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ちゃんと二人で
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「春さん、声かけて下さいよ」
「あはは、ごめんごめん」
私は長時間ゲームに熱中していた事をずっと見られていた恥ずかしさから、待たせていた事を種に上げて春さんを責める。
彼はそんな私に柔らかく笑いかけてくれるが、謝られると逆に困る。
むしろそこは、熱中してたのは君なんだけどぐらい言ってくれて良いのに。
それが春さんの良い所だから、何とも言えないわけだけど。
「明ちゃんって麻雀も出来たんだね」
「ちょっと役を知ってるだけですよ。点数計算は出来ません」
「あ、そうなんだ」
お母さんに誘われて覚えたのと、ゲームで覚えたせいで点数計算は理解していない。
とはいえそれで困ったことは無いし、雀荘等に行く予定もないでの覚える気は無い。
ゲームとして楽しむ分にはルールさえ覚えていれば楽しめる。
「他のゲームもやってく?」
「いえ、その、春さんが戻って来たなら部屋に戻ろうと思います」
待っている間の暇つぶしのつもりで覗いて、そうしたら意外と興味をひくものがあった。
ただそれだけの話なので、春さんとの時間を潰してまでやる意味はない。
それなら一緒に居る時間を満喫したい。
「そっか、じゃあ戻ろう」
「はい」
春さんが笑顔で差し出した手を握り、彼の横に並んで部屋に戻る。
道中では誰にも会わなかった。
相変わらず人気の無さを感じる旅館だ。少しホラーな感じを覚える。
けど手に伝わる確かな温かさが、そんな些末な事を吹き飛ばした。
「何か飲み物いる? お風呂入って喉乾いたでしょ」
「あ、はい、そうですね。何か頼みましょうか」
「そうだね・・・あ、そうだ、冷蔵庫に何か入って無いかな」
「そういえば空けてませんでしたね」
冷蔵庫を開けると、シンプルにミネラルウォーターが入っているだけだった。
私達はとりあえずそれを取り出し、部屋にあるグラスに注ぐ。
お風呂上がりの一杯は、ただのお水でも案外美味しい。
「はぁー、生き返るね」
「美味しいですね」
二人共水への美味しさを口にしながら、何となくソファに座る。
一息ついてしまったせいか微妙な沈黙が流れ、私は何となく春さんを見る。
彼も同じ様に此方を向いていて、それを視認した私は自然と体が動いていた。
お互いに体を寄せ、体が触れた所で少し照れた様子を見せる春さんの腰に手を回す。
自分は今どんな顔をしているのか、春さんと同じように照れているのかな。
彼が動かない事に少し不安を覚えながら、それでも彼を抱きしめる。
彼は私に応える様に、背中に手をまわして抱きしめ返してくれた。
嬉しくなって、抱きしめる力を強める。
身長差で彼は私の胸に顔を埋めている形になっているせいか、耳まで真っ赤に見える。
胸のあたりが息で暖かい。たったそれだけの事なのに背筋がぞくぞくする。
「あ、明ちゃん、もしかして、つけてない?」
「はい、下着なら付けてないですよ」
お風呂から上がった際に、どうせ部屋に戻るだけだし、相手春さんだし、良いかなと思った。
元々風呂上りには付けない口なのと、寝間着が厚めなので触らないと解らないから良いかなと。
「どうせ、今日は良いかなと」
「そ、そっか」
彼は私の行動の意図に気が付いた様で、少し言葉に詰まりながら答える。
私もこれからの事をわざと意識させる事を言ったせいで顔が熱い。
今までならここで変に暴走するか躊躇していた。けど、今日は違う。
「春さん、いい、ですか?」
「うん・・・うん? 明ちゃんが聞く方?」
「だって、私がしたいんです。私が貴方に触れたいんです」
素直になると決めた。ただ暴走はしない。
あくまで春さんと同じ気持ちで、春さんと一緒にだ。
そうでなきゃ意味が無い。
「・・・ん、そっか、いいよ。俺も良いかな?」
「勿論です。春さんなら当然です」
