123 / 144
認識のずれ
しおりを挟む
「ご、後藤さん、そのすみません、お呼び出しして」
放課後、私は同級生に呼び出された。もうこの時期だと余り人気のない部活棟の裏。
そして相手は一人ではなく複数人。ただ相手は全員女子生徒だ。
呼び出される理由は大体見当が付いている。
「く、草野先輩と、まだ付き合ってるんでしょうか」
冬休み明け、春さんとは帰り道でしか会わなくなった頃からこういう事が増えた。
いや、実を言うと、春さんと付き合う前からこういう事は有った。
ただその頃は付き合って無かったので特に問題は無かった。そんな事実は無いのだから。
けど今は実際に付き合っている。であれは私が答える事は一つだけだ。
「ええ」
特に装飾する事もなく、シンプルに答えた。
私の答えに女子生徒達は体を固くする。その目はまるで敵対者を見つけたかの様だ。
その目に対し、特に怯むでもなく視線を返す様に全員を見据える。
ただそれだけで彼女達は一歩身を引いた。
そんなに怯えなくても良いじゃない。別に取って食ったりはしないよ。
そもそも何と言うか、私は彼女たちの事を嫌いになれない。
だって彼女達が何のために来たのか、そう考えると嫌いにはなれない。
「わ、私達、草野先輩が、好きなんです」
彼女達はおずおずと、自分もそうだと、口々に言いだす。
私は彼女達の次の言葉を、ただ静かに待つ。
彼女達は私の様子に怯えながらも、それでも言葉を紡いだ。
「だ、だから、その、先輩と付き合ってるって、本当に、先輩とその」
「好きだよ。春さんの事。春さんも私の事好きだって言ってくれている」
「っ、そう、ですか」
私は普段通りの態度で口を開く。そんな私に彼女達は一層きつい眼を向けて来た。
ただその目の理由は、とても解り易くて、私はどうしてもその敵意が嫌いになれない。
だってこの子達は私なんだ。何かが違えばこの子達は私だった。
そう思うとどうしても、どれだけの敵意を持たれても彼女達を嫌いになれなかった。
「貴女達が春さんを好きな事は構わない。それの想いを彼に伝える事も構わない。けど、その為に私が邪魔だというならどんなことでも相手になるよ」
ただ、だからと言って私が彼女達の為に引く何ていう事はあり得ない。
私は春さんの事が大好きだし、春さんの事を譲る気なんて一切ない。
何より彼が私を好きだと言ってくれている以上、譲る必要もない。
「っ、わ、私達も、殴る気ですか」
そんな事はしないよ。と言っても前科がある以上説得力は無いのだろう。
実際今でも暴漢に偶々あった時、普通に手を出してしまうし。
「しないよ。けど私に何を言っても無駄だという事は解って欲しいかな。その代わり貴方達が春さんに好意を示しても、何も邪魔はしないから」
私に出来る譲歩はそこまでだ。
けどそれでも、彼女達が春さんに好意を伝える事は絶対に邪魔しない。
彼女達の顔は覚えた。ここまで怖がりながら正面切ってきた彼女達の邪魔はしない。
「貴女達が春さんに行動を起こす時は、その時はけして邪魔しない。それじゃ駄目かな」
「・・・解り、ました」
「ありがとう。じゃあ、私はもう行くから」
「はい、失礼、しました」
私が話を切り上げようとすると伝えると、彼女達も渋々ではあるが頷く。
それを確認してから、私は彼女達に背を向けた。
春さんの卒業が近くて関わる機会が限られているせいか、本当に最近この手の事が増えた。
面倒という気持ちは無い。むしろ春さんがもてる事には喜ばしく思う。
我ながら少しずれてるかなとは思うけど、それでも私には彼女達に対する想いはそんな所だ。
きっと嫌われているだろうし、嫌がられているだろう。
けど私は彼女達に好意的な感情を持ってしまう。
だって彼女達は、私が好きな人を好きなのだから。
しかし、春さんは本当に人気者だ・・・。
