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第四十話・黄と緑の未来
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ーーあの戦いの日々から,十年が経った。
「・・・・・・“社長”、そろそろ昼休憩を取らなければ」
西園寺グループの子会社、その社長室に入ってくる一人の男。
スーツを綺麗に着込んだ長身の彼は、社長秘書の芥川レイジ。
「レイジ~~、仕事終わらないよぉ・・・・・・」
彼の姿を見た途端、ぐったりと社長の机に突っ伏し弱音を吐いたのは、いずれ西園寺グループのトップを継ぐために子会社の社長となった西園寺ユウキだ。
「社長、会社では“芥川”と呼んでください」
ツンと突き放すレイジを、ユウキは縋るような目で見つめる。
その雨の中捨てられた子犬のような哀れな眼差しに、仕事モードだったレイジもつい絆されてしまった。
(まあ・・・・・・今は部屋に二人きりですし,ちょっとくらいいいでしょう)
レイジはユウキのすぐそばまで寄ると、先程コンビニで買ってきた昼食の入ったレジ袋をそっと渡す。
「キリのいい所で一度ご飯を食べた方がいいですよ。午後からきつくなります」
「でも・・・・・・」
「終わらない分は私も一緒にやりますから。無理はいけません」
レイジが言うと、ユウキはしゅんと肩を落とす。
西園寺家を継ぐため、なんとか子会社の社長の座につくことができたユウキだったが。
お坊ちゃまだと、親の七光りだと馬鹿にされないよう必死で、でもなかなか仕事が上手くいかなくて・・・・・・最近は、ずっと落ち込んだ様子でいた。
(落ち込んでばかりじゃ駄目だって、分かってる。レイジだって、僕が頼んだから社長秘書にまでなってついてきてくれてるのに・・・・・・)
自分が情けなくなるユウキ。目の前に山積みの仕事。要領の悪い自分が嫌になって、仕事をこなすやる気も出てこない。
今すぐ家に帰って、レイジに甘えて泣きつきたい、そんな気分だった。
ーー沈んだ顔をするユウキに、レイジは静かにため息をつく。
「・・・・・・ユウキ君、確かに君は物覚えも悪いし、要領も良く無いでしょう」
「い、いきなりなんだい、そんなこと、僕だって分かって・・・・・・‼︎」
気にしていることを指摘されて、ユウキがつい声を上げると、レイジは人差し指をすっとユウキの口元にあて、黙らせた。
「ですが、一度間違えたことは二度と間違えない真面目さと、物覚えが悪くとも一度覚えてしまえば素早く丁寧にこなせる器用さがあると・・・・・・私は知っています」
レイジはユウキの頭をそっと撫でると、静かに囁いた。
「社長の座に就いたばかりの今が一番辛い時かもしれません。でも今を乗り越えたらきっと、上手く行くようになります」
「レイジ・・・・・・」
慰め、励ます言葉に、ユウキは瞳を潤ませる。
その人懐こい小動物のように擦り寄ってくるユウキの頭を愛玩するように撫でながら、レイジはふっと笑い片手でネクタイを緩めた。
「・・・・・・そうですね、今日の午後を乗り切ったら、ご褒美をあげますよ」
チャリ、と小さな金属がする。レイジは襟元からネックレスを引き摺り出すと、そこについた鍵をユウキに見せつけニヤリと笑った。
その瞬間、ユウキの顔が真っ赤に染まり、全身ぶるりと震える。
ーーそれは、ユウキにつけられた貞操帯の鍵。
「あ、ぁ、レイジ・・・・・・♡」
「一週間ぶりくらいでしょうか? ・・・・・・午後を頑張れば、帰ったらユウキ君が望むままに可愛がってあげますよ」
誘惑するような低い声が、ユウキの官能を刺激する。
「が、頑張るっ・・・・・・僕、諦めたりしないからっ♡ だから、ご褒美っ・・・・・・‼︎♡」
必死に尻尾を振るユウキに、レイジは微笑して頷いた。
そのさらに十数年後、西園寺グループは飛躍的に成長を遂げることとなる。
世間では新たにトップについた西園寺ユウキを讃える声が上がったがーーグループ内部では有名な噂がたっていた。
『・・・・・・腹黒だが頭の切れる社長秘書が、グループの采配を握っている通称“黒宰相”と呼ばれる男である』
ーーユウキとレイジ、二人はあらゆる困難を乗り越え、一途に愛し合いながら西園寺グループの最盛期を築き上げていくことになるのだが、それはまた、別のお話である。
「・・・・・・“社長”、そろそろ昼休憩を取らなければ」
西園寺グループの子会社、その社長室に入ってくる一人の男。
スーツを綺麗に着込んだ長身の彼は、社長秘書の芥川レイジ。
「レイジ~~、仕事終わらないよぉ・・・・・・」
彼の姿を見た途端、ぐったりと社長の机に突っ伏し弱音を吐いたのは、いずれ西園寺グループのトップを継ぐために子会社の社長となった西園寺ユウキだ。
「社長、会社では“芥川”と呼んでください」
ツンと突き放すレイジを、ユウキは縋るような目で見つめる。
その雨の中捨てられた子犬のような哀れな眼差しに、仕事モードだったレイジもつい絆されてしまった。
(まあ・・・・・・今は部屋に二人きりですし,ちょっとくらいいいでしょう)
レイジはユウキのすぐそばまで寄ると、先程コンビニで買ってきた昼食の入ったレジ袋をそっと渡す。
「キリのいい所で一度ご飯を食べた方がいいですよ。午後からきつくなります」
「でも・・・・・・」
「終わらない分は私も一緒にやりますから。無理はいけません」
レイジが言うと、ユウキはしゅんと肩を落とす。
西園寺家を継ぐため、なんとか子会社の社長の座につくことができたユウキだったが。
お坊ちゃまだと、親の七光りだと馬鹿にされないよう必死で、でもなかなか仕事が上手くいかなくて・・・・・・最近は、ずっと落ち込んだ様子でいた。
(落ち込んでばかりじゃ駄目だって、分かってる。レイジだって、僕が頼んだから社長秘書にまでなってついてきてくれてるのに・・・・・・)
自分が情けなくなるユウキ。目の前に山積みの仕事。要領の悪い自分が嫌になって、仕事をこなすやる気も出てこない。
今すぐ家に帰って、レイジに甘えて泣きつきたい、そんな気分だった。
ーー沈んだ顔をするユウキに、レイジは静かにため息をつく。
「・・・・・・ユウキ君、確かに君は物覚えも悪いし、要領も良く無いでしょう」
「い、いきなりなんだい、そんなこと、僕だって分かって・・・・・・‼︎」
気にしていることを指摘されて、ユウキがつい声を上げると、レイジは人差し指をすっとユウキの口元にあて、黙らせた。
「ですが、一度間違えたことは二度と間違えない真面目さと、物覚えが悪くとも一度覚えてしまえば素早く丁寧にこなせる器用さがあると・・・・・・私は知っています」
レイジはユウキの頭をそっと撫でると、静かに囁いた。
「社長の座に就いたばかりの今が一番辛い時かもしれません。でも今を乗り越えたらきっと、上手く行くようになります」
「レイジ・・・・・・」
慰め、励ます言葉に、ユウキは瞳を潤ませる。
その人懐こい小動物のように擦り寄ってくるユウキの頭を愛玩するように撫でながら、レイジはふっと笑い片手でネクタイを緩めた。
「・・・・・・そうですね、今日の午後を乗り切ったら、ご褒美をあげますよ」
チャリ、と小さな金属がする。レイジは襟元からネックレスを引き摺り出すと、そこについた鍵をユウキに見せつけニヤリと笑った。
その瞬間、ユウキの顔が真っ赤に染まり、全身ぶるりと震える。
ーーそれは、ユウキにつけられた貞操帯の鍵。
「あ、ぁ、レイジ・・・・・・♡」
「一週間ぶりくらいでしょうか? ・・・・・・午後を頑張れば、帰ったらユウキ君が望むままに可愛がってあげますよ」
誘惑するような低い声が、ユウキの官能を刺激する。
「が、頑張るっ・・・・・・僕、諦めたりしないからっ♡ だから、ご褒美っ・・・・・・‼︎♡」
必死に尻尾を振るユウキに、レイジは微笑して頷いた。
そのさらに十数年後、西園寺グループは飛躍的に成長を遂げることとなる。
世間では新たにトップについた西園寺ユウキを讃える声が上がったがーーグループ内部では有名な噂がたっていた。
『・・・・・・腹黒だが頭の切れる社長秘書が、グループの采配を握っている通称“黒宰相”と呼ばれる男である』
ーーユウキとレイジ、二人はあらゆる困難を乗り越え、一途に愛し合いながら西園寺グループの最盛期を築き上げていくことになるのだが、それはまた、別のお話である。
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