私の言葉に静かに彼は応えて、私も彼に言葉に頷いて答える。
そしてゆっくりと、私達はお互いの肌を求めた。
「あはは、ごめんごめん」
私は長時間ゲームに熱中していた事をずっと見られていた恥ずかしさから、待たせていた事を種に上げて春さんを責める。
彼はそんな私に柔らかく笑いかけてくれるが、謝られると逆に困る。
むしろそこは、熱中してたのは君なんだけどぐらい言ってくれて良いのに。
それが春さんの良い所だから、何とも言えないわけだけど。
「明ちゃんって麻雀も出来たんだね」
「ちょっと役を知ってるだけですよ。点数計算は出来ません」
「あ、そうなんだ」
お母さんに誘われて覚えたのと、ゲームで覚えたせいで点数計算は理解していない。
とはいえそれで困ったことは無いし、雀荘等に行く予定もないでの覚える気は無い。
ゲームとして楽しむ分にはルールさえ覚えていれば楽しめる。
「他のゲームもやってく?」
「いえ、その、春さんが戻って来たなら部屋に戻ろうと思います」
待っている間の暇つぶしのつもりで覗いて、そうしたら意外と興味をひくものがあった。
ただそれだけの話なので、春さんとの時間を潰してまでやる意味はない。
それなら一緒に居る時間を満喫したい。
「そっか、じゃあ戻ろう」
「はい」
春さんが笑顔で差し出した手を握り、彼の横に並んで部屋に戻る。
道中では誰にも会わなかった。
相変わらず人気の無さを感じる旅館だ。少しホラーな感じを覚える。
けど手に伝わる確かな温かさが、そんな些末な事を吹き飛ばした。
「何か飲み物いる? お風呂入って喉乾いたでしょ」
「あ、はい、そうですね。何か頼みましょうか」
「そうだね・・・あ、そうだ、冷蔵庫に何か入って無いかな」
「そういえば空けてませんでしたね」
冷蔵庫を開けると、シンプルにミネラルウォーターが入っているだけだった。
私達はとりあえずそれを取り出し、部屋にあるグラスに注ぐ。
お風呂上がりの一杯は、ただのお水でも案外美味しい。
「はぁー、生き返るね」
「美味しいですね」
二人共水への美味しさを口にしながら、何となくソファに座る。
一息ついてしまったせいか微妙な沈黙が流れ、私は何となく春さんを見る。
彼も同じ様に此方を向いていて、それを視認した私は自然と体が動いていた。
お互いに体を寄せ、体が触れた所で少し照れた様子を見せる春さんの腰に手を回す。
自分は今どんな顔をしているのか、春さんと同じように照れているのかな。
彼が動かない事に少し不安を覚えながら、それでも彼を抱きしめる。
彼は私に応える様に、背中に手をまわして抱きしめ返してくれた。
嬉しくなって、抱きしめる力を強める。
身長差で彼は私の胸に顔を埋めている形になっているせいか、耳まで真っ赤に見える。
胸のあたりが息で暖かい。たったそれだけの事なのに背筋がぞくぞくする。
「あ、明ちゃん、もしかして、つけてない?」
「はい、下着なら付けてないですよ」
お風呂から上がった際に、どうせ部屋に戻るだけだし、相手春さんだし、良いかなと思った。
元々風呂上りには付けない口なのと、寝間着が厚めなので触らないと解らないから良いかなと。
「どうせ、今日は良いかなと」
「そ、そっか」
彼は私の行動の意図に気が付いた様で、少し言葉に詰まりながら答える。
私もこれからの事をわざと意識させる事を言ったせいで顔が熱い。
今までならここで変に暴走するか躊躇していた。けど、今日は違う。
「春さん、いい、ですか?」
「うん・・・うん? 明ちゃんが聞く方?」
「だって、私がしたいんです。私が貴方に触れたいんです」
素直になると決めた。ただ暴走はしない。
あくまで春さんと同じ気持ちで、春さんと一緒にだ。
そうでなきゃ意味が無い。
「・・・ん、そっか、いいよ。俺も良いかな?」
「勿論です。春さんなら当然です」
私の言葉に静かに彼は応えて、私も彼に言葉に頷いて答える。
そしてゆっくりと、私達はお互いの肌を求めた。
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