放課後、私は同級生に呼び出された。もうこの時期だと余り人気のない部活棟の裏。
そして相手は一人ではなく複数人。ただ相手は全員女子生徒だ。
呼び出される理由は大体見当が付いている。
「く、草野先輩と、まだ付き合ってるんでしょうか」
冬休み明け、春さんとは帰り道でしか会わなくなった頃からこういう事が増えた。
いや、実を言うと、春さんと付き合う前からこういう事は有った。
ただその頃は付き合って無かったので特に問題は無かった。そんな事実は無いのだから。
けど今は実際に付き合っている。であれは私が答える事は一つだけだ。
「ええ」
特に装飾する事もなく、シンプルに答えた。
私の答えに女子生徒達は体を固くする。その目はまるで敵対者を見つけたかの様だ。
その目に対し、特に怯むでもなく視線を返す様に全員を見据える。
ただそれだけで彼女達は一歩身を引いた。
そんなに怯えなくても良いじゃない。別に取って食ったりはしないよ。
そもそも何と言うか、私は彼女たちの事を嫌いになれない。
だって彼女達が何のために来たのか、そう考えると嫌いにはなれない。
「わ、私達、草野先輩が、好きなんです」
彼女達はおずおずと、自分もそうだと、口々に言いだす。
私は彼女達の次の言葉を、ただ静かに待つ。
彼女達は私の様子に怯えながらも、それでも言葉を紡いだ。
「だ、だから、その、先輩と付き合ってるって、本当に、先輩とその」
「好きだよ。春さんの事。春さんも私の事好きだって言ってくれている」
「っ、そう、ですか」
私は普段通りの態度で口を開く。そんな私に彼女達は一層きつい眼を向けて来た。
ただその目の理由は、とても解り易くて、私はどうしてもその敵意が嫌いになれない。
だってこの子達は私なんだ。何かが違えばこの子達は私だった。
そう思うとどうしても、どれだけの敵意を持たれても彼女達を嫌いになれなかった。
「貴女達が春さんを好きな事は構わない。それの想いを彼に伝える事も構わない。けど、その為に私が邪魔だというならどんなことでも相手になるよ」
ただ、だからと言って私が彼女達の為に引く何ていう事はあり得ない。
私は春さんの事が大好きだし、春さんの事を譲る気なんて一切ない。
何より彼が私を好きだと言ってくれている以上、譲る必要もない。
「っ、わ、私達も、殴る気ですか」
そんな事はしないよ。と言っても前科がある以上説得力は無いのだろう。
実際今でも暴漢に偶々あった時、普通に手を出してしまうし。
「しないよ。けど私に何を言っても無駄だという事は解って欲しいかな。その代わり貴方達が春さんに好意を示しても、何も邪魔はしないから」
私に出来る譲歩はそこまでだ。
けどそれでも、彼女達が春さんに好意を伝える事は絶対に邪魔しない。
彼女達の顔は覚えた。ここまで怖がりながら正面切ってきた彼女達の邪魔はしない。
「貴女達が春さんに行動を起こす時は、その時はけして邪魔しない。それじゃ駄目かな」
「・・・解り、ました」
「ありがとう。じゃあ、私はもう行くから」
「はい、失礼、しました」
私が話を切り上げようとすると伝えると、彼女達も渋々ではあるが頷く。
それを確認してから、私は彼女達に背を向けた。
春さんの卒業が近くて関わる機会が限られているせいか、本当に最近この手の事が増えた。
面倒という気持ちは無い。むしろ春さんがもてる事には喜ばしく思う。
我ながら少しずれてるかなとは思うけど、それでも私には彼女達に対する想いはそんな所だ。
きっと嫌われているだろうし、嫌がられているだろう。
けど私は彼女達に好意的な感情を持ってしまう。
だって彼女達は、私が好きな人を好きなのだから。
しかし、春さんは本当に人気者だ・・・。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる