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本編
16 獣人
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僕の声に目の前の犬耳の男の人は顔を顰める。
「お初にお目にかかります、神子様。私は狼族の獣人のラギアスと申します。獣人である私がお側に控えるのはお嫌かと存じますが、誠心誠意お仕えいたしますのでご容赦ください」
あ、その耳犬じゃなくて狼だったんだ……ってそうじゃなくて!!!
「ちょっ……! 待って、違う違う!!! そう言う事じゃないんだよ!!」
僕の言葉にラギアスさんはさらに顔を顰める。
「やはり首輪のない獣人はお嫌ですか。ご所望とあらば首輪をつけますが」
「く、首輪?! 待って待って!!! そんなものつけなくていいから!!
ちょ、ロイ!! 獣人って何?!」
「ん? もしやユキの世界には獣人はおらなんだのか?」
「う、うん、初めて見た。この世界にはいるの?」
「ああ、この世界には人間の他に獣人という種族がおるのだ。
獣人族は人間より身体能力が高くてな、戦闘に向いとる種族なんだが……その昔、その能力の高さに目をつけた愚か者共が使役しようと、隷属の首輪を開発した。それを付けられると付けた主に絶対服従せざるを得なくなる代物だ。
そんな物が多く出回り、獣人達は奴隷として使役されてしまった。この国では先先代の国王が隷属の首輪の使用と獣人族の使役を禁止し、獣人族の権利も表向きは回復しておるのだが、裏では獣人族に対して良からぬ事を考えとる者が存在するのが事実であるし、未だに獣人族が奴隷として使役されている国もあると聞く」
えっ、じゃあラギアスさんが言ってた首輪ってその隷属の首輪……?
「でも、獣人族って身体能力が高いんでしょ? その隷属の首輪を付けられる前に逃げたりもできたんじゃ……」
「確かに獣人族は身体能力が高い。しかし、子供の力はやはり弱い。そんな子供を攫い、他の獣人族を脅したのだ。
獣人族は人間よりも仲間意識が強くてな、自分の子であるならばもちろん、全く見ず知らずの子でも守ろうとする。故に子供を囮にされては抵抗などできなんだのだ」
「酷い……獣人族だって命も意思もあるのに……」
「ああ、その通りだ。等しく命ある限り、隷属させるなどあってはならんことだ。
それでなんだが、ユキには少し協力してほしいことがあるんだ」
「何? 僕にできることならなんでもする!」
「なに、そう難しいことではない。獣人であるラギアスをユキの護衛として側に控えさせてほしいのだ」
……それだけ?
「え、それだけでいいの?」
「ああ、それだけでいいのだ。法では獣人の権利は回復しておるが、悲しいことに国民の意識としてはそうもいっておらんでな……神子とはこの国にとってはもちろん、この世界にとっても特別な存在だ。神子たるユキが側に首輪のない獣人を側に仕えさせることに意味があるのだよ」
神子は獣人を嫌っていない、奴隷としてみていない、ってアピールかな? どれだけ効果があるのかはわからないけどやる価値はありそうだ。
「うん、わかった。僕も隷属なんて非人道的なこと許せないしね。いくらでも協力するよ!」
「そう言ってくれて嬉しい。
ラギアスはダグラスと共にユキ専属の護衛となる。他にもユキの護衛としてつける者はおるが、其奴等は専属ではない。ラギアスとダグラスの2人のどちらかは必ず側につくはずだ。公の場では2人ともがつくがな」
ダグがリーダーでラギアスさんが副リーダーみたいな感じかな?
「わかった。
ラギアスさん、これからよろしくお願いしますね!」
「……神子様は獣人がお嫌ではないのですか?」
ロイの話を聞いてわかった。最初に顔を顰めていたのは僕が獣人に対して嫌な感情を持っていると思っていたからなんだね。僕はそんな感情を持ってないって言葉で伝えてもすぐには信用してはもらえないだろう。これから接していくなかで少しずつでもそれを理解していってくれると嬉しいな。
「嫌だなんてとんでもない!! むしろ身体能力が高いなんて尊敬します! 僕は運動神経皆無で何もできないので……」
「神子様、その様なお言葉を頂けて大変ありがたく存じますが、私のような獣人に敬語は必要ありません。私のこともどうかラギアス、と」
「むぅ、そういうなら僕は気軽に話しかけるようにするけどね、ラギアス、そんな風に自分を卑下するのは僕は許さないよ! 悪いのは人間であって獣人は何も悪くないんだから、もっと自分達に誇りを持たないと!! そんな風に自分を卑下してたら悪い人間達の思うツボだよ」
きっと獣人族にとって人間は獣人を隷属させる者っていう意識は根深いものなんだろう。人間達がしてきた仕打ちを考えたらそうなってしまうのも無理はないのかもしれない。だけど、そのままではダメだ。獣人がへりくだっていれば、それが当たり前と思ってしまう人間もいる。まさに負の連鎖でしかない。その鎖を断ち切らないとダメなんだ。
「うむ、ユキの言う通りだ。ラギアス、お主は本当に優秀だ。自分に誇りを持つのだ」
「……はい、勿体無いお言葉、ありがたく存じます」
「ラギアス、僕には敬語も敬称もなしでいいんだよ。ユキって呼んでほしいな」
「それはご命令ですか?」
「むぅ、これは命令じゃないよ。お願い、だよ。僕はラギアスや僕に仕えてくれる人に命令なんてしないよ。無理強いすることはしたくないんだ」
「それならば出来ません。私はあくまでも神子様に仕える者ですので」
「うぅ、ダメか……ダグもリディアも僕に敬語だもんなぁ……僕敬語使われるのすごい苦手なんだよなぁ……
ラギアス、せめて僕のことはユキ、って呼んで? 様付けでもいいからさ……神子様って呼ばれるのまだ慣れてないんだ」
「ではユキ様とお呼びいたします」
「うん、今はそれでいいよ。
ねぇロイ、ダグにもリディアにも言えることだけど僕に仕えてくれる人達なんか堅すぎない? 僕肩凝っちゃうよ」
「まぁそう言うな。まだ慣れてないからだろう。そのうちユキにも気楽に接するようになってくるさ」
「そうかなぁ、そうだといいなぁ……」
いつか絶対ダグもリディアもラギアスも敬語と敬称外させるぞ……!
「お初にお目にかかります、神子様。私は狼族の獣人のラギアスと申します。獣人である私がお側に控えるのはお嫌かと存じますが、誠心誠意お仕えいたしますのでご容赦ください」
あ、その耳犬じゃなくて狼だったんだ……ってそうじゃなくて!!!
「ちょっ……! 待って、違う違う!!! そう言う事じゃないんだよ!!」
僕の言葉にラギアスさんはさらに顔を顰める。
「やはり首輪のない獣人はお嫌ですか。ご所望とあらば首輪をつけますが」
「く、首輪?! 待って待って!!! そんなものつけなくていいから!!
ちょ、ロイ!! 獣人って何?!」
「ん? もしやユキの世界には獣人はおらなんだのか?」
「う、うん、初めて見た。この世界にはいるの?」
「ああ、この世界には人間の他に獣人という種族がおるのだ。
獣人族は人間より身体能力が高くてな、戦闘に向いとる種族なんだが……その昔、その能力の高さに目をつけた愚か者共が使役しようと、隷属の首輪を開発した。それを付けられると付けた主に絶対服従せざるを得なくなる代物だ。
そんな物が多く出回り、獣人達は奴隷として使役されてしまった。この国では先先代の国王が隷属の首輪の使用と獣人族の使役を禁止し、獣人族の権利も表向きは回復しておるのだが、裏では獣人族に対して良からぬ事を考えとる者が存在するのが事実であるし、未だに獣人族が奴隷として使役されている国もあると聞く」
えっ、じゃあラギアスさんが言ってた首輪ってその隷属の首輪……?
「でも、獣人族って身体能力が高いんでしょ? その隷属の首輪を付けられる前に逃げたりもできたんじゃ……」
「確かに獣人族は身体能力が高い。しかし、子供の力はやはり弱い。そんな子供を攫い、他の獣人族を脅したのだ。
獣人族は人間よりも仲間意識が強くてな、自分の子であるならばもちろん、全く見ず知らずの子でも守ろうとする。故に子供を囮にされては抵抗などできなんだのだ」
「酷い……獣人族だって命も意思もあるのに……」
「ああ、その通りだ。等しく命ある限り、隷属させるなどあってはならんことだ。
それでなんだが、ユキには少し協力してほしいことがあるんだ」
「何? 僕にできることならなんでもする!」
「なに、そう難しいことではない。獣人であるラギアスをユキの護衛として側に控えさせてほしいのだ」
……それだけ?
