あの人と。

Haru.

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本編

18 会話

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 あれからわりとすぐにロイは仕事があるからって行ってしまった。ラギアスはそのまま護衛に移るからって部屋に残ったけど、いくらリディアもいるからってまだまだ打ち解けれてないラギアスを残されても気まずさしか感じなかった。だってラギアスなにも喋んないのにやたらと見てくるんだよ……!
 でもそんな気まずさも今は忘れて談笑中です! ダグが訓練を終えて部屋に来てくれたんだ。
 本当は護衛って日中は部屋の中に入ってもドアの横で待機するものらしいんだけど、僕が無理を言ってダグには近くに寄ってもらった。勿論ラギアスも誘ったけど、ラギアスには断られてしまった。まぁ、無理強いしたいわけじゃないから仕方ないかな。

 そんな僕の近くまで来てくれたダグは現在カウチに座る僕の斜め前に立ってます。
 ……そう、立ってるんだよ……!! 僕は向かいにあるソファを勧めたんだよ?! でも護衛の任務中である以上座ることは出来ないって言われたらもう無理に座らせることなんてできないよね!! リディアも座ってくれなくて僕の後ろらへんに待機してるし……僕今のところ気軽にお茶できてるのロイぐらいじゃない? 国王とお茶って……
 やめやめ! 今そんなことグダグダ考えてもしょうがないんだから今は会話を楽しも!!!


「ねぇダグ、ダグが騎士ってことはこの国には騎士団があるの? 普段はどんなことしてるの?」

「ええ、この国には騎士団がございます。普段は魔獣の討伐や見回り、犯罪者の取り締まりなどを担っております」

「魔獣って?」

「魔獣とは理性を持たず人を無差別に襲う害獣のことです。山などに多く生息するのですが、数が多くなると街へ降りてくることがあるので定期的に討伐する必要があるのです。民からの目撃情報が出た場合にも緊急任務として討伐しに行くのですよ」

「野生の動物とかとは違うの?」

「ええ、魔獣はたしかに動物のような見た目をしている個体が多いのですが、その凶悪さや強さなどはかなり違ってきます。
動物とくらべて爪や牙も鋭く、火を噴くものや毒を吐くものなど種類は様々で、その強さからE~SSランクに分類されます」

「火?! 毒?! えっ、かなり危険じゃない?!」

「ええ、個体にもよりますが、基本的に危険ですので騎士団が任務として討伐するのですよ。そうしなければ民に危険が迫ってしまいますからね」

 すごい世界だなぁ……流石異世界……ダグに危険なことはして欲しくないけど任務だから仕方ないよなぁ……

「そうなんだ……これからもそういう任務あるんだよね? 怪我するのは仕方ないと思うけど、絶対生きて帰ってきてね!」

「そのようなお気遣いありがとうございます。ユキ様をお守りするという使命がございますのでなんとしてでも帰ってまいりますよ」

 僕のために帰ってくる……! て、照れる!!! 僕絶対今顔真っ赤だよ!!!!

「う、うん! 約束だよ!!」

「ええ、必ず帰ってまいります」

 そんなに優しい顔で頰笑まないでぇええええええ!!! めっちゃ照れるめっちゃ照れる!! いやまぁすっごい微かな微笑みではあるんですけども! 真面目そうな顔だからそれだけでもかなり悩殺ものなんですよ!!!!!

「うう、そ、それにしても騎士ってかっこいいね!! 僕の国にはいなかったからかなり新鮮だよ!!」

 かなり挙動不審なのは許してください! 見逃して!

「ユキ様の故郷にはなかったのですか?」

「うん、僕の国は安全だったしね。軍隊もなかったんだよ」

「では犯罪者の取り締まりや防衛はどのようにしていたのですか?」

「犯罪者はね、警察って組織が取り締まっていたよ。防衛は自衛隊って組織」

「けいさつにじえいたい……聞いたことのない響きですね」

「警察は他の国にもあったけど、自衛隊は僕の国独特だったかなぁ……」

「そうなのですか?」

「うん、他の国は軍隊があるのが普通だったからね。僕の国は昔に起きた世界レベルの戦争に負けてから軍隊を持つことを許されなくなったんだ。
それから色々あって今自衛隊っていう防衛のためだけの組織があるけど、僕の国は他国に攻め入ることは許されてなくて、防衛力以上の戦力をもっちゃダメなんだ」

「敗戦国なのですか……? では支配されていたのでは……」

「ううん、そんなことはないんだよ。相手の国の中でも1番強い国と同盟関係になって、その国の軍の基地を置くことにはなったけど搾取されたりとかはないんだ。むしろ、その国が盾になって他国から攻め入られるのを回避してる、って感じかなぁ?

一時的に一部その国の領土にされたけどそれも今は返還されてるし……まぁその地域の人たちや基地周辺に住んでる人達の気持ちを考えたら今の状態も良いものとは言えないんだろうけどね」

「複雑なようですが、ユキ様にとって悪い状況ではなかったようで良かったです」

 ぼ、僕?!

「そ、そうかなぁ?!」

「私にとっての1番はユキ様の幸せですので」

 そういうことをサラッと言わないで……!!!!

「ダグは口が上手いなぁ……」

「本心ですから」

 あぁもう、またそうやって……! 照れるでしょー!!
 さっきから僕照れてばっか……お茶飲んで落ち着こう……ああ、リディアのお茶は美味しいなぁ……

「ふぅ……ダグのせいで僕今日照れてばっかだよ。なんだか暑くなっちゃった。リディア、上着脱いでもいい?」

「構いませんが……少々失礼しますよ」

 リディアが僕の額と首に触れた。

 あー、リディアの手冷たくて気持ちーなぁ……リディアって体温低いのかな?

「やはり……ユキ様、お熱が上がっていますよ。お暑く感じられたのはそのせいでしょう。
もう今日はこの辺にしてお休みなさいませ」

 あぁ、僕また熱上がっちゃったのかぁ……うん、そう言われてみれば心なしかぼーっとするような?

「うう、でも僕まだみんなといたい……」

「ユキ様……ご無理をなさらないお約束でしたでしょう? いつでもまたお話できますよ、今日のところはもう休みましょう?」

「ここで寝転んでもダメ?」

「なりませんよ。ちゃんとベッドでお休みになりませんと……」

「うう……」

 まだダグと話したい……

 俯いた僕の側でダグが跪き、僕の手を優しくとった。

「ユキ様、今日はもうリディアの言う通りお休みしましょう? 明日でも明後日でも私はお側におります。ユキ様がお眠りになるまで私もお側にいますから、ご無理をなさらずにお休みください」

 ダグにまで言われたらもうわがままなんて言えない……それに僕が寝るまでついててくれるって言うしもう諦めて寝よう……

「うん、わかった。もう休むことにするよ」

「ではお着替えをいたしましょうね」

 そう言ったリディアに促されて肌触りのいいゆったりとした服に着替えてそのままベッドに潜った。

「ねぇ、ダグ、手、繋いでくれる……?」

 子供みたいだって理解してるけど今は誰かが側にいることを感じてたい。

「ええ、勿論構いませんよ」

「ん、ありがと、ダグ」

 優しく握ってくれる手の温度に安堵し、そのまま僕は意識を飛ばした。
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