる。なんて素晴らしいことだろうか。
 王族が親と共に寝ないのは自立心を養うためだとかの理由があるが、ユキは王族ではないし、構わないだろう? 家族とは共に寝るものだと耳にしたことがあるし、今日くらい共に寝たって誰も何も言いやしないだろう。いや、言わせない。

「うむ、今日は3人で寝るか。
ダグラス、今日はこのままユキは私達の寝室で寝かせる。リディアに明日の着替えをこの部屋へ運ぶように伝言を頼む」

「し、しかし……いえ、かしこまりました。
では、明日のユキ様の護衛もこちらへ参らせます」

「ああ。頼んだぞ」

「かしこまりました。
では、私はこれにて失礼いたします」

「ああ。ご苦労だった」

 ダグラスが出て行き、残されたのは私とアルとユキだけだ。侍従は既に下がらせているしな。

「さて、寝室へ移動するか」

「ああ。ロイ、そのままユキ運べる? 扉は俺が抑えるけど」
 
「ユキは軽いから大丈夫だ。逆に心配になるくらいだな。
それにしがみついて離れなそうだからこのままいこう」

 しがみついて離れないユキをそのまま抱きかかえ、アルと共に寝室に入る。

「ロイ、子供と一緒に寝るなんて初めてだな。なんだかワクワクする」

「そうだな。だが今日はいい夢が見れそうな気がするんだ」

「確かに! さ、いつもよりちょっと早めだけどもう寝よ?」

「ああ、寝ようか」

 ユキを広い寝台の上に下ろせばしがみついていた腕は思っていたよりすんなりと離れた。

「ふ、穏やかな顔をしているな……良かった」

 しがみついて顔が見えなかったため少し心配だったのだ。それも杞憂だったようで良かった。

「大丈夫、明日には笑顔も見せてくれるさ!」

「そうだな……」

 私達もユキの両隣へ潜り込み、お互いにユキの頬へキスを落とすとゆっくりと眠りについた。


 今までになく穏やかな眠りだった。



*******


────と、いうわけだ」

 ロイが語った内容にちらりとアルを見ると、穏やかに微笑みを浮かべている。

 そっか、アルも聞いてたんだ……でも、うん、嫌じゃない。むしろ、聞いてもらって良かったのかもしれない。これからは気兼ねなく接せるような気がするから。

「そうだったんだ。ごめんね、迷惑かけて」

「ユキ、私達は迷惑などと思ってはおらぬぞ。なんなら今日も一緒に寝るか? 私達は大歓迎だ」

「それはいいな! いっそ毎日でもいいくらいだ!」

「うぇ?! いやいやいいよ!! 僕もうそんな子供じゃないし!!! 添い寝してもらう年齢じゃないよ!!」

「そうか? ……残念だ」

 ロイもアルも心底残念そうな顔をしないでください。僕もう18ですよ。夫婦なんだから夜のうにゃうにゃもあるだろうに僕と毎日寝るだなんて……だめでしょ!! 世継ぎはもう十分なんだろうけど!

 一緒に寝るのはどうかと思うけど、ロイ達にしてほしいことがある。
 たまにでいいから、抱きしめてほしいんだ。頭も撫でてほしい。

 この世界の人は僕と体格が全然違って、なんだか大人と子供みたいな感覚にされるからつい甘えたくなってしまうんだ。ロイとアルはもう僕の家族だし、甘えたっていいよね?

「ロイ、アル……お願い、してもいい……?」

「なんだ? なんでも言うといい」

「その……たまにね? 抱き締めてくれないかなぁって……あとね、頭も撫でてほしい……」

 子供っぽい願いを言っている自覚があるから顔に熱が集まってくる。

 そわそわとロイ達の返事を待つがなかなか返ってこない。

「だ、だめ……?」

 少し悲しくなり目に涙が溜まってくる。ちらりとロイの顔を見ればロイ達は顔を覆い上を向いた。

「ぐっ……! なんという破壊力……!」

「赤面涙目上目遣い……! これはヤバい……!」

「えっと……? だ、だめだった……?」

「ダメだ! いや、違う、ダメじゃない!」

「どっちなの?」

「さっきの仕草は破壊力がすごいからダメだがお願いはいい!!」

「ああ! それくらいの願いならいくらでも叶えてやるとも!!」

 えっと、とりあえず抱き締めてもらえるってことかな? 頭も撫でてもらえる? ロイ達の手体に見合っておっきいからすごい気持ちいいんだよ。大きい手に撫でてもらうってこんなに安心するんだね。僕幼児帰りしたみたいだ。

 ……この世界じゃ僕の体格ショタみたいなもんだしあながち間違ってはいない……?


「ほら、ユキ、おいで。いくらでも抱き締めてやるさ」

 ロイが腕を広げて呼んでくれる。穏やかな笑みを浮かべている。僕は迷わずその腕の中に飛び込んだ。ロイはそのまま僕の背に左腕を回し、右腕で頭を撫でてくれる。

 そう、この感じだ。体格違いすぎてすっぽり覆われるかんじがすごく安心するんだ。

 そのままロイに抱きしめられていたらベリっと剥がされ、違う体温を感じた。

「もう、ロイだけずるいぞ! ユキ、俺だって抱き締めてやるからな」

 アルの声がし、ぎゅうぎゅうと抱き締められる。まるで守られてるみたいに。


 
 2人の腕の中はどちらもすごく心地よかった。











 でも、ダグの腕とは何かが違った。

 どうしてだろう??

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