「え、それだけでいいの?」
「ああ、それだけでいいのだ。法では獣人の権利は回復しておるが、悲しいことに国民の意識としてはそうもいっておらんでな……神子とはこの国にとってはもちろん、この世界にとっても特別な存在だ。神子たるユキが側に首輪のない獣人を側に仕えさせることに意味があるのだよ」
神子は獣人を嫌っていない、奴隷としてみていない、ってアピールかな? どれだけ効果があるのかはわからないけどやる価値はありそうだ。
「うん、わかった。僕も隷属なんて非人道的なこと許せないしね。いくらでも協力するよ!」
「そう言ってくれて嬉しい。
ラギアスはダグラスと共にユキ専属の護衛となる。他にもユキの護衛としてつける者はおるが、其奴等は専属ではない。ラギアスとダグラスの2人のどちらかは必ず側につくはずだ。公の場では2人ともがつくがな」
ダグがリーダーでラギアスさんが副リーダーみたいな感じかな?
「わかった。
ラギアスさん、これからよろしくお願いしますね!」
「……神子様は獣人がお嫌ではないのですか?」
ロイの話を聞いてわかった。最初に顔を顰めていたのは僕が獣人に対して嫌な感情を持っていると思っていたからなんだね。僕はそんな感情を持ってないって言葉で伝えてもすぐには信用してはもらえないだろう。これから接していくなかで少しずつでもそれを理解していってくれると嬉しいな。
「嫌だなんてとんでもない!! むしろ身体能力が高いなんて尊敬します! 僕は運動神経皆無で何もできないので……」
「神子様、その様なお言葉を頂けて大変ありがたく存じますが、私のような獣人に敬語は必要ありません。私のこともどうかラギアス、と」
「むぅ、そういうなら僕は気軽に話しかけるようにするけどね、ラギアス、そんな風に自分を卑下するのは僕は許さないよ! 悪いのは人間であって獣人は何も悪くないんだから、もっと自分達に誇りを持たないと!! そんな風に自分を卑下してたら悪い人間達の思うツボだよ」
きっと獣人族にとって人間は獣人を隷属させる者っていう意識は根深いものなんだろう。人間達がしてきた仕打ちを考えたらそうなってしまうのも無理はないのかもしれない。だけど、そのままではダメだ。獣人がへりくだっていれば、それが当たり前と思ってしまう人間もいる。まさに負の連鎖でしかない。その鎖を断ち切らないとダメなんだ。
「うむ、ユキの言う通りだ。ラギアス、お主は本当に優秀だ。自分に誇りを持つのだ」
「……はい、勿体無いお言葉、ありがたく存じます」
「ラギアス、僕には敬語も敬称もなしでいいんだよ。ユキって呼んでほしいな」
「それはご命令ですか?」
「むぅ、これは命令じゃないよ。お願い、だよ。僕はラギアスや僕に仕えてくれる人に命令なんてしないよ。無理強いすることはしたくないんだ」
「それならば出来ません。私はあくまでも神子様に仕える者ですので」
「うぅ、ダメか……ダグもリディアも僕に敬語だもんなぁ……僕敬語使われるのすごい苦手なんだよなぁ……
ラギアス、せめて僕のことはユキ、って呼んで? 様付けでもいいからさ……神子様って呼ばれるのまだ慣れてないんだ」
「ではユキ様とお呼びいたします」
「うん、今はそれでいいよ。
ねぇロイ、ダグにもリディアにも言えることだけど僕に仕えてくれる人達なんか堅すぎない? 僕肩凝っちゃうよ」
「まぁそう言うな。まだ慣れてないからだろう。そのうちユキにも気楽に接するようになってくるさ」
「そうかなぁ、そうだといいなぁ……」
いつか絶対ダグもリディアもラギアスも敬語と敬称外させるぞ……!
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